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盾と矛

2021.10.28 公開 ポスト

日本の再生可能エネルギー市場は本当に伸びているのか加藤晃/ロバート・フェルドマン

加速するDX時代においては、過去に学んだことの賞味期限はどんどん短くなっていきます。

DX、AI、SDGs、MOTなど、わかっているようで理解できていない言葉の数々、さらにデータの正しい捉え方やエネルギー革命など、現代を生きるビジネスパーソンとして必要なテーマをまとめた一冊『盾と矛 2030年大失業時代に備える「学び直し」の新常識』の刊行を記念して、内容を一部抜粋してお届けします。

11月5日には、丸善ジュンク堂書店オンラインイベントも開催いたします。学び直しのための情報満載です。ぜひご参加下さい。

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(写真:iStock.com/CHIARI_VFX)

ソーラー・風力など再生可能エネルギーのコストは安くなっているのか

再生可能エネルギー(主にソーラー、風力)のコストは従来のエネルギー(化石、原子力)に比べ、安くなったでしょうか。

発電に関しては、資産運用会社であるラザード社が毎年発表する調査が参考になります。ラザード社は2009年以降、世界中の新規の発電施設の総原価(資本コスト+ランニングコスト)を1キロワット時(kWh)に換算して比較しています(図表25)。石炭の発電コストは、2009年は1kWh当たり11・1セントでした(これは、外部不経済である公害が入っていない計算です)。2020年になっても、ほぼ同じです。原発はコストが上がってきました。一方、風力は13・5セントから4・0セントへ、PVソーラー(太陽光パネル発電)は35・9セントから3・7セントになりました。すなわち、再生可能エネルギーが化石エネルギー、原子力発電より安くなっているのです。

一方、日本におけるPVソーラーの発電コストは海外に比べて相変わらず高いままです。

経産省の2020年11月の資料によれば、2020年上半期の世界のPVソーラーの発電コスト5・5円に比べて、日本は13・2円です。これだけの差異が出るのはなぜなのでしょうか。

経産省の説明によると、一つは土地造成費用です。傾斜が厳しいところでソーラーパネルを置くには費用がかかるため、平地の少ない日本では高コストになりがちなのです。

次に、中小建設会社が参入しにくい状況となっており、高いマージンを取る大手ゼネコンが主になっていることです。

さらに、ソーラーパネルを固定する台の設置基準、自然災害、電気主任技術者の不足も高コストの要因です。

しかしながら、この説明には、役所文書によくある「なんでできないか」の本当のところが見え隠れしています。日本国の技術力と創意工夫意識を刺激すれば、克服できるはずなのです。やる気の問題です。

台風にも負けない浮体式洋上風力発電の開発

海外と日本のコスト差を縮小する方法は、いくつか考えられます。日本の国土面積の約1割を占める所有者不明の土地を、発電に転用することです。ただし、後日、真の所有者が判明した場合、争いとなるリスクがありますが、政府主導で法律を作り、眠っている土地を活用する方法はあるでしょう。

もう一つは農地の転用ルールを緩くすることです。最近の研究では、農地の上にソーラー発電施設を設置すれば、発電量も収穫量も増加する可能性が確認されています。つまり、外部不経済ではなく、「プラスの外部経済」を達成できる規制改革を行うのです。そのためには、農林水産省と、地方自治体を担当する総務省の協力が必要でしょう。

実は、ソーラーシェアリング協会がこのような農業を進めようとしています。再生可能エネルギーと地方再生を同時に実現する方法です。協会によると、実現するのに一番ハードルになっているのは、各地の農業委員会の手続きだそうです。手続きを合理化すれば、一石二鳥になります。

経産省では、2030年にはソーラー発電コストは5・8円まで低下すると見込んでいます。海外との差は依然として残りますが、十分に化石燃料による発電に勝てる水準です。世界各国の科学者がPV技術の研究を進めているので、さらに早く、安くなる可能性もあります。

PVソーラーだけではありません。風力も安くなっています。陸上風力だけでなく、洋上風力もあります。日本の場合、海が急に深くなるので海底に直接設置することは難しいのですが、海上に浮かべた構造物を利用する「浮体式洋上風力発電」が有望です。IEA(国際エネルギー機関)によれば、日本の洋上風力の潜在容量は、今日本が利用している電力のなんと9倍(!)もあるそうです。

