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彼方からの手紙

2025.06.28 公開 ポスト

私たちは湿気でできている清水ミチコ/光浦靖子

清水ミチコさんと光浦靖子さんのリレーエッセイ。湿気の国の清水さんから、爽やかな国にいる光浦さんへ、日本独特の「スキャンダル考」です。​

*  *  *

涼しそうなカナダと違い、日本の6月は(あれ、これ殺されるんじゃ?)と思うほどの酷暑です。やばいです。特に湿気が高いアジアの土地柄は、スチーム状態になってしまうんでしょうね。むします。「暑いって言われるだけでイラっとくる」とよく聞くのは、言葉だけでなく口からの湿度を攻撃的に感知するからかもです。

この多湿は人間性にも関係するのではないでしょうか。湿度が常にしっかりしみ込んでいる土壌が、日本人の性格を形成させてきてた。と私は睨んでます。古来から「苔」に美しさを見出せてたなんて人種、地球上なかなかいないと思うんですよね。普通、一見しただけでカビ扱いなんじゃないでしょうか。そしてコケもまたさらに地面の湿度をしっかりと保ってくれる植物。暑いと文句は出ても、湿気はそう嫌いじゃないはず。

そもそも芸能人が不倫したことでこんなにバッシングするのも、他の国では聞きませんよね。「日本では不倫がバレると芸能の仕事がなくなる」と言うと「なんで?」と、めちゃ笑われます。本当に笑うんです。それは「バカみたいだ」というような見下した笑いではなく、「フシギの国ニッポン」と思われた時に出る笑いです。「キュウリニハシヲサシテウマニミタテル?」という時のような顔です。

私も普段からラジオの本番中にでも、置いてある週刊誌をめくってるほどスキャンダルは知りたい方なのですが、ヒトが悪いせいか、本気で怒ったことはないです。ただただヤジウマ的な興味だけを持ってるのです。長年ヤジウマとして見てきた私は、スキャンダルというものは平等ではない事に気づきました。あれで人を選ぶんですよ。誰でもいいわけじゃない。なぜならスキャンダルの核はその人の普段からの清潔さ、クリーンさだからです。クリーンっぽくない人は叩いても面白みがない。噛んでも噛んでも意外性や妙味がやってこないんです。(だよな)なんて思っただけで終わる。たとえば古田新太さんや私はおそらく炎上しません。失礼ながらあき竹城さんとお会いした時も自分と似たものを感じました。ところが清潔派が一度着火したら、ヤジウマたちもどんどん集まれば、知恵も出てくるので、「こんな油もあったぞ」「親方、こっちの方角からも燃やせるかもしれやせん!」など炎上の数はどんどん増え、見物客もさらに倍増するのでした。不倫をしたことにも怒ってるけど、期待してたのにそれもバレてるだなんて、という二重の失態がさらにイラつかせるのではないか。だから普段からきれい事や正論は言わない方が無難ですね。でも言わなきゃいけない職業、例えば司会者やアナウンサーとかは、これからも大変かもしれません。仕事だけど「善い人、清潔、好感度」が暗黙に必要なので、「燃えないゴミの日にこんなの出してた!」なんてゴミまで探られる日がいつ来てもおかしくないです。

もともとカラッとした人などあんまりいなかったけど、日本はどんどん気候が熱帯雨林みたいになってるので、これからはもっとジメジメ化が進むかもしれません。

ところで、私は昔から無責任に政治家のネタをやってきてるんだけど、本気で政治を正そうとしてる、実は善い人と思われたらやだなー。

前にライブで「政治家の個性にツッコミたいだけで、政治にはぜんぜん興味がなくて」(これホント)と言ったら、アンケートに「そう言わされてますね。かわいそう。」なんてあって、閉口しました。でも政治家のネタはおいしいからやめたくないし。

そういえばハッキリ言って光浦さんは政治家に向いてますよね。正義感強いし、曲がったことしない、声が通る、金に興味ない、メガネかけてる。どうせ目立ってしまうんだから、いっぺんくらいどうすか。ネタになるし、メガネ党よろしくお願いします! って、ウグイス嬢なら無料でやりますよ(モノマネつき)。

【シミチコNEWS】長野に住んでいる元マネージャー中川さんの家で飼ってる、 鶏の次子(つぎこ)ちゃん。人に懐いてて超可愛い。

関連書籍

清水ミチコ『カニカマ人生論』

すぐに「気負け」して泣いてしまう少女の頃の笑えて切ない思い出。永六輔さん、タモリさんはじめたくさんの大切な人たちとの巡り逢い。自分の弱さやセコさにぶち当たりながらも、日常の些細な面白みを慈しみつつ、「若い頃よりクヨクヨしなくなった」と思えるようになるまでの様々な出来事。武道館を沸かせる国民の叔母(自称)の、自伝エッセイ。

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彼方からの手紙

清水ミチコさんと光浦靖子さんが月1回手紙を送りあうリレーエッセイ

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清水ミチコ

岐阜県高山市出身。1986年渋谷ジァンジァンにて初ライブ。1987年『笑っていいとも!』レギュラーとして全国区デビュー、同年12月発売『幸せの骨頂』でCDデビュー。以後、独特のモノマネと上質な音楽パロディで注目され、テレビ、ラジオ、映画、エッセイ、CD制作等、幅広い分野で活躍中。著書に『主婦と演芸』『「芸」と「能」』(共に幻冬舎)、『顔マネ辞典』(宝島社)、CDに『趣味の演芸』(ソニーミュージック)、DVDに『私という他人』(ソニーミュージック)などがある。

光浦靖子

1971年生まれ。愛知県出身。幼なじみの大久保佳代子と「オアシズ」を結成。テレビやラジオで活躍する一方、手芸作家、文筆家としても活動。著書に『『50歳になりまして』『お前より私のほうが繊細だぞ!』『傷なめクラブ』など多数。2021年8月よりカナダに留学。現在は、就労ビザを取得し、カナダで生活を続けている。(写真:山崎智世)

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