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山野海の渡世日記

2025.08.25 公開 ポスト

汗っかきの寒がりの私山野海(女優、劇作家、脚本家)

寒い!

どこへ行っても寒い!

何もへそ曲りでこんな酷暑に、言っているわけではない。

そりゃ私だって、外は暑い。

前回のエッセイでも、私は無類の汗っかきだと書いたばかりだ。

 

3分も道を歩けば汗がボタボタ垂れてくる。

特に自宅から駅までの10分の道のりを歩いてからの、急に歩くのをやめ、電車を待ってるホームが一番すごい汗をかく。

手に持っているハンカチはいつだってびしょびしょだ。

 

だけど、建物の中が寒い。

電車の中、ビルの中、特に一番寒いのはスーパーの中。

もちろん分かっている。

汗だくのお客様が入って来るのだから、サービスのためにスーパー内を寒くしているのだ。

だから店内に入った時は最高のひんやりだ。

まさに生き返るとはこの事である。

で、店内を食品を物色しながらゆっくり歩き出す。

特に入り口近くの野菜コーナーはすごくいい。

滝のように流れていた汗が引っ込み出し、肌がどんどんサラサラになっていく。

そのサラサラの身体で、足りない野菜や、今日の夕飯の副菜などを考えながら野菜をカゴに入れていく。

そこを過ぎると、私の大好物の納豆や豆腐や厚揚げ、白滝、こんにゃくなどのコーナーが見えてくる。

目を皿のようにして、好きなものをカゴの中に入れていく。

この辺で、少しだけ私の身体が寒くなっていることに気づくが知らないふり。

だってまだ、買いたい物の半分も買っていない。

そこから調味料や缶詰コーナー。

今日は遠くのスーパーまでバスで来ているので、重たいものもどんどん買う。

そして本日のメイン。肉や魚のコーナー。

魚を煮つけにしようか、はたまた鶏肉と野菜で煮物にしようか

でも最近疲れているので、やっぱりメインはお肉がいいな。

そんなことを考えながら肉と魚のコーナーをウロウロと歩いているともうダメだ。

このコーナーはとにかく、いつだってクーラーがギンギンだから寒くて仕方がない。

 

歳を重ねていくと寒がりになるというのは本当だ。

汗はかくけど寒いのだ。

何せ我が家の冷房の設定温度は27度。

20代の頃は部屋に帰ってきたらまずは16度に設定していたのに。

 

おっと、話がわき道にそれた。

肉と魚のコーナーで、もっとじっくり選びたいが、どんどん身体の芯が冷えていく。

なんならトイレにも行きたくなる。

結局大して選びもせず、合い挽き、鳥、豚の挽肉をたくさんカゴに入れる。

挽肉さえあればいつもなんとかなるから。

逃げるようにして肉と魚のコーナーから去り、さっき行ったはずの調味料コーナーに戻る。このコーナーは冷蔵していないから、ちょっとだけあったかいのだ。

そこで少しだけ温まって、いざ、チーズやバターのコーナーへ。

また寒い。そりゃそうだ。寒くしておかないとチーズやバターが溶けるから。意を決して絶対に必要なものを素早く選びレジへと向かう。

最近のレジは店員さんがおらず、自分でバーコードを通してお金を払うことが多い。

 

もう私の身体は冷え切っているから、とにかく急いで支払いを済ませ外に出たい。

けれどそういう時に限って、バーコードがなかなか品物を読み取ってくれない。

店員さんに聞いてやっとのことで支払いを済ませ外に出る。

はあ~、あったかい。

猛暑の夏が愛しくなる瞬間だ。

そこから歩いてバス停に。

自宅前の停留所までバスで約10分。

 

乗っているうちにまた寒くなる。バスのクーラーもいつだってキンキンに冷えているから。

でもね、バスのクーラーは自分で向きを変えたり風を出なくしたりできることを

汗っかきの寒がりの私は知っている。

余裕でクーラーの風の向きを変えようと手を伸ばす。

ところがそんな時に限って、向きが変えられない。壊れているのかやり方が悪いのか。

結局バスに乗っている間、キンキンに冷えた風が私に向かって発動しずっと寒い。

やっとの思いで我が家に帰り、適温で過ごす。

 

いやあ、今年の夏も暑くて寒い。

 

ま、結局私が我儘なだけなんだと思うけど。

先日ふと視線を感じて見上げると、こやつがジッと私を見つめていました。

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山野海の渡世日記

4歳(1969年)から子役としてデビュー後、バイプレーヤーとして生き延びてきた山野海。70年代からの熱き舞台カルチャーを幼心にも全身で受けてきた軌跡と、現在とを綴る。

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山野海 女優、劇作家、脚本家

1965年生まれ。東京新橋で生まれ育ち、映画女優の祖母の勧めで児童劇団に入り、4歳から子役として活動。19歳で小劇場の世界へ。1999年、劇団ふくふくやを立ち上げ、全公演に出演。作家「竹田新」としてふくふくや全作品の脚本を手がける。好評の書き下ろし脚本『最高のおもてなし!』『向こうの果て』は小説としても書籍化(ともに幻冬舎)。

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