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山野海の渡世日記

2025.07.25 公開 ポスト

汗っかきの女優山野海(女優、劇作家、脚本家)

今年の夏もすこぶる暑い!

色んなところで書いているが、私は無類の汗っかき。

普通は長年俳優をやっていると、だんだんと身体が慣れ、汗をかかなくなるもんだが

私の身体は全然慣れない。

4歳から今日まで50年以上、カメラの前で、舞台上で汗をかき続けている。

もうね、顔から汗が出るんじゃないの。

頭皮からまるで滝のように汗が滴り落ちる。

なんならマイナスイオンが出てるんじゃないかってくらいの滝の汗。

全然清々しくないマイナスイオンだけど。

 

で、先日。

千葉のとあるショッピングセンターで映画の撮影をしていた時のことだ。

その日はお借りしているショッピングセンターの営業時間外での撮影だったので、深夜から撮影開始。

最近の外ロケは、深夜だろうと湿気がすごくて地獄のような暑さだが、

店内の撮影なら楽勝だろうと思っていた。

事実、現場に行ったらクーラーがキンキンに冷えていて、なんならちょっと寒いくらい。

これなら私の滝の汗も出てこないだろうと思ったが、ここで油断するのが私の悪い癖。

それは百も承知なので、メイクさんには最初に伝えておいた。

「私はむちゃくちゃ汗っかきなので、メイク直しが相当必要になると思うけど、よろしくお願いします」と。

綺麗なメイクさんは快く「大丈夫ですよ」と言ってくれた。

これで一安心。

 

で、撮影する場所に行くと、

なんとその日、私はアクションをすることになっていた。

 

100人近いエキストラさんの中で、私と同年代の女性と若い男性の3人で。

アクションをつけてくださるのは世界に名だたるアクション監督で、

昔からの仲良し先生。

世界の仲良し先生が私のために考えてくれたアクション。

全て完璧に、一つの無駄もなくやりたい。

老体に鞭を100発くらい入れて稽古に挑んだ。

面白い! ワクワクする! 楽しい!

アクションの手数も結構多くて、ワンカット長回しの一本勝負。

テスト含めて数回カメラの前で稽古をし、いざ本番。

アクションチームが丁寧に教えてくださったおかげでなんとか成功!

ま、カットがかかった瞬間、私はハアハア言いながらしゃがみ込んだけどね。

 

で、その日は予定より早く終わって帰り支度をしている時

先ほどのメイクさんが笑いながら私に言った。

「想像の500倍くらい汗をかいてましたね」と。

そう。私の汗は滝だから常人の500倍は汗が流れ落ちるのだ。

助監督さんにも言われた。

「海さん、風呂上がりですか?」と。

いやいや、見てたでしょ。私、撮影してたの。

のんびり湯船に浸かってぽっかぽかじゃないのよ。

あと2ヶ月くらい。

自分の滝汗と戦うのかと思うと、うんざりしている今日この頃である。

飼い主が滝汗をかいているとは知らず、小さい箱に無理やり入る猫。

 

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山野海の渡世日記

4歳(1969年)から子役としてデビュー後、バイプレーヤーとして生き延びてきた山野海。70年代からの熱き舞台カルチャーを幼心にも全身で受けてきた軌跡と、現在とを綴る。

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山野海 女優、劇作家、脚本家

1965年生まれ。東京新橋で生まれ育ち、映画女優の祖母の勧めで児童劇団に入り、4歳から子役として活動。19歳で小劇場の世界へ。1999年、劇団ふくふくやを立ち上げ、全公演に出演。作家「竹田新」としてふくふくや全作品の脚本を手がける。好評の書き下ろし脚本『最高のおもてなし!』『向こうの果て』は小説としても書籍化(ともに幻冬舎)。

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