
私は自他共に認めるせっかちである。
今日は私のせっかち具合をご紹介する。
例えば撮影のある一日。朝4時半に起床予定だとする。
せっかちの戦いは前日の夜からすでに始まっている。
当日に持って行く荷物と着て行く洋服を全て用意する。
しかも着ていくものは最速で着られるように順番に重ねて並べておく。
犬猫のご飯も、すぐに出せるようにご飯皿や水入れも準備。
そしてだ、私はせっかちでもあるが自分で毎日やると決めたことは絶対やりたい性格で、
15年くらい前から、たとえどんなに早起きの時でもトイレの掃除だけは必ずすると決めている。便器をスポンジで擦るだけではない。便器の周りやトイレの床まで雑巾掛けしてピカピカにしなくては気が済まない。
なのでトイレを掃除するための真っ白い雑巾、自分で作ったトイレ掃除用の洗剤。これもすぐに取りやすい位置に出しておく。
とにかくやりたいこと、やらなければならないことだけを考えて、翌日の動線を考え、それに伴い使うものを適所に配置してから寝る。
翌日。
朝起きた瞬間からこれらの準備を、一気に、一歩も立ち止まらずに行っていく。
なぜ立ち止まらないか? せっかちさんは、前の日から準備万端だからである。
それから撮影現場に到着。
ここから撮影が終わるまでは私のせっかちは全く出ない。
元々我々俳優は待つのも仕事のうちであるし、この時間は俳優にとって実に有意義な時間だから。
だが、撮影が終わった瞬間から私のせっかちは当然のことながら顔をだす。
帰りの支度は誰よりも早い。
一度、男優さんよりも早く帰り支度が出来てしまって、みんなに驚かれたこともある。
さて、現場を離れ電車で帰宅。
電車の中で私はどうやったら一番早くお酒が飲めるかを考える。
1日のうちで一番頭を使う時間だ。
私は考える。帰ってすぐにビールが飲みたい。
しかし最近、空きっ腹で飲んでしまうとすぐに酔ってしまって、他のことができなくなってしまう。
なので私の編み出した方法は
最寄り駅まで到着したらすぐにコンビニに寄っておにぎりとビールとハイボールを買う。
家までの道すがらにおにぎりを食べる。
これで空きっ腹で飲んで酔ってしまうのを回避。

我が家へ到着。
すぐにお風呂の準備をしながら犬猫のご飯とトイレの掃除。
おっと、お酒は忘れず冷蔵庫に。
お風呂に入って出てきたら、髪の毛を丁寧にタオルドライ。
まだ髪の毛は濡れているが、そのまま犬の散歩。
毎度ここに書いているが、犬の散歩はだいたい、いつも30分。
近頃の陽気なら髪の毛は楽勝で乾いてくれる。
帰って来てから翌日のセリフの確認や、明日の準備を全て整え
冷蔵庫からキンキンに冷えたビールをゴクリ。
常備菜をつまみにしながら氷のたくさん入ったハイボールをグビリ。
やっとここで一息だ。アルコールが入った身体は心地よく、1日の疲れを癒してくれる。
さあ、ちょっとゆっくりしようと思うと、再び私のせっかちが発動する。
常備菜が入った皿が一皿でも空になると、洗いたくなる。
あとでまとめて洗うのが面倒くさいから。
つまみなんてゆっくり食べればいいものを、結局あとで洗うのを考えて一気に食べる。
お酒はまだ残ってるのに、洗い物を始める。
さあ、これで落ち着いてお酒を飲もうと思っていると、今度は酔う前にフロスと歯磨きをしなくちゃと思い出す、
酔って忘れたら絶対に嫌だと、結局お酒も途中でやめ
歯を磨き、フロスをしてパジャマに着替えて寝る。
何のためにこんなに急いでいるのか、たまに分からなくなる私である。
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山野海の渡世日記

4歳(1969年)から子役としてデビュー後、バイプレーヤーとして生き延びてきた山野海。70年代からの熱き舞台カルチャーを幼心にも全身で受けてきた軌跡と、現在とを綴る。