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イノベーション道場

2022.11.14 更新 ツイート

マーケティングは「広告」ではなく「経営」そのもの 日本でイノベーションが起こらない決定的理由 高岡浩三

元ネスレ日本代表をつとめ、現在はビジネスプロデューサー・マーケターとして多くの企業を成長に導いている高岡浩三さん。近著『イノベーション道場』は、「ネスカフェアンバサダー」「キットカット受験生応援キャンペーン」など、数々の革新的サービスを世に送り出してきた高岡さんの経験から練り上げられた、「イノベーションを生み出す手法」を惜しみなく公開しています。現状打破を考えるビジネスパーソンなら必読の本書より、内容を一部ご紹介します。

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イノベーションの「目利き」がいない

最大の要因は、現在の経営者がイノベーションを成功させたことがない点です。したがって、イノベーションの実績を評価されてトップに上り詰めたわけでもありません。

彼らは、イノベーションを成功させるための方法もわからなければ、どれがイノベーションの芽であるかもわかりません。つまり、イノベーションの目利きではないのです。現在の日本企業のトップに立つ経営者層は、イノベーションを生み出せるリーダーではなく、事務管理能力の高いマネジャーです。

(写真:iStock.com/ponsulak)

それは戦後から続く日本の傾向です。プロフェッショナルの経営者として名前が挙がってくるのは、松下幸之助さん、盛田昭夫さん、本田宗一郎さんなど、ほとんどがオーナー企業経営者で創業者です。彼らはイノベーションを成し遂げてその地位を築きました。

いわゆる「サラリーマン社長」で有名な人は、有名な企業の社長だから有名なだけで、イノベーションを起こし、日本社会に何かを残した人はほとんどいません。

現役の経営者で思い浮かぶのも、京セラの稲森和夫さん、ソフトバンクの孫正義さん、ユニクロの柳井正さん、日本電産の永守重信さん、ニトリの似鳥昭雄さんなど、みなオーナー経営者です。日本全体が変わらない限り、この状態を脱することはできません。

 

2003年、経営学者のヘンリー・チェスブロウが「オープンイノベーション」という概念を提唱しました。それから、日本でもオープンイノベーションが流行しています。今や様々な企業や組織にオープンイノベーションの拠点ができていますが、そこから社会を変えるようなイノベーションはまだ生まれていません。

実際は、どこに投資すればいいかすらわかっていない状況です。なぜなら、投資決定者である経営者がイノベーションを生み出したことがないため、イノベーションの本質をわかっていないからです。

少なくとも、本書の第1章と第2章で申し上げたこと、つまり顧客の諦めている問題を解決するものがイノベーションであり、顧客の認識している問題を解決するものがリノベーションであると理解しておかなければなりません。それを知るために、新しい現実を見極められなければなりません。これは、イノベーションのための必須事項です。

イノベーションの意味さえわかっていないのに、イノベーションを起こすなどと口にすること自体、私には不思議に思えてなりません。

 

いったいどうやってイノベーションを生み出すのか。

オープンイノベーションを実践する場所さえつくれば、イノベーションが生まれると思っているのか。

 

残念ながら、現在の日本企業の多くは、イノベーションの定義をはっきりと理解しないまま、ただ闇雲にイノベーションを起こすんだと騒いでいる。そんな印象がどうしてもぬぐえません。

イノベーションを生み出そうとするスタートアップの起業家にとっても、企業に属しながらイノベーションを起こそうと奮闘するビジネスパーソンにとっても、資金の出し手となり、決裁権限者となる層にイノベーションの目利きがいないことで、イノベーションの芽が潰されているのではないかと心配になってしまいます。

マーケティングの知識が不足している

残念ながら、マーケティングの知識がない点もイノベーションに近づけない原因となっています。マーケティングの知識がないのはつまり、ビジネスの知識がないのと同義です。

(写真:iStock.com/Jirapong Manustrong)

日本企業ではマーケティングを広告、宣伝と捉えています。その点からして、グローバル企業との間にビジネスの優劣が生じてしまっているのです。

日本株式会社モデルにおいては、製品をつくる人と売る人がいればよかった。したがって多くの日本のメーカーでは、経営者のほとんどは製造部門、もしくは営業部門の出身者でした。

