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勝手に!裏ゲーテ 街場の旨いメシとBar

2026.03.18 公開 ポスト

#72

セクスィー秋田を味わい尽くせ 京王沿線編相場英雄

使用機材〈RicohGR3,SonyRX100M5〉

今から3年前、厳冬の秋田県を取材で訪れた。

この際、現地で案内役を買って出てくれた地元局関係者とともに、日本酒の有名な蔵を訪問し、秋田でも入手困難なレアな1杯を堪能させてもらった。

このとき、蔵元関係者がピリピリし始めたことを今も鮮明に記憶している。なぜかというと、この日は地元民向けの販売会が開催され、長蛇の列ができていたのだ。だが、蔵元関係者が神経質になっていたのは、列の長さではない。

 

〈やっぱりだ! これやられると、俺たちは堪らんのだ! 〉

スマホでフリマサイトをチェックしていた関係者が叫んだ。

地元民向け販売会で売れたばかりの4号瓶(2000、3000円程度)が、サイト上では1万円以上、人気のレア銘柄に至っては2万円越えの値段がついていた(転売ヤー対策は施しているが、イタチごっこ)。

極寒の秋田で長時間待ってレア物をゲット、直ちにフリマサイトにアップする転売ヤーの根性というか、執念に呆れ果てた。

筆者がこよなく愛す銘柄の一つ。ファンキーな社長が命名した酵母が実に〈セクスィー〉なのだ。
こちらも大好きな純米生原酒。まさかこんな良心的な値段でいただけるとは。
こちらも超レア物。店主の調達ルートに秘策がある(ちょっとだけ関与)。

閑話休題。

 

大酒飲みの私の晩酌は、いつもビール→古酒(泡盛)だ。頂き物があれば、日本酒も嗜む(結局なんでも飲むんだけどさ)。

そして、先ほど触れた秋田の銘酒も大好物。しかし、フリマサイトの一件を思い出してほしい。秋田の名酒蔵の多くは生産数が極めて少なく、日本酒マニアの間で争奪戦となるのだ。

恵比寿や白金、麻布辺りで宴席に呼ばれ、日本酒メニューを見て腰を抜かしたことがある。小さなグラス1杯の値段が、4号瓶の正規価格よりはるかに高いのは当たり前。酒の保存状態が悪い店では、酸化が始まった〈迷酒〉を法外な値段で提供する場合もある(即座に退店)。

しばらく秋田銘酒に出会っていないなと思っていた昨年末、一本のDMが届いた。かつてバーの休業日に、和食の間借り営業をしていた若き料理人が独立。自分の店舗を構えたという内容だった。

そして添付されていた日本酒のレパートリーを見て仰天した。冒頭で登場した蔵元をはじめ、秋田の頑固な杜氏や作り手たちが丹精込めて作り上げた銘酒の数々がラインナップされていたからだ。締め切りの連続でヘロヘロだったが、老体に鞭打ってお店に出かけたのは言うまでもない。

店主は秋田県南部の出身で、同県各地の酒の旨さを知り尽くしている。そして地元愛が強いことから、名物の三関(みつせき)のせりを始め、比内地鶏、限定生産のいぶりがっこなど県の名物を調達し、東京で秋田料理の専門店を始めたのだ。

三関のせり、比内地鶏、きりたんぽが入った鍋。否が応でも酒が進む危険なメニュー。
ここちらもレア物。料理に合わせて、店主がペアリングしてくれるので安心。
みちのくでは、馬刺しが定番。もちろん日本酒に合うのよ。

取材で秋田は何度も訪れている。大好きなエリアだ。地元民がこよなく愛す名居酒屋を何軒も訪問し、旨い酒、地元料理を楽しんだ。

だが、秋田は遠い。頻繁に訪れるようなスケジュール環境にもない。よって、この若き店主の店へは、かなりの頻度で足を向けることになるだろう。

店舗はお世辞にも広くない。しかも秋田銘酒のラインナップを知った飲兵衛たちが徐々に集まり始めている。

私自身の予約が取れなくなるのは絶対にイヤなので、例によって屋号は記さない。京王沿線の古びた駅ビルの中、というヒントだけにとどめておこう。

由利本荘市の名酒蔵の逸品。もう何も言えなくなる。
こちらも名酒蔵の超絶レア物。転売ヤーが見たら腰抜かす。
若き店主は鮨も握れる(格安)、旨い(仕入れの関係でメニューは変わる)。

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食い意地と物欲は右に出るものがいない作家・相場英雄が教える、とっておきの街場メシ&気取らないのに光るBar。高いカネを出さずとも世の中に旨いものはある!

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相場英雄

1967年新潟県生まれ。元時事通信社記者。主な著書に『震える牛』(小学館文庫)、『血の轍』、『KID』(ともに幻冬舎文庫)、『トップリーグ』  『トップリーグ2/アフターアワーズ』(ともにハルキ文庫)。近著は『血の雫』(幻冬舎文庫)、『レッドネック』(ハルキ文庫)、『マンモスの抜け殻』(文藝春秋)、『覇王の轍』(小学館)、『心眼』(実業之日本社)、『サドンデス』(幻冬舎)、『イグジット』(小学館文庫)『ゼロ打ち』(角川春樹事務)、『マンモスの抜け殻』(文春文庫)。『覇王の轍』(小学館文庫)、『浸潤』(別冊文藝春秋連載中)

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