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あぁ、だから一人はいやなんだ。

2025.09.15 公開 ポスト

第254回 未知なる自分いとうあさこ

55年生きてきて、まだまだ知らない自分に出会うことがある。

例えばずいぶん前に一度書いたことがありますが、食の嗜好。鶏肉は絶対に皮付きがいい。チキンソテー、親子丼、シチューなど、どれも必ず皮付きであってほしい。それくらい皮はマスト。なのに焼き鳥の“皮”串や、鶏皮ポン酢など、皮単体になった途端、突如苦手に。“皮付き”と“皮”の間に大きな溝があるのです。豚肉も同様に、薄切りが大好きで、生姜焼き作る時なんかはわざわざしゃぶしゃぶ用のめっちゃ薄いものを選ぶ。だけど厚切りは「ん-、ちょっとぉ……」となる。だからトンカツとかそんなにいただかない。いただかないんですけど、まさかのカツ丼は好き。むしろ大好物。他にも甘いもの苦手、なのも本当なのですが、そう言いながらよく冷えた薄いチョコはかなり好き。もうね、ここまでくると何が好きで何がキライか、自分でもわからない。ただ、もうしょうがないんです。そうなんだから、しょうがない。

食以外にもそういう部分が大きく出るところが“キレイさ”、って言い方でいいのかな。衛生面での〇と×が、これまた自分でもどこで線引きなのかがまったくわからない。例えばお風呂場。私はお風呂に入った後、めっちゃくちゃ水切りをする。鏡、扉、壁、浴槽などなど。T字のスクィージーを使って、ありとあらゆるところの水分をとにかく残さない。スクィージーもちゃんと、お掃除アイドル(?)Hey! Say! JUMP有岡せんせーにオススメを聞いて、しっかりと水が切れるものを購入し、使っている。最終的には浴室乾燥かけちゃいますが、その前にきっちり水気を切らないと気が済まないのです。ただそこまでやる私が、排水溝、ほったらかしちゃうんです。毎日シャンプーして髪の毛とか溜まりますよね。その都度掃除すればいいじゃないですか。なのに何故かどうしても排水溝に手が伸びない。その日に溜まった髪の毛を見て「あ、あと2回はいけるな」みたいに思って、そのまま放っておいてしまう。“腰が痛いから出来るだけ屈みたくない”“一度お風呂から出て、髪の毛をとるティッシュとかをとって、またお風呂場に入って再び足の裏が濡れるのがイヤ”“単にめんどくさい”などなど、言い訳のように理由っぽいことはいくらでも出てきますが、どれもピンとはこないんだよなぁ。で結局、めちゃくちゃ汚れて、どこかで大々的に掃除する羽目になる。今こそ月に一度は行くようになった歯医者さんですが、昔は放っておいたら悪くなるのわかっていたけど、なんかイヤで放っておいて、ちゃんと悪化して、麻酔しなきゃいけないくらいの大変で痛い治療をすることになっていた。それと同じ。いや、歯医者さんの方は“痛いのがイヤ”という逃げちゃう理由がちゃんとあるから違うか。とにもかくにも、毎回、排水溝の中の部品も全部出して大掃除、と大変になってしまうのにも関わらず、どうしてか数日分の髪の毛が溜まるまで放っておいてしまうのです。謎。

