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山野海の渡世日記

2025.10.25 公開 ポスト

趣味を絶賛探し中山野海(女優、劇作家、脚本家)

ここ最近急激に寒くなった。

ついこの間まで暑くて暑くて、現場でも手持ちの扇風機が手放せなかったのに

昨日の午前中の外ロケでは風がガンガン吹き抜けて、寒くて寒くて。

冬の外ロケの大いなる味方。ヒートテックを着てなかった事をむっちゃ後悔した。

でも急すぎるでしょ。

日本には四季というものがあって、夏の次は秋、それから冬なのに、秋が一週間くらいしかないんだもん。

誰に文句を言っていいのか分からないけど、還暦の身には急激な気温の差が堪えるもんで

本当、どうにかならないだろうか。

 

ちなみに今日は自宅でこのエッセイを書いているのだが

さっき、久しぶりに暖房を入れた。

何故ならば、我が家の犬二匹が寒さでガタガタと震えていたから。

一ヶ月前まで冷房代の高さに嘆いていたと思ったら、今度は暖房代だ。

でもこれも愛する家族(犬猫)の為だ。お母さんは暖房代のために頑張って働きます。

 

さて、話は変わるが私には趣味がない。

推しもいない。

子供の頃から飽き性で堪え性がなく、集中出来ることと出来ない事の差が激しかった。

自慢じゃないが、成績表にはいつも明るく元気なお調子者。しかし注意力散漫であると何度も書かれた私。

趣味を持つのにこんなに不適合な人間がいるだろうか。

だからほっておいた。

だいたい趣味とは、気がついたら好きになっていて夢中になることだし

何も自分から探しに行く事ではないと思ったから。

それに、私は今の自分の仕事が大好きだし、仕事さえあれば何もいらなかった。

そう、ちょっと前までは。

 

だが、今は違う。

趣味が欲しい。切実にそう思っている。

我々の仕事は規則性がない。月曜日から金曜日までは仕事で土日休みとかでもない。

仕事が集中する時は、何本もの仕事を抱え、同時に進行していく。

だが、休みとなると二週間くらい自宅でボーッとしている時もある。

我が家の犬猫は趣味ではない。私にとっては家族だから子育てだ。

 

で、思い出した。あまりに近くにあり過ぎて気が付かなかったけど、

私にはずっと趣味があったのだ。それは飲酒である。

もちろん今でも飲むし、酒は大好きだ。

だが寄る年波には勝てず、最近は人と飲む時だけはたらふく飲むが

自宅で一人酒は全くしなくなった。

とにかく飲みすぎての二日酔いが辛いから。

 

趣味なんかいらないと思ってた頃、私は無意識に最大の趣味である飲酒をほぼ毎日していたのだ。

人と飲まない夜だって、翌日の撮影がなければ、好きな酒とつまみを用意して

その日の夜にしなければならない用事を先に済ませ、酒と向き合った。

YouTubeで外国のオーデション番組などを見ながら、酔いにまかせ

一緒に歌ったり踊ったりしていた。

その時間は私の至福の時だった。

 

ここまで書いて、近しい友人たちの声が聞こえてくる。

「一人で飲む時、そんなに飲まなければいいじゃん」と。

私を舐めるな。それが出来ていればもっと立派な人間になっていただろう。

私はずっと100か0の女だ。

一杯飲み始めたら酔うまで止められないのだ。

「ぐだぐだ言ってないで運動しなさい!」と言ってる我が家の麦。

で、話を戻すと

一人酒を辞めたら、急に夜の時間が長くなった。

最初の頃は健康にいいと喜んでいたし、なんなら夜の9時には寝ていた。

でもそれが続くとなんとも時間を持て余す。

そこで自分に趣味がないことに気がついた。

そうだ! 趣味を作ろうと思った私は

昔、手編みのセーターを夢中になって編んでいたことを思い出した。

元来大雑把な私はケージなど無視して編むものだから、横綱でも大きいくらいのセーターが出来てしまったが、そんな事は今はどうでもいい。

とにかく夢中になる趣味を作るのだと、勢いで毛糸を買った。

だが、思ったより老眼が進んでいて、最初の10センチも編まずに脱落。

振り出しに戻って、ぼんやりしていたところに免許更新のハガキが我が家に届いた。

 

自動車の免許は持っていないが、原付の免許だけは昔取得していた。

もちろんずっと乗ってないからゴールド免許。

私は免許更新のハガキを見て閃いた。

そうだ。中型バイクの免許を取って、一人で海を見に行こう。

電車で行くのは億劫だけれども、バイクで景色を見ながら行くならきっと楽しいはず。

これで私にも立派な趣味が出来たと、親しき友人たちにこの話を意気揚々と披露した。

結果。

全員が目ん玉ひん剥いて、口角泡を飛ばす勢いで私を責めた。

絶対に注意力散漫で事故を起こすと。

友人たちはよーく知っているのだ。

私が、仕事の時以外はいっさい集中力がない事を。

しかも注意力散漫って、昔から成績表に書かれてたじゃん。

 

今も趣味を絶賛探し中である。

今夜もきっと夜9時には寝てしまうだろう。

どなたか良き趣味を教えていただけまいか。

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山野海の渡世日記

4歳(1969年)から子役としてデビュー後、バイプレーヤーとして生き延びてきた山野海。70年代からの熱き舞台カルチャーを幼心にも全身で受けてきた軌跡と、現在とを綴る。

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山野海 女優、劇作家、脚本家

1965年生まれ。東京新橋で生まれ育ち、映画女優の祖母の勧めで児童劇団に入り、4歳から子役として活動。19歳で小劇場の世界へ。1999年、劇団ふくふくやを立ち上げ、全公演に出演。作家「竹田新」としてふくふくや全作品の脚本を手がける。好評の書き下ろし脚本『最高のおもてなし!』『向こうの果て』は小説としても書籍化(ともに幻冬舎)。

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