生き方
この一年余り、いろいろなホテルに泊まってみて気づいた。どうやら私は海の見える部屋に弱いらしい。窓の向こうに海がある。それだけで時間の流れが緩やかになり、リラックスできる。せっかくよい部屋に泊まるんだから、一分一秒たりとも無駄にしてはいけない、次は何をしよう……などと気ぜわしいことも考えなくなる。自分のためにコーヒーを淹れ、マグカップ片手に穏やかに揺れる波をただ眺めている。そんな時間がたまらなく好きなのだ。四月某日、次はどこへ泊まろうかと考えていると、思いついた。そうだ、海を見ながら移動できる部屋はどうだろう。早速パソコンを開き、調べてみた。いいなと思ったら値段が高すぎたり、すでに予約で埋まっていたり……。船旅選びって難しいなぁと思い始めたそのとき、手が止まった。これだっ! 〈さんふらわあ〉。赤い太陽マークが目印のあの大型フェリーである。

遠くへ出かけるよりも、自分の部屋や近所で過ごすのが大好きな作家・越智月子さん。そんな彼女が目覚めたのが、ホテル。非日常ではなく、暮らすように泊まる一人旅の記録を綴ったエッセイ。

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