 

マーケティングは経営そのものと捉えられるべきです。すなわち、マーケティングはマーケティング部門だけのものではなく、製造の現場にも経理にも、サプライチェーンにも人事にも必要なものなのです。

さまざまな人の啓蒙により、知識として理解している人は増えています。ところが、組織としてそれを実践している企業が、日本にはまだ少ないのが現状です。

マーケティングのノウハウは、単にイノベーションを起こすだけではなく、それを大きく成長させていくのに欠かせない経営のノウハウです。これが日本では長らく欠落してきたことが、イノベーションが進んでこなかったひとつの理由だと言えます。

関連書籍

高岡浩三『イノベーション道場 極限まで思考し、人を巻き込む極意』

考えよ、行動せよ! 新しい価値を生むのはあなただ! 本田圭佑氏(サッカー選手、実業家) 挑戦を後押しする、最強のメソッド。 入山章栄氏(早大大学院教授) 最高に実践的な一冊! 世界標準の経験と理論が詰まっている。 世界を驚かせるようなイノベーションが生まれなくなって久しい昨今、高岡浩三氏はネスレ日本社長として、「ネスカフェアンバサダー」や「キットカット受験生応援キャンペーン」など革新的なサービスを世の中に展開した。その実績は、マーケティングの権威、フィリップ・コトラー氏らからジャパンミラクルと称賛された。本書では、著者が練り上げ、実践してきた、革新を生み出す手法を惜しみなく公開し、日本でイノベーションを生み出す術を伝授する。 イノベーションは何も技術革新のみを指すものではない。誰でもどんな職種でもイノベーションを起こすことができる、というコンセプトから、イノベーションを再定義し、実際の思考法(NRPS法)を紹介する。NRPS法とは、社会で起きている問題、周囲で起きている出来事に目を配り、「現実がどう変化しているか」を観察することで認識できる、いま私たちが置かれている現実を認識し、問題を炙り出し、その解決法を生み出す手法のこと。 この思考法を獲得し、徹底的に考え抜けば、誰でもイノベーションを起こすことができる、衝撃の1冊! はじめに イノベーションを諦めていないか 第1章 イノベーションを再定義する 第2章 イノベーションを生み出すNRPS法 第3章 なぜ日本でイノベーションが起こらないのか 第4章 イノベーションの目覚めは「外圧」だった 第5章 イノベーションの具体例をNRPS法で読み解く 第6章 イノベーションは「考え抜く」ことから生まれる おわりに 上司に期待するな。極限まで自分ひとりで考え抜け

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元ネスレ日本代表をつとめ、現在はビジネスプロデューサー・マーケターとして多くの企業を成長に導いている高岡浩三さん。近著『イノベーション道場』は、「ネスカフェアンバサダー」「キットカット受験生応援キャンペーン」など、数々の革新的サービスを世に送り出してきた高岡さんの経験から練り上げられた、「イノベーションを生み出す手法」を惜しみなく公開しています。現状打破を考えるビジネスパーソンなら必読の本書より、内容を一部ご紹介します。

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高岡浩三 元ネスレ日本社長

ケイアンドカンパニー代表取締役、元ネスレ日本代表取締役社長兼CEO。1983年、神戸大学経営学部卒。同年ネスレ日本入社。各種ブランドマネジャー等を経て、「キットカット」受験生応援キャンペーンや、新しい「ネスカフェ」のビジネスモデルを提案・構築し、利益率の低い日本の食品業界において、新しいビジネスモデルを追求しながら超高収益企業の土台をつくる。2010~2020年までネスレ日本CEO。2020年4月より現職。
現在は、DXを通じたイノベーション創出のビジネスプロデューサーとして「高岡イノベーション道場」を主催し、自ら後進の育成に取り組む。
マーケティングの世界的権威のフィリップ・コトラー氏が日本人で最高のマーケターと絶賛する。
著書に『ゲームのルールを変えろ――ネスレ日本トップが明かす新・日本的経営』(ダイヤモンド社)、『逆算力』(日経BP社)、コトラー氏との共著で『Marketing in the 21st century』他多数。

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