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歌ときどき旅、今は育休中

2023.02.22 公開 ツイート

僕の恥部ツルツル案件と、じいちゃんの葬式が賑やかだったことが、なぜか繋がる世の中です 歌う旅人・香川裕光

前回のエッセイを書いてから数日後、祖父は眠るように天国へと旅立った。享年85歳。大往生と言っていいかな。

祖父は狙いすましたかのように、週末の朝方に呼吸することをやめた。土日だったので親戚一同が集まりやすく、県内外から全員が駆けつけることができた。お陰で、通夜も葬式もとても賑やかだった。もう1週ずれていたら僕は自分のライブツアーと被ってしまい、参列できないところだったし、これ以上良いタイミングはなかったんじゃないかな。さすがだ。

最期の最期まで天晴れなじいちゃんだったのである。

 

 

寂しくないといえば嘘になるけれど、人生をまっとうした祖父に対して、今更別れを悲しむのも野暮だ。と僕は思っていた。久々に再会した親戚一同で賑やかに見送ってあげよう。みんな僕と同じように思っていたのか、一同が笑顔だった。

(写真:iStock.com/kokoroyuki)

急遽、祖母の要望で、葬儀の最後に僕が歌うことになった。こんな時に孫がしゃしゃり出るのもどうかと引け腰だったが、歌ってお別れするのも悪くない。近所の人からギターを借りてきて、祖父が好きだった美空ひばりの『愛燦燦』を歌うことにした。

 

1番は笑顔で歌った。

2番は目を閉じて歌った。

3番に差し掛かる前の間奏で、僕は溢れる涙をついに堪えきれなくなった。

声が震えてうまく発声できない。歌いながらこんなことになったのは生まれてはじめてだった。

祖父との思い出や、祖父がくれたモノが、どんどん体の中から溢れて、そのまま消えてってしまうような感じがした。

もう二度と目覚めることのない祖父は、小さな写真の中で懐かしい姿のまま微笑んでいた。

 

僕の涙と鼻水につられて、式場全体から啜り泣く声が聞こえた。

 

結局、笑って見送るなんて、そう簡単にできやしないのだ。祖父はたくさんの献花と、参列者の涙に囲まれて、青空へと昇っていった。

祖母は小さな背中を丸めて、最期の最期まで祖父に寄り添っていた。

 

ありがとう、じいちゃん。またいつか。

有難いことに前回のエッセイを読んで、葬儀に駆けつけてくれたり連絡をくれた祖父の旧友もちらほらいた。そのことを祖母が何より喜んでくれたのだった。僕のわがままで幻冬舎さんまで巻き込んで書かせてもらっているこのエッセイがこんな形で最後のじいちゃん孝行になるとは。感謝、感謝である。

『アイノコトバ』はこちらから

*   *   *

敏腕

『香川さん、以前の記事すごくバズってます!』

 

先日、このエッセイの担当の編集者”そでやまさん”からLINEをもらった。最近のZ世代による迷惑動画のニュースを見ていたところだったので、何かがひっかかって大炎上でもしたのかと、少しビビったが、炎上というわけではなさそうだった。

そでやまさんは敏腕編集者で、それはそれは俊敏にブンブンと腕を振り回し、絵本や書籍などヒット作をたくさん手掛けているスーパーウーマンである。いつも僕のつたない原稿の”赤ペン先生”として(実際は青ペンで直しが入る)文章を綺麗に整えてくれる。

文章って編物くらい実は緻密で、ほんの少し接続詞や構成が変わるだけで全体の印象がガラリと変わる。編物やったことないけど(ないんかい!)。エッセイを書くのは作詞とはまた別物で、僕は文字を編み込むように、言葉を繋げている。

僕がこのエッセイを自分のブログなどで書かずにわざわざ幻冬舎Plusさんで書かせてもらっているのは、はっきり言って勉強のためだ。この校正をしてもらう作業そのものが非常に文章の勉強になるのである。そもそも、そこから直していく作業が楽しい。

いつか娘のぴーちゃんの青ペン先生になるためでもある。僕の物書きとしての一面を育てて頂いているのだ。

 

さて。バズったと聞いてあまりピンと来なかったのだけど、どうやらとある記事がニュースアプリなどですごくたくさんの方に読んでもらえたらしい。やはりせっかく書いている以上、たくさんの人に読まれるのは嬉しいことだ。やったー!

