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キライだ。大キライだ。

 

あの忌々しさを煮詰めた獰猛な目つきが。あの禍々しい黄色と黒色を携えたドス黒い身体が。あの腹の底から嫌悪が噴き出す重低音の羽音が。

 

今回のソロキャンプは、まさに我が天敵にしてやられた。

 

ええ、それはもうコテンパンに。

 

今回のキャンプ場は、藤助小屋キャンプ場。澄んだ川のほとりにある新潟県五泉市の野営地です。

川辺でのソロキャンはお初で、ワクワクが溢れてとまりません。高まる期待と共に目的地へと、林道をぐんぐん進んでいきます。山奥に潜り込んでいく冒険感は、やはりたまらないですね。

 

そして、心待ちにしていたキャンプ場に到着。

そこは異世界でした。川底まで透きとおった渓流がお出迎え。穏やかな流れが、おいでやすと手招く舞妓さんのごとく優しく歓迎してくれています。

くわえて、樹齢二千年かよとツッコミたくなるほど天高く伸びた木々に囲まれたキャンプ場は、どこか神秘的な空気が漂っています。

 

こじんまりとした隠れ家的キャンプ場で、ソロキャンにはもってこい。これまででNo.1のキャンプ場じゃないかと我がテンションは、縄文時代から生えているであろう木々より高くぶちあがります。

撫でるように優しく出迎えてくれた美しい渓流。

とにかく、どこに設営するか決めなきゃです。

川の真横に張りたいのですが、岩だらけで厳しそう。けれど、川から少し離れた巨木の前も良さそうであります。

そんなこんなで、今にもマンモスが飛び出してきそうな林の前を、ホーム地に決めます。

 

巨木たちの前に車を止め、外へ降り立ち、まずは深呼吸。下界とはぜんぜん空気が違う。うまいっ。これは最高のソロキャンになりそうだ。ついに何事もなく満面の笑みで帰路につけるな、と安堵した瞬間でした。

今にもマンモスが現れそうな太古感じる森。

ヴゥゥーン、ヴゥゥーン、ヴゥゥーン。

 

耳元で悪魔に死の呪文を囁かれたかのような嫌悪感が体中を駆け巡ります。身の毛もよだつという表現は、コイツのために生まれたんじゃないかと思うほどの耳障りな音に心臓を握りつぶされます。

 

そう、オオスズメバチ。

 

巨木は彼らのナワバリだったのか、スマホほどの大きさがある二匹の成熟したオオスズメバチが襲ってきたのです。

 

逃げても逃げても、どこまでも追ってくる。刺激しないように立ち止まっていても、猛攻をしかけてくる。

もう完全にロックオンされています。いつ、ぶすりと来られてもおかしくない状況です。怖い、とにかく怖い。

 

このスズメバチたちに囲まれた状況で、一番安全な場所は車の中。

しかし、自らの意思では動けないオンボロの愛車は、蜂たちの格好の餌食に。これは非常にヤバい。文章を綴る身として、あまり使いたくない表現なのですが、とにかくヤバい。ヤバいのです。

 

蜂たちの興奮が収まる気配は一向になく、まずどうにかして車に乗り込むしか助かる道はなさそうです。

覚悟を決め、小学校の一大イベントクラス対抗大縄跳び大会よろしく車に飛び込むタイミングを伺います。

 

意を決して車へと駆け込みます。素早く扉を開け閉めし、なんとかセーフ。

車内には、ごつんごつんと鈍い音が響き渡ります。車に体当たりをするオオスズメバチ。恐ろしすぎます。

 

彼らをさらに刺激してはならないとエンジンを切った真夏の車内はサウナ状態。軽く50度は超えてます。天敵から逃げまどい息が上がった状態でのサウナダイブは、毎週サウナに通うサウナーのぼくでも厳しすぎる。サウナ以上に汗が吹きだし、約20分。もう限界がそこまで来ています。

 

しかし、待てどもオオスズメバチの襲撃はとどまることを知らず。

さすがにこのままでは、熱中症になって死ぬか否かの瀬戸際。それにたとえ、彼らが巣に帰ったとて、またいつやってくるか分かりません。そんな常にビクつきながらのキャンプなんて楽しくもありません。

 

カーサウナで限界を超えてしまう前に、エンジンをふかし戦線離脱を決意。

ああ、こんな気持ちのいい神秘的な場所でキャンプがしたかったな。悔しすぎます。

オオスズメバチの餌食になる我が愛車。

そして、命からがら以前泊まったことのある無料キャンプ場へと逃げ込みました。絶体絶命の危機から免れ一息。ようやく出れた車外。それはもう、ととのったなんの。

温からの冷、かつ恐怖からの安堵で、整い散らかしました。これはクセになりそう……。まあ、もう二度と体験したくありませんが。

一体いつになったら、ゆったりと満足なソロキャンができるのでしょうか。

最高のソロキャンを目指す旅路は、まだまだ終わりそうにありません。

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大石祐助

2020年、JICA海外協力隊(青年海外協力隊)としてルワンダに派遣される。マーケティング隊員として地方の中小企業や起業家を支援。帰国後、日本のアウトドアブランド入社。

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