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片岡剛士『日本経済はなぜ浮上しないのか』刊行記念インタビュー

2014.12.06 更新 ツイート

「どこに投票したらいいか分からない」経済オンチのあなたへ 1/3

消費税増税を延期しなければ、この国は瓦解していた片岡剛士

みんなのふところを温める「バラマキ」こそ必要

 本の中で行った提案で実現していないのは経済対策です。3兆円規模の経済対策を行うという話が出ていますが、本では最低限2.5兆円の経済対策が必要だと書きました。ただちょっと注意しなければいけないのは、いま経済対策として挙がっているパッケージの中には、私が提案していない政策や、むしろやってはいけないと思う政策が入り込む可能性が高いことなんです

 3兆円を何に使うべきかといえば、4月に5%から8%に消費税が増税された影響を抑制するために使うべきなんです。つまり家計の所得を直接的に持ち上げるために使うべきです。定額給付金や減税、社会保険料の一定期間の減免など、さまざまな手段はありますが、とにかくできる限り早く家計に還元することです。実効性のある政策で、安心感を与えることが急務なのであり、その規模は最低でも2.5兆円が必要なのです。

 ところが現実に上がってきている案は、1999年に行われた地域振興券のような「地域商品券」であったり、中堅・中小企業の対策として基金を立ち上げてそこから補助金を出す、といったものです。これは正直言って、いらないと思います。余計なものがごちゃごちゃと付いてしまって、結果的に低所得者の方への給付がまた数千億円程度になってしまっては、元も子もないからです。

――振興券や商品券は、お金を配るのと何が違うのでしょうか?

片岡 商品券構想の詳細はまだわからないのですが、一定期間内に特定地域での使用に限定させる方式かもしれません。現金給付であれば消費か貯蓄かという選択肢がありますし、どの場所であっても必要なものに使える。できる限りシンプルにお金で配ってしまったほうが、受け取る側は助かりますよね。増税で困っている方は、所得が少なくて困っているわけですから、使い道を限定されてもあまり助けにならないんです。

――所得制限を設けて、所得の低い人に限定して配布するという話も出てきていますが、近所の顔見知りの店で使うのは勇気がいりますね。

片岡 所得階層を明示するスティグマになる可能性がありますよね。また、所得の捕捉の問題もあります。

「消費をしてもらう」ことを優先して考えるのが間違いなんです。負担を軽減するために最適な方法をシンプルに実行するのが、もっとも効率的なんですね。金融緩和でインフレ期待を作る、所得を増やして消費できる環境を作る、政府にできるのはせいぜいここまでなのに、余計なことばかりを細々とやってごちゃごちゃした状況を作ってきたのが、これまでの日本の政治なんですね。

 選挙戦のなかでこういった部分がどう変わっていくのかを、国民は注視しないといけないと思います。こういった政策はしばしば「バラマキ」という言葉で批判されますが、特定の色のついていないものであればバラマキは悪いことではないし、状況に応じてむしろやるべきです。ただ、それが正しいバラマキであるかどうかを見ないといけません。

 消費税の影響を抑制するために経済対策をするのであれば、消費税で誰が一番困っているかを見て、そこに一対一対応するような政策を打つのがもっとも合目的です。アベノミクスの財政政策で問題なのは、目的に応じたことをシンプルに行うという視点が欠けていることなんです。

 たとえば、5%から8%に消費税を引き上げた際の影響を除去するために、5.5兆円の経済対策をやることになり、その中身として公共事業も行われました。この公共事業も、7~9月期のGDP統計ではほとんど効いていなかったことが明らかになっています。つまり公共投資の伸びそのものは大きいのですが、GDPの落ち込みに対しては焼け石に水であったことがはっきりしています。それなのにまた従来型を踏襲した経済対策のパッケージを作って、いかにも効果があるようなことを喧伝しながら進めるというのは、やめたほうがいいんじゃないかなと思いますね。

――これまでのような特定業界への還元の意味合いの濃い経済対策は、もう効かなくなってきているということですね。

片岡 そうです。むしろポール・クルーグマンの言うように「政策イノベーション」をしないといけない。2013年に安倍政権がリフレーション政策を採用したことは、画期的なイノベーションだったといえます。世界の経済学では主流でも、日本の学会では少数派でしかない政策を、政権が具体的な数値目標ともに取り入れ、中央銀行と協調した。デフレこそが問題なんだと20年以上も主張し続けて、日銀を批判してきた岩田規久男先生が、副総裁というポストに就き日銀の内部に入り込んだ。これは驚くべきことです。

 いくら「リフレーション政策が大事だ」と叫んだところで、政治の側がそれを評価しない限りは、何も変わりません。

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片岡剛士

1972年愛知県生まれ。慶應義塾大学大学院商学研究科修士課程(計量経済学専攻)修了。三菱UFJリサーチ&コンサルティング経済・社会政策部主任研究員。専門は応用計量経済学、マクロ経済学。著書に『日本の「失われた20年」――デフレを超える経済政策に向けて』(藤原書店、第4回河上肇賞本賞受賞、第2回政策分析ネットワークシンクタンク賞受賞)、『円のゆくえを問いなおす――実証的・歴史的にみた日本経済』(ちくま新書)、『アベノミクスのゆくえ―― 現在・過去・未来の視点から考える』(光文社新書)、『徹底分析アベノミクス――成果と課題』(共著、中央経済社)等がある。

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