
次の用事の前に3時間ほど余白ができた。
カフェで一息?
いやしかし、とんでもなく素晴らしい秋晴れだ。
澄んだ空、鳥のさえずり、紅葉。
行くしかないな、新宿御苑。
新宿伊勢丹の地下でパンを一個買い、スタバに寄る時間もおしくて飲み物は水筒のお茶でヨシとする。
到着、新宿御苑。入場は交通系ICでピッ。券売機に並んでいるのは海外からの旅行者さんたち。日本の紅葉を見に来たのだろうか。
秋の空気がぐわんと肺に入ってくる。
「なんか、スッとする」
ひとりごとをつぶやきながら目指すベンチに進んで行く。
秋限定の好きなベンチがあるのだ。
しばらく歩けばわたしのベンチ(わたしのじゃないけど)。女性がふたり座っていた。でも、ちょうど立ち上がった。
空いた!
ちょい早歩きでゲット。
目の前に大きなイチョウの木。葉はレモンくらい黄色く色づいていた。
なんて、きれい。
買ってきたパンをかじりながらゆったりと見上げる。
上の方で風が吹いた。木の葉がふれあう音。イチョウの葉が雪のように降ってくる。
「いいな、あの席」
わたしが通り行く人ならきっとそう思うであろう席に、今、わたしは座っているのだった。
もう、ここだけでいいや。新宿御苑には好きなエリアが他にもたくさんあるし、たぶん冬の桜が咲いている頃だけれど、今日はこのベンチにだけいよう。マイベンチで秋を楽しむ余白の時間だった。
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うかうか手帖

ハレの日も、そうじゃない日も。
イラストレーターの益田ミリさんが、何気ない日常の中にささやかな幸せや発見を見つけて綴る「うかうか手帖」。










