
「入場料のある本屋」がある。
その話を聞いたのは6年ほど前だった。「文喫」という名前のその店は、オシャレタウン六本木にあるという。ふだん神奈川県内から出ることのない私には、はっきり言って縁遠い街だ。たまに東京へ行く時も、出版社がある神保町や飯田橋、アクセスのいい東京や新宿、渋谷へ足を運ぶことが多く、六本木へ立ち寄る用事などまず発生しない。
文喫の店名は、本好きの人ならどこかで聞いたことがあるのではないか。実際に訪問したことがある、という人もいるだろう。私も「行ってみたいな、行ってみたいな」とは思っていた。思ってはいたが、生来の怠けグセを理由に、文喫との接点がない生活を数年にわたって送ってきた。
私がグズグズしている間にも、文喫のほうはどんどん進化していく。2021年3月には福岡天神に2店舗目が、2024年4月には名古屋栄に3店舗目がオープンした。六本木の店舗でも、トークイベントや夜営業など、さまざまな催しが行われた。
――さすがに、そろそろ行ってみねばなるまい。
そんな心の声が聞こえはじめた矢先である。打ち合わせ中、担当編集者氏が唐突にこう言い出した。
「ぼく、文喫の方と連絡とれますよ」
えっ、そうなの?
「よかったら次の1万円企画で行ってみますか?」
ぜひそうしよう。さあ早く。すぐ行こう。
私はきっかけがないと動けない人間だが、きっかけがあればいくらでも動く。変わり身の早さを見せつつ連絡を取ってもらうと、先方は取材を快諾してくれた。
そういうわけで、勇んで文喫へ向かうことになった。オシャレタウンの「入場料のある本屋」で、私もオシャレピープルの仲間入りを果たすのだ。
*
「文喫 六本木」までは、東京メトロ六本木駅から歩いて1分。お店の出入口はビルの一階にある。担当編集者氏と集合し、店内へ。

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文豪未満

デビューしてから4年経った2022年夏。私は10年勤めた会社を辞めて専業作家になっ(てしまっ)た。妻も子どももいる。死に物狂いで書き続けるしかない。
そんな一作家が、七転八倒の日々の中で(願わくば)成長していくさまをお届けできればと思う。
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