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わたしを幸せにする0円生活

2025.07.24 公開 ポスト

家賃も光熱費もゼロ!自給自足の生活で手に入れた“本当の自由”田村ゆに

青森県南部町で自給自足生活を送る田村ファミリーの妻・田村ゆにさん。電気・ガス・水道は契約せず、廃材で建てた手づくりハウスに家族3人、ニワトリ12羽と暮らしています。お金の不安が尽きない都会の生活から抜け出し、田舎に移住して気づいた“本当の豊かさ”とは。初のエッセイ『わたしを幸せにする0円生活』より、一部をお届けします。

*   *   *

電気・ガス・水道代は0円

わたしたちは電気・ガス・水道を契約していません。周りに電柱や電線はなく、街灯もないため、夜は真っ暗です。水道の代わりに自分たちで掘りあてた水とそこから引いた水路があり、調理には自作のコンロや、いただき物のかまどを使っています。

電気・ガス・水道代0円のヒミツをご紹介する前に、「0円だけどゼロではない」という点をお伝えしたいと思います。

ガスの代わりに、薪の火があります。電気はソーラーパネルで発電をしているので、洗濯機や小型の冷蔵庫などの家電も使っています。手洗いや食器洗いには掘りあてた水を、飲み水には山の湧き水を使います。

まず現代の仕組みで困るのは、電気・ガス・水道に毎月の費用が発生することはもちろんですが、「何かあったときに、止まってしまうこと」ではないでしょうか。震災などでその大変さを経験した人もいるはずです。

「お金で手に入れること」とは、言い換えれば「誰かに代わりにやってもらうこと」でもあります。電気・ガス・水道が止まれば自分たちでは直せないので復旧を待つしかないのが現代のシステムです。

わたしの妹の家にも、電気を売れるくらい大きなソーラーパネルが屋根一面にあります。しかし、自分たちで設置したわけではなく仕組みもよく理解していないため「停電になったときに、発電機を回してご飯を炊いた」と言っていました。暮らしを変えるにしても、何のための0円生活なのかを確認することが大切だと思います。

うちの場合、電気・ガス・水道代は0円ですが、メンテナンスも自分たちの仕事です。たとえば水路のパイプが詰まって水の出方が細くなるので、年に数回は掃除をして流れをよくしたり、冬はソーラーパネルに雪が積もるので雪おろしをしたりが欠かせません。

このように0円生活を続けるための作業があります。経済的にはラクになる分、自分のスキルと暮らしのアップデートが必要です。そのためにも、これからご紹介する0円生活のためのシステムから自分たちでつくり、整えていくことで、予期せぬトラブルにも対処できるようになります。

たしかに、コスト削減になるとはいえイチからの準備は大変です。しかし、そこで身についた知識やスキルは一生ものです。長い目で見たときにどちらが安心でラクな暮らしでしょうか。

わが家の室内の様子。左にあるのは薪ストーブ。冬は暖をとったり、上に鍋を置いて調理したりします。

0円生活に必要なお金

まず、0円生活を始めるために大切なことをひとつお伝えします。それは「0円生活は0円ではスタートできない」という点です。

「0円生活なんだから、お金がなくてもできるんでしょ」と思う人も多いようなのですが、電気・ガス・水道の支払いを0円にするためのシステムづくりにお金が必要になることがあります。今の暮らしをどのくらい維持したいのかによりますが、がんばり次第でコストを抑えることもできます。都会的な暮らしをそのまま0円で続けようと思ったら、大がかりな設備と資金が必要になりますが、森の中での原始的な生活であれば0円で始めることもできるでしょう。

とくに電気は明治時代からの新しいエネルギーなので、一番コストがかかると言ってもいいものです。今となっては「電気がない暮らしなんてムリ!」と考えてしまい0円生活に必要なお金ますが、ほんの150年ほど前までは電気のない暮らしをしていました。少しずつ慣れ親しんだ快適さから抜け出して、ほかの楽しみに置き換えていくとストレスなく0円生活が始められると思います。大切なのは、「人としての暮らしは維持しつつ、ムリのない範囲でコストをかけないこと」ではないでしょうか。はじめからストイックにしても続かないので、いずれは卒業したいというものも最初はあっていいのです。

わたしたちもはじめは夫婦二人で、夫の実家でお世話になりながら今の場所をつくっていました。小屋の扉はビニールシートに紐を巻き付けたもので、もちろん電気はなく、使える水はバケツに溜まった雨水と実家で汲くんだ水道水10リットルのみ。畑は素人のわたしが見ても草ボーボーで、苗を植えても消えるほどの荒地でした。移住のタイミングでスマホを一度手放したので、教科書になりそうな本や調べたメモを片手に、日があるうちに通って作業しては日が暮れると実家で夕食をいただく毎日です。

お金のために働く東京での生活から解放されて、「ただ生きるってサイコー!」と、夫のお母さんが用意してくれたごはんを食べるたびに感じていました。

当時は、お金が必要になったら、農家さんの季節アルバイトに行ったり、また夫がデザインの仕事をしていたので、通勤の必要や時間に追われるストレスもなくまかなえていました。おかげでわたしたちも、はじめからムリすることなく、時間もお金もある中で少しずつ今の暮らしをつくってこられました。

暮らしの仕組みを勉強しながら手を動かしたり、自然環境を整えるのには時間が必要です。実際に、野菜がちゃんと育つまでには4年かかり、飲み水は今でも山に湧き水を汲みに行きます。がんばればすぐに結果が出るとは限らず、自然を前にすると人間の都合ではどうにもならないこともあります。

だからこそいきなり0円にこだわってどうにかしようというよりは、理想と現実を行ったり来たりできる環境のほうが、着実に暮らしをつくることへもつながります。

「お金を使わない方法を考えてみたけど、結局お金で買うほうが合っている」となっても、それは負けでもムダな経験でもなく、暮らしと向き合い努力した結果です。

わたしたちは「幸せに生きる」方法を考えたら、結果的に電気・ガス・水道代0円の生活に落ち着きました。「お金や便利さでは手に入らない豊かさに気がついた」だけです。それでは、実際のわたしたちの0円生活についてこれからご紹介しましょう。

わが家の正面扉。ウッドデッキへ続く出入口です。

 

関連書籍

田村ゆに『わたしを幸せにする0円生活』

電気・ガス・水道は契約なし!テレビで話題の自給自足ファミリーの妻・田村ゆにさん初の単著。 都会から青森の田舎に移住し、0円生活で手に入れた“無限の幸せ”とは。

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わたしを幸せにする0円生活

電気・ガス・水道は契約なし!自給自足ファミリーの妻・田村ゆにさん初の著書『わたしを幸せにする0円生活』より、試し読み記事をお届けします。

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田村ゆに

1987年北海道札幌市生まれ。高校卒業後に歌手を目指して上京。アルバイトをしながらの歌手活動中に着物の魅力にハマり、価値観が激変。日本人の昔ながらの生活に触れ、「いつか自分で作った野菜を家族に食べてもらいたい」という新たな夢を見つける。29歳になる年にSNSで見つけた田村余一の「お嫁さん募集」へエントリー。その年の秋に青森へ移住し、2017年に入籍。オフグリッド生活や畑しごとをスタートする。2018年第一子を出産。現在は子育てや畑しごとの傍ら、テレビ出演のほか、SNSで暮らしの知恵や野菜に関する知識などをシェアして活動している。

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