
約半年間の育休が終わろうとしている。
休む前は、6ヶ月も休むなんて休み過ぎだよなぁ。長いよなぁ。。と不安に感じていたが、日々娘のぴーちゃんと過ごしていると、本当あっという間に1日が過ぎる。寝るのも早いので(21時就寝!)、朝方までナンダカンダと制作作業をしてた頃に比べて、純粋に1日の活動時間が短いのだ。ややもったいない気もしたけど、自腹で育休を勝ち取ったのだから仕事は全力で休ませてもらった。
結果、“物凄く貴重な時間だった”と感じている。もしも仕事ばかりして、娘の新生児の時期や、初めて笑った日、日々更新されていく愛くるしい瞬間のひとつひとつに立ち会えなかったとしたら、僕はきっと後悔しただろう。この先もずっと続いていく育児という“柱”を、心の中にゆっくり建てることができたと思っている。何より毎日可愛くて、愛くるしいぴーちゃんと過ごせたこの半年は、人生でもっとも幸せな時間だった。
まぁ育休が明けたからといって毎日ライブばかりで育児放棄するわけじゃないし、今後も少しずつ仕事をしながらゆっくり娘を育てていきたい。あったりまえだけど、子育てにはお金がいるのだ!! まだまだ休みたーい! なんて本音は捨てて、父としてしっかり働かネバ。育児は終わりのないネバーエンディングストーリーなのである!

本音を言えば、未だにこんな自分がちゃんと人間を育てられるのかは不安だ。僕自身もそのうち親へと育ってくれるだろうと、未来の自分に期待している。
* * *
出発進行2
本当は8月くらいから休むつもりだったのだが、実際は7月の頭から休んでいる。
ぴーちゃんが予定日より2週間早く産まれたということもあるのだが、その直前に、なんと僕が新型コロナウイルスに感染してしまったからである!
これには正直参った。直近のライブは全てキャンセル。制作も一旦保留。10日間のホテル療養がはじまった。たくさんの人に迷惑をかけたし、身体もしんどいし、いつ生まれても分からない臨月の妻を家に一人残してのホテル療養はなかなか不安だった。
実際は少し熱が出たくらいで、症状はそこまで酷くなかったのだけど、精神的にかなり辛かった。窓もまともに開かない、空も見えないホテルの一室に1週間以上も監禁されるのは、僕にとっては牢屋に入れられたような感覚だったのである。
お弁当は美味しいし、看護師さんやスタッフの方は優しいし、何ひとつ不自由はない。がしかし。日の光の入ってこない3畳くらいの部屋で、24時間ベッドの上で生活するのは本当に辛かった。壁に穴を掘って脱走したくなったくらいだ。
やることもなかったので、試しに髭でも伸ばしてみようと、数日ほど剃らずに放置してみた。阿部寛みたいにワイルドになってくれるかと思ったけど、実際は違った。あんまり似合わなかったし、なんか不潔感あるし、触れるたびにモジャモジャして不快だった。、10日間伸ばすつもりだったけど、『ただでさえストレスが溜まるのに俺は何やってんだ!』と怒りが込み上げてきて、10日間伸ばすつもりだったけど5日目には全部剃った。
そのときの、あのスッキリとした爽快感は、なんともいえない快感だった。
親友に「髭剃ったらほんとスッキリしたんだよ~」と報告すると、
「下の毛も剃ってみ? 俺たまにやるけど超スッキリするよ!」
と薦められた。
いやぁ……そこまではちょっと、抵抗あるなぁ……。と丁重にお断りした15分後。
やることもないので、結局僕は風呂場で丁寧に下の毛を剃った。
すっかりツルツルになった我が子を眺めていると、なんだか小学生ぶりの同級生に久々に再会したような気持ちになった。
よく“心の中の少年”とか歌詞に書いてたけど、心の中なんかじゃなくて、僕の中の少年はこんなに近くにいたのである。(これ何の話?)
親友に報告すると、
「本当に剃ったの? 冗談だったのに!!」
と大笑いされた。俺は一体何をやっているんだ。早くここから出してくれぇぇぇぇ!!!!

10日後にようやく解放され、シャバの青空を見た時は嬉しくて泣きそうになった。
そしてそのほんの数日後、娘のピーちゃんはこの世に産まれた。
ピカピカ赤ちゃんと、ツルツル父ちゃんの爆誕である。
娘もムスコもゆっくり育てていかねば。(マジで何の話?)
僕は毎日、ぴーちゃんと一緒にお風呂に入るのが1番の楽しみだ。身体を洗ってあげて、シャンプーして、抱っこして一緒に湯船に浸かっていると、ああ、あと何回こうやって一緒にお風呂に入れるんだろうと寂しくなる。あっという間に時は過ぎるのだ。
今にも「お父さんはチクチクするから嫌! お母さんと入る!」と今にも拒否されそうである。
その時は僕は迷わず脱毛しようと思っている。
痛そうで嫌なので、絶対脱毛なんてするものか! と思っていたけど、娘と1日も長くお風呂に入らせてもらえるならば。You are all I need。君のためなら、どんな痛みにも耐えてみせるよ。

先日、娘が生まれて初めて、妻が誕生日を迎えた。バースデーケーキを買って、ロウソクに火を灯して、ぴーちゃんと一緒にハッピーバースデーを歌ったら、なんだか涙が出そうになった。父と母からもらった命で、僕はまた新たな命と共に家族を築いている。うまく言葉にできないけれど、そんな命の営みが嬉しくて仕方なかったのである。ロウソクの火みたいに儚い時間だったけれど、何度でもそこに灯りが灯せるように僕も父親として頑張らねば。
このエッセイが掲載される頃にはもう僕は活動再開をしているはずだ。
ニューシングルもデジタルリリースしたし、ここから仕事と育児の新生活。出発進行! である。
アーティストとして、そしてぴーちゃんの親として、もっともっと成長していきたい。

しかし多分、子どもの成長と同じで、自分の成長も目に見えるものじゃない。がむしゃらに走り続けて、ふと振り返ったらこんなに成長してたのか! と後で気づくものなのだ。
ツルツルにしたはずのムスコもいつ間にかまた阿部寛になってるし!
一皮も二皮も剥けていきたいもんである!(これマジで何のエッセイ!?)
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歌ときどき旅、今は育休中

旅するシンガーソングライター香川裕光、このたび父になりました。ので、育休をとって、初めての子育てに七転八倒。愛あふれる家族エッセイの連載です。