7年前の3月。今よりちょっと早い、まだ「桜、早く咲かないかなぁ」なんて会話をしていた頃、新宿村LIVEにて上演した山田ジャパン『9でカタがつく』。時を経て、今回、この桜咲く季節に下北沢・本多劇場にて再演、いや、もちろん役者も変わり、脚本も変わり、ですから。もう“新作”と言っても過言ではないかと。とにもかくにも『9でカタがつく』を上演。3月29日、無事に千穐楽と相成りまして。只今、打ち上げを終え、帰宅した真夜中。いろんな余韻に浸りながら書いております。
そんなわけで7年前にも書きましたが、再度あらすじをば。ネオンひしめくオリエンタルタウンの片隅にある“ムジナ”という雀荘が舞台。人懐っこいが自分の素性に繋がる話はしない青年・チヒロ。その彼の元に9年ぶりに居場所を突き止め、母・カヨがやってくる。カヨの目的は「もう一度家族をやること」。親子は何故離れ離れに? そして何故チヒロは過去を隠すのか? これは家族の再生に燃える母親とそれを拒否する息子、そしてそれを見守る麻雀打ちが織りなす物語。今回もこの母親・カヨをやらせていただきました。
この作品にはメーテルリンク「青い鳥」、宮沢賢治「銀河鉄道の夜」、松本零士「銀河鉄道999」が出てくるのですが、いずれも“幸せ”にまつわる物語たち。山田ジャパン座長・山田能龍はパンフにこう書いていました。
どんな種類、どんな解釈であれ私たちはやっぱり、幸せになりたい。ではどうすれば幸せを掴まえられるのか。その答えを、作品の中で私なりに提示しています。
本当に“幸せ”って難しい。同じことでも、人によっては幸せだったり幸せでなかったりする。雨が降ったら何かが中止になってガッカリな人もいれば、雨のおかげで大地の恵みが育つ喜びを感じる人もいる、みたいに。過去のトラウマから前に進めないチヒロに、雀荘のオーナー・申さんが言うんです。「自分の為に生きて何が悪いんだよ? 自分の人生を大事にするんだよ、本当に必要なものを見極めるんだよ!」そしてそんな“幸せ”の掴み方は「フィジカルだよ!」と。「みんな幸せの青い鳥はどこにいるだの、どこで捕まえるだのごちゃごちゃ言いやがって。あんなもんフィジカルでガシッと掴まえちまえばいいんだよ。」しかもこの申さん役、劇団☆新感線の吉田メタルさん。“フィジカル”の説得力が違います。ただこの“フィジカル”、55歳、なかなか衰えておりますから。もうほぼレギュラーで出演していただいている東京ダイナマイト・松田さんが実際に“青い鳥”役をやって、チヒロに見せる為、みんなでそれを“フィジカル”で捕まえにいくシーン。終わったから言わせてください。キツイ。キツかったぁ。ヒールの靴で舞台上を走り回ったり、階段を昇り降りしたり。毎晩の入浴剤&湿布&マッサージガンじゃ復活できないほど、足、やばかった。あの鳥を追いかけるパワー、もしかして私だけ“フィジカル”じゃなくて“メンタル”だったかも。日本語で言うところの“気力”。気力で捕まえに行っていた。毎日“全力”以上の全力で走った。でもね、「ああ、こうやって幸せを掴まえてもいいんだ」とすごく思ったし、もう最後は“フィジカル”だろうが“気力”だろうが、とにかく“パワー”で奪い取る。うん、いい。もちろんそのパワーが出ない時もあるわけで。なんだかうまくいかない事とかいやな事が重なり倒したりして。もう全部捨てて逃げてやろうと思っても、その逃げる時間もなかったり。でもそんな時こそ、もう私お得意の“黄色い粉”(あ、アミノ酸の粉です。)を摂取してでもいいから、最初の“よっこいしょ”さえふんばれば、もしかしたらいけるのかもしれない。そんなことを思わせてくれたこのシーンは、身体はめっちゃしんどかったけど、大好きなシーンでした。
もう一つ好きなとこ。これは前作にはなかった、羽鳥由記ちゃんが演じた彫り師・アヤメの台詞。タトゥーって一生変わらない、と好きな人の名前とかを彫っても、別れたら消しに来る。そしてその上にまた新しいタトゥーを彫る時、前の墨の跡は残っていて。「その風合いがね、その人の歴史を表す。世界で一つだけの味わいになる。もし傷が身体に刻まれてるなら、上書きして味わいを出せばいい。」これまた由記ちゃんが、何て言うんだろう。とてつもない包容力? 強さ? 優しさ? とにかく言葉で包み込んでくれるのが素敵で。もちろん私に言っているわけではないけれど日々、めっちゃ浴びていました。
そう言えば稽古中、ふとした日常だけど忘れられない光景があって。ある日、私は車で行って、稽古場横の駐車場に停めた。その駐車場には早咲きの桜が咲いていて。早めに着いちゃっていたので、少しその桜を眺めていたら、なんか花が揺れるんですよね。風とかじゃなくて、ファサファサって。そーっと音がしないように車から降りて木の方へ。するとメジロが花の蜜を吸いに来ていたのです。普段、全然使わない、宝の持ち腐れである携帯の“2億画素”カメラを起動。満開の桜の合間に見えるメジロをなんとか撮ろうと上を見上げて、何度も身体の角度を変えながらシャッターを切った。夢中で撮っていたら、卒園式か何かの帰りっぽい、ちょっとおめかしした女の子ちゃんとそのご両親がすぐ横に立っていらして。「すいません」と会釈して、私が再び車の中に戻るとすぐにその女の子ちゃんは舞い散る桜の花びらを拾い集めて、両親の前でパーッとまいていた。それを何度も繰り返していて。その姿をお父さんが携帯で写真を撮っている。平和。いい世界。
撮ったメジロの写真を能龍さんに見せたら、「たまには上、見なきゃあかんね」と。それだけ上どころかPCとにらめっこして、全身全霊であの台本を書きあげてくれた能龍さんには尊敬と感謝をいくら伝えても足りないくらい。そして『9でカタがつく』に関わったすべての皆々様に、心から感謝いたします。本当に本当に本当にありがとうございました。いやぁ、私は“幸せ”者です。はい。
【本日の乾杯】公演中、差し入れで頂戴したシェ・リュイの“プティ フール サレ アペリティーフ”。チーズやコンブなど、6種類の塩味のパイ。