同じ水回りで言えば、トイレ、洗面台、キッチンのシンク。その辺りは、ピッカピカ。磨き上げるほどではありませんが、ここは汚れているのがイヤでめちゃくちゃこまめに掃除します。かと思うと窓なんかはお恥ずかしながら1年に一度、秋の晴れた日に高圧洗浄機を使って洗うくらいで、基本そのまんま。だから今現在、今年の“秋の晴れた日”にはまだ早いので、言ったら一番汚れている時。こないだいろいろ宿題などやっていた夜、いつの間にか夜中の3時前になっていて。ちょっと現実逃避で携帯をいじっていたら、なんとその瞬間、ジャスト皆既月食中だと判明。急いで窓の外を見ると、ずいぶん低い位置に暗くなっている最中の真っ赤な月が目の前に。ああ、なんて神秘的でうつく……汚い。ガラス、汚い。なんじゃこりゃ。虫が入るとイヤなのと月がより見えるよう、電気を消して窓を開けた。生ぬるい空気を浴びながら、携帯で月をパシャリ。偶然にも見れたその美しい天文現象に感動しながら、窓を閉める。汚い。ん-、現実。だったらこまめにやればいいんですけどね。なんか“秋の晴れた日”って決めちゃったんで。ただこれから劇団公演があるから、10月半ば、かな。いやはや、窓がクリアになる日は遠いぜ。

そんな中、自分の中で一番理解できないこと。それは、スリッパ、です。MYスリッパは全然いいんです。ただいろんな施設に行った時なんかにスリッパ、あるじゃないですか。あれが履けない。例えアルコール消毒とか、目の前で拭いてもらったとしても、何かダメ。だからそういう時はいつも裸足を選ぶ。「え? 裸足の方が汚くない?」ええ、そうなんです。それにお気づきのあなた、すばらしい。体育館やホールなどで裸足で過ごしたとするじゃないですか。そしたらちゃんと足の裏、真っ黒になるんですよ。それでもいいから裸足を選ぶ私。でもそうもいかない場所もある。トイレです。施設内のトイレでスリッパに履き替えるところってありますよね。さすがに私もそこを裸足で、とはなれず。でもスリッパも履きたくない。もうそういう時は足でグーを作るように指や甲を丸め、出来うる限りスリッパの接地面を少なくする作戦に出る。それで何度足をぐねったことか。もう命がけです。たまに居酒屋さんとかのトイレで下駄のところありますよね。あれは大丈夫。むしろ嬉しくて、カラコロ音を鳴らしちゃう。もはや何故スリッパと下駄で違うのか、まったくわかりません。感覚、としか言いようがないです。はい。

どこからともなく「うっせぇわ」が聞こえてきそう。私の答えの出ない“どうでもいいこと”にお付き合いいただき感謝しております。55歳、まだまだ自分を“ちゃんと”知る為の修行が必要だな。なんて言いながら、これを解決すべき、ともまったく思ってない自分もいる。ホント、自分のことって、何にもわからないですね。

【本日の乾杯】つきだしで出てきたので正式名はわかりませんが、“とうもろこしをまとめて焼いてバターのっけたヤツ”です。とうもろこしは“夏”要素の中でもかなり上位にくるほど好き。とうもろこしよ、夏よ、ありがとう。

関連書籍

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。3』

海への恐怖を感じた、初めての遠泳。4人で襷を繋いだ「24時間駅伝」。お見合い旅inマカオ。“初”キスシーンに、“初”サウナ。ドラクエウォークで初めての高尾山。接続できずに大騒ぎのリモート飲み会。拍子抜けだった大腸検査。ブームに乗って、のんびり「おばキャン」、のつもりが……。いくつになってもあさこの毎日は初めてだらけ。

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。2』

セブ旅行で買った、ワガママボディにぴったりのビキニ。いとこ12人が数十年(?)ぶりに全員集合して飲み倒した「いとこ会」。47歳、6年ぶりの引っ越しの、譲れない条件。気づいたら号泣していた「ボヘミアン・ラプソディ」の“胸アツ応援上映”。人間ドックの検査結果の◯◯という一言。ただただ一生懸命生きる“あちこち衰えあさこ”の毎日。

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。』

ぎっくり腰で一人倒れていた寒くて痛い夜。いつの間にか母と同じ飲み方をしてる「日本酒ロック」。緊張の海外ロケでの一人トランジット。22歳から10年住んだアパートの大家さんを訪問。20年ぶりに新調した喪服で出席したお葬式。正直者で、我が強くて、気が弱い。そんなあさこの“寂しい”だか“楽しい”だかよくわからないけど、一生懸命な毎日。

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