幻冬舎営業部 コグマ部長からオススメ返し
村上 龍『ユーチューバー』
一方こちらは村上龍による長編小説。
冒頭の舞台は都内高級ホテル。70歳になる小説家・矢﨑健介はそれまで顔見知り程度にしか過ぎなかった男から奇妙な自己紹介をされる。「わたしは世界一もてない男なんです」。その男はやがてこんな依頼をしてきた。自らが手がけるユーチューブチャンネルで語ってほしいというのだ。出演を快諾した矢﨑は後日、その撮影に応じる。「みなさん、こんにちは、矢﨑健介です」。静かに矢﨑は語り始めた。
明かされたのは、若かりし日の矢﨑の女性遍歴。鮮明かつ的確な表現なので、聞く側にはその光景がまるで映画のように立ち上がってくる。「頭がしびれて、ものを考えられなくて、吐くわけじゃないんだ。……テキーラを飲んでいたら、吐いたあと、またテキーラを飲むんだ。今、吐くまで飲む若い人とかいるのかな」「雨の日、水色のレインコートが、ぼくの小汚いアパートの景色の中で際立っていたんです。それで、彼女は去っていったんです」
無機質な高級ホテルと、その室内で行われる生々しいやりとり。村上龍は現代のツールであるユーチューブを巧みに素材に取り入れ、こうして新しい傑作小説を作り上げた。
『限りなく透明に近いブルー』『コインロッカー・ベイビーズ』『半島を出よ』――。
そして今、私たちの心を解放できるのは、村上龍ただ一人だ。
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アルパカ通信 幻冬舎部

元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。
幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!
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