
オリオン座を結ぶクセがある。
幼いころに父から教えてもらったオリオン座。三十歳になった今でも、夜空を見上げてはオリオン座を探してしまう。
家族でキャンプへ行くと星空鑑賞をするのがお決まりだった。
父と母、妹とみなで川の字に寝そべり流れ星を待った。神奈川県のキャンプ場では、ついぞ流れ星を見つけるに至らなかった。
だが、今になって知る。
星に唱えるはずだった「お金持ちにしてください」という願いが叶うより、そのひとときこそが何よりもかけがえのないものだったんだと。
キャンプへ行くと父はいつも「あれが北斗七星で、あれは火星だ」と、宇宙の神秘を披露してくれた。そんな物知りな父が好きだった。

社会人一年目、初めてのひとり暮らし。
社会の荒波に揉まれ、へとへとになった心と体を引きずり歩く下宿先までの帰り道で見上げた静岡の夜空。オリオン座を見つけては、涙がこぼれた。
社会人五年目、アフリカひとり暮らし。
右も左も分からぬ異国で途方に暮れ、街灯のない舗装もされていない夜道で見上げたルワンダの夜空。オリオン座を見つけては、世界はひとつなんだと目頭が熱くなった。
神奈川でも、静岡でも、ルワンダでも、どんな場所からもオリオン座だけは見つけられた。
社会人十年目、独身ひとり暮らし。
人生への諦念、孤独との共存を受容しつつ虚無で見上げる新潟の夜空。オリオン座を見つけても、もう涙すらこぼれない。
オリオン座を見つけるたび、父を思い出す。
あのときの温かい記憶が、今の自分を生かしてくれている。ありがとう、父さん。
あっ、ちなみに父は元気に生きています。
ゴルフ場のキレイに刈り込まれたグリーンの写真を今日もインスタであげています。

アウトドアブランド新入社員のソロキャンプ生活

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