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幸齢党宣言

2025.05.22 公開 ポスト

「クスリより大事なのは栄養状態」和田秀樹が語る“幸齢者”への道和田秀樹

「壁シリーズ」でおなじみの和田秀樹先生の最新刊『幸齢党宣言 医療改革で、世界もうらやむ日本を創る』が、2025年5月28日に出版されます。

政治・政策の視点から、厚労省・製薬業界・医学教育の抜本的改革を訴え、幸せ多き日本への大改造計画をまとめた一冊。本書の「はじめに」から、一部を再編集してご紹介します。

*   *   *

ライフワークは、高齢者と呼ばれる人を元気に、若々しくしていくこと

私はこの6月7日で65歳になります。

つまり、高齢者の仲間入りをします。

私自身は65歳を本当に高齢者と呼んでいいのかを疑問に思っていますし、高齢者ということばのニュアンスが嫌いで「幸齢者」と呼ぶ提案もしてきました。

実はある時期から、残りの人生をかけたライフワークを決めました。

それは高齢者と呼ばれる人を元気に、若々しくしていくことです。

少子高齢化の問題は論じられて久しく、岸田前首相は「異次元の少子化対策」と銘打って莫大なお金を使って少子化対策をやるという宣言をしました。

その是非について、ここではあえて論じませんが、一つ言えることは、よしんばそれがうまくいっても(うまくいかない可能性のほうが大きいと私は考えていますが)、その生まれてきた子どもたちが、労働力や親をあてにしない消費者になるのに、少なくとも20年はかかるということです。

つまり、現在、問題とされている人手不足や消費不況の解決には、当分はならないのです。

アベノミクス以降の失政のために、円の価値も大幅に下がりました。

日本国内の実質賃金が上がらないこともあいまって、外国人労働者が日本より割のいい韓国や台湾に行ってしまう、つまり日本が雇い負け状態にもなっています。つまり労働力不足に、これまでのように外国人を頼れないということです。

これを解決する方法は、日本の高齢者に元気になってもらうこと、若返ってもらうことに他ならないと私は考えたわけです。

そのために、私はいろいろな書き物を高齢者向けにシフトするようにしました。

私の長年の高齢者医療とアンチエイジング医療の経験と、高齢者ウォッチャーとしての知見から、高齢者の老化を防いだり、元気でいてもらう方法論、若返りのための生活術などをまとめて著書にするという仕事を続けるようにしたのです。

おかげさまで、多くの高齢者やその家族の方々に受け入れられたようで、『80歳の壁』は2022年のトーハン・日販の年間ベストセラー1位になりました。そのほか『70歳が老化の分かれ道』という本もずっと売れ続けて、50万部に届く勢いです。

これらの本は、従来の老年医療、あるいは現代医療に対して、私が高齢者医療を行ううえで長年抱いてきた 反駁 (はんばく) をまとめたものでもあります。

薬より栄養状態が健康長寿に直結する

私の臨床経験からも、あるいはさまざまな疫学データからも、高齢者は血圧や血糖値がやや高め(ものすごく高い場合はそうでないとは思いますが)のほうが死亡率が低く、コレステロール値に関しては高いほど死亡率が低く、がん死も少ない。体型に関しては、やや太めのほうが長生きすることがわかっています。

これらの多くは、現代医学の常識に反するものです。

どちらを信じるかは読者の皆様にお任せするとして、私の経験や入手したデータが正しければ、多くの人たちの長寿につながります。

さらにいうと、長生きできるかどうかは別として、コレステロール値が高い人や、やや太めの人のほうが、元気でいることも間違いなく言えると思います。

コレステロールは免疫細胞や男性ホルモン(男女問わず元気にします)の材料なので、この値が高いほうが元気になれるのはもっともなことです。

実は私は、薬や医学より、栄養状態のほうが、人間の健康長寿に寄与していると考えています。

19世紀の末にスウェーデンを皮切りに、軒並み欧米諸国で平均寿命が50歳を超えるのですが、粗食でろくに肉を食べなかった、当時の日本人の平均寿命は30歳代でした。当時の日本はオーストラリアの37分の1、アメリカの18分の1しか肉を()っていなかったのです。

日本人が長寿化したのも、若返ったのも(1951年当時の磯野波平が54歳だったということからも、いかに日本人が若返ったかがわかるでしょう)、栄養状態の改善のおかげと考えるのが自然です。

そういう意味で、現代医療を過信してはいけないし、免疫力をあげ、メンタルヘルスを保つためにも栄養をしっかりと摂らないといけないという 啓蒙 (けいもう) を、著述などを通じて積極的に行えたのは意義のあることだったと自負しております。

ただ、それなりに本が売れ、それなりに私の名前が高齢者の間で浸透してくるにつれ、著述や啓蒙活動だけでは限界があることにも気づかされます。

たとえば、私の本を読み、データを示したうえで、医者に薬を減らしてくれと頼んでも、多くの場合医者が許してくれないそうです。

薬については、多剤併用の害が明らかになっていて、薬を飲んでいない高齢者の転倒の確率は3%なのに、4種類の薬を飲むと20%にそれがはねあがり、5種類だと40%に達してしまうという調査結果があります。

これは、日本の医療システムが抱える問題のせいなのです。

 

続きは、『幸齢党宣言 医療改革で、世界もうらやむ日本を創る』でお読みください。

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幸齢党宣言

「壁シリーズ」でおなじみの和田秀樹先生が、幸せ多き日本への大改造計画を記した一冊です。本書から、一部をご紹介します。

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和田秀樹

一九六〇年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、三十年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。『80歳の壁』『70歳の正解』『マスクを外す日のために』『バカとは何か』『感情バカ』(すべて幻冬舎新書)など著書多数。

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