一日一冊読んでいるという“本読み”のアルパカ内田さんが、幻冬舎の刊行作品の中から「今売りたい本」を選び、そして“POP職人”としての腕を振るって、手描きPOPも作ります。
そして、アルパカ内田さんへの「オススメ返し」として、幻冬舎営業部の人気者・コグマ部長からも、一冊ご紹介。
* * *
元カリスマ書店員でPOP職人のブックジャーナリストが売りたい本
第31回 新川帆立『女の国会』
対関係にありつつも、ある法案については共闘
関係にあった与党議員・朝沼侑子が自殺したの
だ。「自分の派閥のトップも説得できていなかっ
たの? 法案を通すつもり、本当にあったの?」。
死の前日の朝沼への叱責が彼女を追い詰めたの
ではないかと批判が集まり、謝罪と国対副委員
長の辞任を迫られてしまう。だが、長年ライバ
ル関係を築いてきた高月には朝沼の死がどうも
解せない。
皆さん、こんにちは。政界に正解なし。アルパカ内田です。
なんとも雄弁な物語だ。作者はいま最も勢いを感じる作家・新川帆立。特に若い女性を読者ターゲットにしたエンターテインメント作品を書かせたら当代随一といっても過言ではない。理不尽なこの世を一刀両断。「女は怒っていい。こんなのおかしいと言っていい」といった登場人物の言葉の数々から、そんな彼女のパワフルな本音が聞こえてくるのだ。
冒頭からラストまでまったく油断できないスリリングな展開に目を見張る。
「女に生まれてごめんなさい」という謎めいたメッセージを残して、気鋭の女性政治家が亡くなった。それは「性同一性障害特例法の改正案」が党の上層部の判断で落とされた翌日の出来事であった。自殺か、それとも他殺なのか。ジェンダー問題も絡まって真相を追うほどに疑惑が膨らんでいく。
この国の中枢にあるのは、男ばかりが跋扈する古い体質の組織。そして「権謀術数」を極めた深すぎる闇だ。裏金問題、リーダー不在、派閥の圧力……男たちが牛耳る今の政治は、ますます庶民の生活とかけ離れてしまっている。本書を読めば政局の内幕や選挙などの裏側も垣間見られ、もう政治に無関心ではいられなくなるはずだ。
百年以上前から、百回以上組閣されているのに、なぜひとりの女性首相も誕生しないのか。女たちの積もりに積もった怒りが、硬い拳となって常識を崩壊させる。『女の国会』が読まれるほど、この国は良き方向に変化するに違いない。清き一票ならぬ一冊をぜひ!

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アルパカ通信 幻冬舎部

元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。
幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!
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