ラッパー・GASHIMAさんによる人気連載『先生、俺またバグってます。』。
今回は、双極性障害の天敵ともいえる「気圧」と、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)のお話。
気圧の変動で体調を崩すなか、友人に勧められてサムライジャパンの試合を観ていたGASHIMAさん。
テレビに映る大谷翔平選手の姿をきっかけに、症状との向き合い方について、あるヒントを見出したそうです。
* * *
3月の頭は気圧変動が激しかったこともあり、
今年に入ってトップクラスに体調が悪かった。
俺の双極性障害の症状は天候や気圧に
めちゃくちゃ左右される。
気圧が不安定な時期は
朝も起きられないし、
起きた瞬間から理由もなく
絶望的な気分に襲われる。
身体も鉛のように重たくて
ベッドから出られない。
俺は酒を飲まないからわからないが、
大酒飲みの地元の友人は
「それって毎朝、二日酔いやん。」
と言っていた。
そんな毎日が二日酔いの中
ワールド・ベースボール・クラシック、
通称WBCが始まった。
普段、俺は野球を見る習慣がなく、
現役の野球選手も
大谷翔平とダルビッシュ有ぐらいしか知らない。
しかし、そんなこともお構いなしに
前述の大酒飲みの友達が
「騙されたと思って見てくれ! 頼む!!」
としつこくベースボール・ハラスメントを
カマしてきやがった。
テレビを見れる程度には元気、
仕事をするほどの気力はない。
そんな俺に野球観戦は
ちょうど良いかと思い
なんとなく見てみることにした。
初戦のチャイニーズ・タイペイ戦を見て、
出てきたのはあまりにも月並みすぎる感想。
「大谷ハンパねぇ。」
の一言だった。
今さら口にするのも恥ずかしいほどに
一般常識であることは
重々承知でありながらも、
敢えて、言わせてもらう。
大谷はハンパねぇ。
「この局面でホームラン打ったら
少年漫画みたいだよな。
そんな上手い話、
現実にはありえないけど。」
というタイミングで
あの男はホームランを打つ。
サムライジャパン圧勝の興奮の中、
大谷に打ちひしがれた俺は
試合終了後にまたもや
うつのスパイラルに飲み込まれた。
「俺は音楽で大谷みたいな
プレイヤーになりたかった。
でも、双極性障害なんて
ハンデを背負いながら、
大谷にはなれない。
大谷は心も身体も強靭なんだ。
生まれた瞬間から俺の運命は決まってた。」
そんなうつ特有の自己嫌悪と
他者比較タイムがスタート。
同じミュージシャンと
自分を比べるならまだしも、
野球選手と比較し出すんだから、
ワケがわからない。
一人で勝手にバッドに入っていると
試合終了後のヒーローインタビューが始まった。
その時に俺の目に入ったのが大谷の
右腕に残った手術痕だった。
「トミー・ジョン手術の痕やで。」と
大酒飲みの友達は言っていた。
調べてみると、大谷は二度に渡って、
肘の手術をしていたらしい。
もちろん術後に投球はできず
打者に専念していたという。
あの二刀流の大谷にも
投げられなかった
シーズンがあった。
俺の双極性障害も
数年に一回のペースで
大きな波がやってくる。
その波がやってくると
創作活動はもはや、
日常生活すらままならない。
今年の冬はその大きな波が
ぶつかってしまった年だ。
完全無欠の大谷さんにも
投球できない年があった。
俺にだって、ベストなプレーが
出来ない年があってもいいじゃないか。
大谷翔平は野球を20年ぶりに見た
スーパーにわかの俺にすら
そんなことに気づかせてくれた。
恥ずかしいけど、もう一度
言わせてもらいたい。
やっぱり大谷はハンパじゃねぇ。
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先生、俺またバグってます。

3人組シンガーソングライター・グループ WHITE JAMのラッパーとして活躍するGASHIMA。
そんな彼はある日、「双極性障害」であると診断される。
思い返してみれば、昔から自分はちょっとバグってた。
日本とアメリカで経験した過去、生い立ちと音楽、メンタルヘルスの狭間で感じた「生きづらさ」をパーソナルかつリアルに綴るセルフドキュメンタリー連載。
目まぐるしく変わる環境に対するやり場のない怒り。
振り返ってみれば「若気の至り」だと思っていた破壊的衝動。
あれも、これも、もしかしたら躁状態だったのかも?
“ただの勢い”の裏にはちゃんと病理があった。
そう思えると、あの時の俺も少しだけ愛せるようになった。