日本の企業がすでに、日本ほど海が荒れず、建設コストが日本ほど高くない台湾、米国、欧州の浮体式洋上風力発電プロジェクトに参加し、経験を重ねています。国内でも、五島列島沖の浮体式洋上風力発電の施設で実際に試しています。

なお、これまで風力発電の課題とされてきた台風に対しては、「クラスT」と呼ばれる台風に耐えうる規格の風車が開発されてきています。再生可能エネルギーにおいて、第一の教訓である「安いものが勝つ」という条件は、日本人の多くが思っている以上に達成されつつあるのです。

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続きは書籍『盾と矛 2030年大失業時代に備える「学び直し」の新常識』でお楽しみ下さい。

関連書籍

ロバート・フェルドマン/加藤晃『盾と矛 2030年大失業時代に備える「学び直し」の新常識』

「繰り返し」の仕事は消滅する! 新たな時代のニーズを掴め! DX/AI/SDGs/MOTをあなたの武器にする本 はじめに 大失業時代、学び続けないものは生き残れない ・2030年までに1600万人が今の職を失う 1章 人生100年時代と「一所懸命」モデルの崩壊 ・DXによって学んだことの賞味期限はどんどん短くなる 2章 AIとDXを自分の言葉で語れるようになろう ・雇用を減らすイノベーション・生み出すイノベーション 3章 DXの本質は、ビジネスモデル変革 4章 最も弱いスキルを鍛えない限り、成長はない 5章 データを正しく解釈しよう。 新型コロナと日本人 ・日本のコロナ対応、欧米と日本で評価が180度異なるのはなぜ? 6章 エネルギー革命と成長する企業の決断 ・再生可能エネルギーは企業にとって「負担」ではなく「投資」 7章 投資家が重要視する「サステナブルファイナンス」とは おわりに 自己実現への道しるべ

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盾と矛

テクノロジーの発展や、「人生100年時代」の到来によって激変している私たちの働く環境。ロバート・フェルドマンさん、加藤晃さんの共著『盾と矛 2030年大失業時代に備える「学び直し」の新常識』は、DX、AI、SDGs、MOTなど、理解しているようでしていない新しい概念をはじめ、ビジネスパーソンが身につけておくべきテーマをまとめた一冊。激動の時代をサバイブするために、ぜひ目を通しておきたい本書から、内容の一部をご紹介します。

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加藤晃

東京理科大学大学院経営学研究科技術経営専攻(MOT)教授。防衛大学校(国際関係論)卒業、青山学院大学で博士(経営管理)を取得。貿易商社、AIU保険会社、愛知産業大学を経て、2020年より現職。経済産業省ISO/TC322国内委員・日本代表エキスパート、ISO/TC207環境ファイナンス関連規格検討委員会委員、日本証券アナリスト協会サステナビリティ報告研究会委員。単著に『CFO視点で考えるリスクファイナンス』(保険毎日新聞社)、共著に『サステナブル経営と資本市場』(日本経済新聞出版社)、『ガバナンス革命の新たなロードマップ』(東洋経済新報社)、監訳書に『サステナブルファイナンス原論』(金融財政事情研究会)、『社会を変えるインパクト投資』(同文舘出版)。

ロバート・フェルドマン

1970年、米国からAFS交換留学生として初来日、1年間名古屋で過ごした後、イエール大学で経済学/日本研究の学士号、マサチューセッツ工科大学で経済学博士号を取得。1983~89年、国際通貨基金(IMF)でエコノミスト、1990~97年、ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社で首席エコノミストを務める。
1998年、モルガン・スタンレー証券株式会社(現:モルガン・スタンレーMUFG証券株式会社)に入社、チーフエコノミストとして2017年まで勤め、その後シニアアドバイザー。
2000~20年、「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京系列)にコメンテーターとして出演。書籍出版、雑誌寄稿、講演などの対外活動にも積極的。2017年より東京理科大学大学院経営学研究科技術経営専攻(MOT)にて教授を兼業。

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