この世に生まれてから一度も嘘をついたことのない人間などいるのだろうか。
自身を守るためのものだったり、相手を思いやってのものだったり、人を陥れるためのものだったり……。
様々な理由で、時に人は嘘をつく。
咄嗟の嘘でその場を乗り切れたとしても、その嘘を嘘でなくするためにまた嘘をつく。
嘘をついてしまったら最後、その嘘は嘘の大きさに比例した呪いのようなものとなり簡単に逃れることはできないのだ。
私は小学生低学年の頃、一切宿題をやらなかった。
もちろん親には宿題をやったと嘘をついていた。
しかし、先生からそのことを連絡帳に書かれ、親から一筆もらってきてほしいと言われた。
当時の私は母親に怒られると思い、なんとかしようと真似できるはずのない母親の筆跡を真似て連絡帳に自ら一筆を書いた。
「すみませんでした。やらせるようにします。」
今思えば、これでよく逃げ切れると思っていたな……。
案の定、先生には親が書いたものではないとバレてしまい、先生から母親に電話がいった。その後私は母親にとんでもなく怒られたのだった。
その出来事が教訓となり、私は大きな嘘をつけない人間になってしまった。いや、そうなれて良かった。
もちろん今の私が全く嘘をつかないというわけではないが、この出来事により一度嘘をつくとさらに嘘を重ねなければいけなくなる苦しさの方が辛いことがわかった。そして母親の怒りの中に見えた悲しげな表情が今でも忘れられないのだ。
そんな25年以上も前のことを思い出したきっかけは他でもない『良いこと悪いこと』(日テレ)第3話を視聴したからだ。
私と同年代の大人たちが、小学生の頃の出来事に翻弄されるこのドラマ。このドラマの中にも嘘に嘘を重ねた呪われた人間がいるのではないかと私は考察している。
その人物はカンタロー(工藤阿須加)だ。

彼は第1話後半、自身の小学生の頃の“消防士になる”という夢の絵を模倣した形で、経営する居酒屋に火をつけられ重傷を負った。そんな彼が第3話で目を覚ましたのだ。
重傷を負いながらも必死に事件当時の記憶をキング(間宮祥太朗)に話すカンタロー。
「仕込みしてたら寝ちゃったみたいで……。疲れてたのかな。」
そんなことあるか?
彼は火災が起きた際、厨房らしき場所の床で横たわっていた。
立って仕込みをしていたら急にバタッと倒れたとでもいうのか。
火災時に発生した煙を吸ってしまったのならそう言うはずだし、本来は火災の煙を吸って倒れたのに“疲れて寝てしまった”と自身では思っているということなのだろうか。
どちらにせよ不自然で考えにくい状況だ。
以上のことから考えられるのは、カンタローの証言は嘘である可能性が非常に高いということだ。
その嘘は自作自演を隠蔽するためなのか? それとも誰かを庇っているのか?
前者だとしたらあそこまでの重症を負う必要があったのか疑問だし、下手したら亡くなっていたのでその可能性は低い。
となると、あの火災の犯人を知っているのに嘘をついて庇っている可能性の方が高いのではないだろうか。
その犯人は同級生のターボー(森本慎太郎)である。
そしてターボーこそがこの連続殺人事件の真犯人であると考えられる。

今回の第3話でターボーはその命を狙われたが、あれも自身の潔白をアピールするための自作自演ということだ。
なんせターボーはキングが駆けつけた際になぜか自身の頭上をみていたからだ。
上から物が落ちてくるなど誰も言っていないのに。
大衆の面前であのようなことが起これば、自身が連続殺人の犯人だと疑われることはなく被害者として印象付けられる。
手段を選ばないというターボーは「会社のPRのためだ」とか言い、ガラスを落とすよう社員にでも協力してもらったのだろう。
そして貧ちゃん(水川かたまり)殺害の際は日本にいなかったとされているが、ドラマの中でその時系列の詳しい説明もないために嘘をついていても不思議ではない。
ではなぜ連続殺人を行っているのか。
その動機はキングの夢を叶えるためだ。
今まで殺害された仲良し6人組……。どの子(新木優子)をいじめていた6人のうち、狙われた3人はかつて描いた夢の絵に則った形で殺害または殺人未遂にあっている。
皮肉にも理想とは違った形で彼らの夢は叶えられているということだ。
そんな中、キングの幼い頃の夢の絵は“悪を成敗するヒーロー”になること。
大好きで尊敬するキングの夢を叶えるため、そして過去のいじめという罪を清算するためにターボーは悪となり、キングと自身を除いた4人を自らの手で葬ろうとしているのではないだろうか。
そして最後、悪となったターボーを成敗するヒーローにキングがなることで夢は叶う……。といった計画が考えられる。
もしそうだとするならばターボーのカンタロー殺害は失敗に終わっていて、さらにカンタローの火災時の証言が嘘の可能性が高いとなると、カンタローはターボーの影を見たために庇っていると考えると辻褄があう。
もう1人怪しい人物があの場面に……。
以上のことから、第3話で表向きは疑惑が晴れたターボーが真犯人である可能性は非常に高いが、視聴者は彼女のことをかなり疑っているようだ。
それはどの子と同じ出版社に務める東雲(深川麻衣)だ。

彼女はどの子の同期であり同い年である。
東雲は第2話でニコちゃん(松井玲奈)が殺害される恐れがある日のクラブにも顔を出していたし、今回のターボーが殺害される恐れのある会見にも同席をしていた。そしてターボーの頭上にガラスが落ちてきた際に彼女の姿は見えなかった。
うん、非常に怪しい。
しかしだ。彼女が犯人だとしたら、ターボーの頭上を狙ったあの大きなガラスを彼女が持ち上げることなどできるのだろうか。
協力者がいれば勿論可能だが、今のところ彼女の共犯になりうる人物の検討はつかない。
同い年であるスナック イマクニの店長:今國(戸塚純貴)と東雲に実はつながりが? とも考えられるが、まだ想像の域を超えないのでこの考察はこれ以上やめておこう。
まだまだ第3話、物語は“こっから”
現状はターボーを真犯人として考えているがまだまだ第3話。何もかもがひっくり返るには十分な話数が残されている。
ターボーが真犯人だとあまり決めつけずに、どの人物も怪しんで見ていきたい。
最後に、当時の2年1組の私の担任の先生。あの時は嘘をついてごめんなさい。
••┈┈┈┈•• ドラマ情報 ••┈┈┈┈••
日本テレビ『良いこと悪いこと』( 毎週土曜夜9時~)
出演:間宮祥太朗、新木優子、森本慎太郎(SixTONES)、深川麻衣、戸塚純貴、剛力彩芽、木村昴、藤間爽子、工藤阿須加、松井玲奈、稲葉友、森優作、水川かたまり(空気階段)、徳永えり、木津つばさ、玉田志織、秋谷郁甫、田中美久、宮崎莉里沙、赤間麻里子
チーフプロデューサー: 道坂忠久
プロデューサー:鈴木将大、妙円園洋輝
脚本:ガクカワサキ
演出:狩山俊輔、滝本憲吾、長野晋也
音楽: Jun Futamata
制作協力:ダブ
制作著作:日本テレビ
主題歌:ポルノグラフィティ『アゲハ蝶』(Sony Music Labels)
著者:ケメ・ロジェ
イメージイラスト:サク
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