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夜のオネエサン@文化系

2023.06.16 公開 ツイート

祈りのカタチ、手先の祈り~「青いカフタンの仕立て屋」 鈴木涼美

先日、久しぶりに阿佐ヶ谷のロフトへ行って島田雅彦氏の新刊『時々、慈父になる』のトーク・イベントに参加したのだけど、自身の人生の後半30年をちょうど30年前に生まれた息子との関係を主軸に描いたその私小説の中で、勉強が苦手な息子が神様に「バカが治りますように」と祈る場面があった。口の悪い父はつい息子だけでなく気に入らない政治家その他を「バカ」と気軽に言葉にしてきたが、旅行先のミャンマーの寺院で熱心に祈る息子に祈りの内容を聞いて大変反省する。そしてそのような親に育てられながら、誰を傷つけることもなくひたすら神に自分の「バカ」が治るよう祈る健気な息子の姿に読者もまた感動する印象的な場面である。

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夜のオネエサン@文化系

夜のオネエサンが帰ってきた! 今度のオネエサンは文化系。映画やドラマ、本など、旬のエンタメを糸口に、半径1メートル圏内の恋愛・仕事話から人生の深淵まで、めくるめく文体で語り尽くします。

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鈴木涼美

1983年東京都生まれ。蟹座。2009年、東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。著書『AV女優の社会学』(青土社/13年6月刊)は、小熊英二さん&北田暁大さん強力推薦、「紀伊國屋じんぶん大賞2013 読者とえらぶ人文書ベスト30」にもランクインし話題に。夜のおねえさんから転じて昼のおねえさんになるも、いまいちうまくいってはいない。

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