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盾と矛

2023.01.17 更新 ツイート

DX時代の勝者は「ビジネスモデルそのもの」を壊すベンチャーか 既存企業の生き残る術 加藤晃/ロバート・フェルドマン

テクノロジーの発展や、「人生100年時代」の到来によって激変している私たちの働く環境。ロバート・フェルドマンさん、加藤晃さんの共著『盾と矛 2030年大失業時代に備える「学び直し」の新常識』は、DX、AI、SDGs、MOTなど、理解しているようでしていない新しい概念をはじめ、ビジネスパーソンが身につけておくべきテーマをまとめた一冊。激動の時代をサバイブするために、ぜひ目を通しておきたい本書から、内容の一部をご紹介します。

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技術革新で「顧客の期待値」も変わる

多くの記事や書籍において、「DXにおいては既存の事業オペレーションを、デジタル技術を使って単に置き換えるだけでは勝てない」と指摘されています。つまり、人間による手作業の機械化、インターネットによる販売などを導入しただけでは不十分だということです。

なぜなら、技術革新とともに、「顧客の期待値」も変化するからです。

(写真:iStock.com/Olivier Le Moal)

レンタルビデオ業界の事例を見てみましょう。以前は店舗でビデオテープの貸し出しを行っていましたが、パソコンと携帯電話(スマートフォンを含む)が普及すると、インターネットを通じた予約注文サービスを始めました。

次第にビデオテープがDVDに移行し、インターネットで注文し、DVDを自宅へ郵送するサービスが一般的になります。

さらに、ストリーミング技術の進歩、インターネット回線速度の劇的な向上と一般家庭でも使えるコストダウンが実現すると、「レンタルビデオ」業は、「映像のダウンロードサービス」へと変化したのです。

 

その業界にどっぷりつかって、業界のルールの下で成長してきた企業は、たとえわかっていても自ら変化することは難しいものです。

もし、自社のビジネスモデルを「ビデオテープあるいはDVD、つまりハードを店頭でレンタルするビジネス」と考えている企業が顧客アンケートを行ったら、どのような要望が出てくるでしょうか。少し想像してみてください。

 

おそらく、「新作のビデオを借りに行ったのにすべて貸し出し中だったので、新作ビデオの本数を増やしてほしい」「旧作のレンタル価格を下げられないか」「レンタル期間を長くしてほしい」などの意見が出てきたことでしょう。

真面目にマーケティング活動を行うリーダー企業ほど、真面目に対応してきたはずです。しかしながら、これらはすべて「既存の技術を前提とした要求」です。実は、顧客の本質的な要望は、ビデオテープやDVDというハードが欲しい(借りる)ことではありません。

自分の好みにあった映像ソフトを鑑賞すること、それも可能な限り手軽に、かつ安く、です。将来的に、顧客の要望は、自らが主人公となっているストーリーを、五感を駆使して疑似体験できる空間ということになるかもしれません。

 

すなわち、今日の顧客は新技術で何ができるかはわからないので当然要求しません。1900年当時、馬に乗っている人に聞いても「T型フォードが欲しい」と答えるはずはありません。

「イノベーションのジレンマ」とは

このように考えると、一世を風靡したクレイトン・クリステンセンの『イノベーションのジレンマ』(翔泳社、2000年)が思い出されます。クリステンセンが示した「ジレンマ」は、以下のような流れです。

(写真:iStock.com/byryo)
  • (1)優良企業ほど既存の事業環境を前提として顧客の声を聴き、絶えず持続的に製品を改良する研究開発を行います。
  • (2)しかし、時間の経過とともに顧客のニーズは、供給可能な製品の品質レベルを超えてしまいます
  • (3)その間、後発ベンチャー企業が、性能は低いが顧客のニーズを満たす製品を開発します。
  • (4)最終的には既存技術に固執する大企業は淘汰されます

 

一方、課金方式に目を転じてみましょう。貸し出す1本の映画ごとに課金するビジネスから、サブスクリプション(月額使い放題などリカーリング〔繰り返し〕モデル、以下、「サブスク」)へと進化しました。サブスクビジネスの要諦は顧客の継続率を高めること(チャーンレート〔解約率〕を低くすること)です。