どの記事だろう、やはり感動的な祖父とのお別れのエッセイかな? と思ったら……

 

何回か前に書いた『コロナで入院中、暇すぎて下の毛を剃りました。』の記事だった。

 

し、下の!! 毛の!! 

編集者もびっくりのリーチ数を見せていたらしい。いや、なんでやねん! もっと自信作色々あったのに……!?

育児エッセイを少し逸脱して、悪ふざけで書いたしょーもない下ネタが伸びるって正直切ない。でも嬉しい。むしろもうボーボーになってしまったので、少し罪悪感すらある(なんで?)。しかしヒットって案外そうゆうものなのかもしれない。

どの業界もそうなのだけど、ヒットする商品や作品にはそれなりの”ヒットの法則”があったりする。数ある法則の中でもやはり効果を発揮するのが『エロス』つまり下ネタであるようだ。

コカコーラの瓶が女性の身体のラインをモチーフにデザインされて大ヒットに繋がったというのも有名な話だが、福山雅治の深夜ラジオしかり、どぶろっく然り、結局のところ、そうゆうのに心惹かれてしまうのである。

 

通常は、バズるとTwitterのフォロワーが増えたり、YouTubeのチャンネル登録者が増えたりする。自身の発信力がアップするのだ。インフルエンサーというのは、少なからずバズったことがきっかけで、それを自身の活動に繋げている。しかしながら、今回の場合はあくまで記事がバズっただけなので、僕には何の影響もない。え? バズってたの? って感じである。

 

これはつまり、ただただ”僕の恥部がツルツルになった”という事実だけが何十万人もの人々に周知されただけ。……ということだ。(そんなことある?笑)

 

そもそも、こういったネット上の記事は、タイトルの引きの強さがものを言う。そしてこのエッセイに毎回タイトルをつけているのはほかでもない、担当の”そでやまさん”なのである! び~ん~わ~ん~!!!

『コロナになりました。暇すぎて下の毛を剃りました』というパワータイトルをつけてくれたそでやまさん。今後もエッセイで何かしらカミングアウトすると、そでやまさんの手によって世間に広められてしまうことになる。

まだまだ、ぴーちゃんに胸を張れる文豪への道のりは遠い……! ちゃんと自分の力でバズれるよう、もっと腕毛もツルツルに……じゃなかった、腕を磨いて頑張らねば……!!

写真は香川さんより

ぴーちゃんは「何」世代と呼ばれるようになるのだろうか。

先日ようやく”寝返り”ができるようになった!! 子どもの成長ってこんなにも親をワクワクさせてくれるのかと驚いている。

どんどん成長する我が子の姿を、できるだけ美しい文章で残してあげたいと思っている。人目を引くために迷惑行為へとエスカレートしちゃうみたいなことはせず、微力でも誰かの力になったり、少しでも幸せを感じてもらえるような文章を編みたいと思っている。そうゆうモノを、子たちにも届けていきたいと思っている。

そして、ぴーちゃんのことをたくさんの人に愛してもらえるように…。やや更新頻度が落ちている気もするが、そこらへんも含め生温かい目で見守って頂けると幸いである。

 

さて、今回そでやまさん、なんて記事タイトルにするんだろう。ワクワク。

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歌ときどき旅、今は育休中

旅するシンガーソングライター香川裕光、このたび父になりました。ので、育休をとって、初めての子育てに七転八倒。愛あふれる家族エッセイの連載です。

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歌う旅人・香川裕光

1986年広島県生まれ。20代前半の頃は重度障害者のための介護施設に勤め、介護の仕事の傍らで、ギターを持って歌っていた。この施設で、歌が人の心の奥に強く鋭く届くことに感動し、もっと多くの人に歌を聴いてほしいと一念発起。日本中を旅しながら、ライブを続けるように。そんなとき、TBS系列で深夜の時間帯に放映されていたオーディションバラエティ番組「Sing!Sing!Sing!」に、「他薦」されて出演したところ、審査員の高評価を得る。結果的に、最終決戦の場である「歌王」出演に至り、そこでグランプリに選ばれた。 

全国各地にて年間150本以上のライブ活動を行いつつ、広島のラジオ番組でDJもこなす。YouTube配信にて、オリジナルやカバー曲の動画を200本以上アップ。チャンネル登録者は1万人を超えている。映画『ケアニン~あなたでよかった~』の主題歌『星降る夜に』書き下ろし、世界遺産・嚴島神社高舞台での単独の奉納コンサートなども。

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