そのためには、顧客の好みを分析して興味のありそうなコンテンツを推奨するなど、AIを活用したタッチポイント(顧客接点)におけるカスタマーサクセス(顧客満足度の向上)が欠かせません。

また、既存のコンテンツの配信のみならず、オリジナルコンテンツの開発(企画制作)にまで及んでいます。こういった変化をもたらすのは、新技術の可能性を理解する業界の新参者であることが多いようです。

 

新参者は、業界における強み(例えば、良い立地の店舗、独占的で強力なセールスチャネル〔流通経路〕、ブランド力、規模の経済など)を有していないので、既存のルール、常識・慣行の上ではどうあがいても勝てません。既存のルールを壊すような技術や発想で挑戦することになります。

すなわち、攻める新参者(ベンチャーなど)も、受けて立つ既存企業もビジネスモデルそのものを見直すビジネスモデル・トランスフォーメーション(変革)が必要になってくるのです。例えば、デパートもオンライン上での販売を始めないと生き残れません。

関連書籍

ロバート・フェルドマン/加藤晃『盾と矛 2030年大失業時代に備える「学び直し」の新常識』

「繰り返し」の仕事は消滅する! 新たな時代のニーズを掴め! DX/AI/SDGs/MOTをあなたの武器にする本 はじめに 大失業時代、学び続けないものは生き残れない ・2030年までに1600万人が今の職を失う 1章 人生100年時代と「一所懸命」モデルの崩壊 ・DXによって学んだことの賞味期限はどんどん短くなる 2章 AIとDXを自分の言葉で語れるようになろう ・雇用を減らすイノベーション・生み出すイノベーション 3章 DXの本質は、ビジネスモデル変革 4章 最も弱いスキルを鍛えない限り、成長はない 5章 データを正しく解釈しよう。 新型コロナと日本人 ・日本のコロナ対応、欧米と日本で評価が180度異なるのはなぜ? 6章 エネルギー革命と成長する企業の決断 ・再生可能エネルギーは企業にとって「負担」ではなく「投資」 7章 投資家が重要視する「サステナブルファイナンス」とは おわりに 自己実現への道しるべ

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テクノロジーの発展や、「人生100年時代」の到来によって激変している私たちの働く環境。ロバート・フェルドマンさん、加藤晃さんの共著『盾と矛 2030年大失業時代に備える「学び直し」の新常識』は、DX、AI、SDGs、MOTなど、理解しているようでしていない新しい概念をはじめ、ビジネスパーソンが身につけておくべきテーマをまとめた一冊。激動の時代をサバイブするために、ぜひ目を通しておきたい本書から、内容の一部をご紹介します。

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加藤晃

東京理科大学大学院経営学研究科技術経営専攻(MOT)教授。防衛大学校(国際関係論)卒業、青山学院大学で博士(経営管理)を取得。貿易商社、AIU保険会社、愛知産業大学を経て、2020年より現職。経済産業省ISO/TC322国内委員・日本代表エキスパート、ISO/TC207環境ファイナンス関連規格検討委員会委員、日本証券アナリスト協会サステナビリティ報告研究会委員。単著に『CFO視点で考えるリスクファイナンス』(保険毎日新聞社)、共著に『サステナブル経営と資本市場』(日本経済新聞出版社)、『ガバナンス革命の新たなロードマップ』(東洋経済新報社)、監訳書に『サステナブルファイナンス原論』(金融財政事情研究会)、『社会を変えるインパクト投資』(同文舘出版)。

ロバート・フェルドマン

1970年、米国からAFS交換留学生として初来日、1年間名古屋で過ごした後、イエール大学で経済学/日本研究の学士号、マサチューセッツ工科大学で経済学博士号を取得。1983~89年、国際通貨基金(IMF)でエコノミスト、1990~97年、ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社で首席エコノミストを務める。
1998年、モルガン・スタンレー証券株式会社(現:モルガン・スタンレーMUFG証券株式会社)に入社、チーフエコノミストとして2017年まで勤め、その後シニアアドバイザー。
2000~20年、「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京系列)にコメンテーターとして出演。書籍出版、雑誌寄稿、講演などの対外活動にも積極的。2017年より東京理科大学大学院経営学研究科技術経営専攻(MOT)にて教授を兼業。

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