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なんで僕に聞くんだろう。

2022.07.23 公開 ツイート

「手間をかけてまで批難中傷してくるわけです、きっと理由があります」 幡野広志

cakesの人気連載が書籍化されたなんで僕に聞くんだろう。』。さらに2つの新たな人生相談も加えて、このたび文庫化!コンパクトになり、ますます手に取りやすくなりました。

大切な人にも読んでほしい、”一生モノ”の人生相談本。今回の文庫化にあたり、本文一部公開です。

*   *   *

批判と批難はまったく違う。批難の底にあるもの

Q

いつも幡野さんの発信を興味深く見させてもらっています。

私はある障害を持っていて障害の発信をしているのですが、何年やっても批判には慣れず、障害に対する理解のない批判を目にする度にイライラしてしまいます。

幡野さんもいろんな勧誘や批判がおありだとお聞きしましたが、ストレスが溜まることはありませんか? 幡野さんが批判に対してどのように受け止めているのかずっと気になっていました。

ストレスはお体に悪いのではないかなというこちらの勝手な心配もありまして……。

イライラしない方法、もしくはストレスやイライラの解消法がありましたら、ぜひお聞きしてみたくて質問させていただきました。もし答えていただけたら嬉しいです。

これからも幡野さんの発信を楽しみにしております。(匿名)

A

大切なことなので最初にいっておきたいのですが、批判と批難は似ているようでまったく違います

ぼくは写真家という仕事がら作品にたいしてや、かつては猟師でもあったので、狩猟という行為に対して、批判も批難もうけることがたくさんあって、いわば批判と批難に慣れています。

病気になってからもなにかと批判と批難をされることがすくなくないのですが、たいしたことがないというのが正直な感想です。

批判と批難は違うと書きましたが、ぼくは情報発信や作品の発表に関して、「批判」は精度や質を高める養分だとおもっていますので、批判に目を通して、それらに反論できるように言葉をストックしています。質の高い批判にはうならされますし、的はずれなものにはため息がでます。

「批判」というのはその対象物について知らないからこそ起きるもので、いい換えると“疑問”のようなものです。疑問や質問にたいして答えられるようにしておいて損はないとおもいますし、批判に反論することは、情報発信においてメリットがあるとぼくはおもいます。

ぼくの経験上ですが、批判に反論しても、相手が納得することはほとんどありません。それどころか、反論されることを想定していなかったのか、ふりあげたこぶしをおろすために、論点をすり替えてくることもあります。

ネット上だろうがお寿司屋さんのカウンター席だろうが、批判してきた相手を納得させたり、理解してもらったり誤解を解いたりするということを、ぼくはあきらめています。

じゃあなんで反論するかというと、ネットは不特定多数の第三者が見ているし、カウンター席では大将が見ているので、その人たちに理解してもらうために反論しています。その結果として、伝えたい情報がおおくの人に伝わると感じています。

問題は、「批難」です。中傷もこれに含まれます。おそらく相談者さんが頭を悩ませているのはこちらだとおもいます。批判よりも圧倒的に多いのが批難や中傷だからです。

批難にも、質の高い……というよりも巧妙なものと、的はずれ……というよりも下手くそなものがあります。どちらかといえば、批難は上手い下手の世界のようにぼくは感じています。

巧妙で上手い批難というのは“本音”をうまく隠して、正当な批判のように見せかけてバッシングしたり相手を制限しようとする行為です。下手くそな批難というのは“本音”がまったく隠せていないものです。

隠された本音がなにかというと“妬ねたみ”です。

(写真:幡野広志)

ひとことで妬みといってもたくさん種類があります。

お金のことであったり、仕事のことであったり、自分が我慢させられたことだったり、知名度であったり、ライフスタイルであったり、人間関係や家族関係など様々です。

批難してくる人それぞれにしあわせの価値観があり、それが満たされていないから妬むわけです。ひらたくいえば、批難や中傷をしてくる人は、不満を抱えている人です。

たとえば、にわかには信じられないかもしれませんが、ぼくは、親子関係が悪い人や、子どもがほしくてもなかなかできないという人から批難や中傷をされることがあります。

ぼくと息子の関係性などを妬まれてしまった結果ですが、これってもう仕方ないじゃないですか。反論する気もおきないので、SNSならブロックをしています。

そういったかたがたに配慮して、「遠慮する」という選択肢を選ぶつもりもありません。みんなだって、病気のぼくに配慮していたら、健康的な投稿なんてできなくなりますよ。

あたりまえの話ですが、みんながみんな批難や中傷をしてくるわけじゃないですからね。“うらやましい”が“ズルい”や“ムカつく”に成長してしまった、ごく一部の人たちです。

ぼくも誰かにたいしてうらやましいとおもうことはたくさんあります。先日もバイクで 二人乗りをしている親子をみて、うらやましいとおもいました。

どんな会話をしているのだろう、たのしいだろうなぁーって思うだけですが、これが妬みになり感情が抑えられなくなると、「バイクの二人乗りは危ないですよ、子どもをのせるなんて信じられない」というクソみたいなリプライやコメントをして、まぶしくて直視できない行為をなんとかやめさせようとするわけです。

ぼくは批難や中傷をしてきた相手の言葉ではなく、相手の真意を探ります。手間をかけてまで批難中傷してくるわけです、きっと理由があります。これがわかると、批難と中傷の言葉が一気に弱まり、まったくといっていいほど気にならなくなります。

土のついた、かたく食べられない皮をめくり、やわらかいタケノコにたどりつくような作業に似ています。タケノコの皮をめくったことがないから、どんな作業かよく知らないけど、きっと似ています。

ぼくはおもっていることをいい返せなくて、悔しいおもいをした経験が何度もあります。病気になってまでそんなおもいをしたくないし、ましてや死ぬまえにそんなおもいをしなくてもいいじゃないですか。

批判も批難も中傷もすべて言葉です。言葉を武器にして、相手は遠慮なく襲ってくるんです。言葉を盾たてにして、身を守るしかないですよね。

関連書籍

幡野広志『だいたい人間関係で悩まされる #なんで僕に聞くんだろう。』

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なんで僕に聞くんだろう。

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――恋の悩み、病気の悩み、人生の悩み。どんな悩みを抱える人でも、きっと背中を押してもらえる。

人生相談を通して「幡野さん」から届く言葉は、今を生きるすべての人に刺さる”いのちのメッセージ”だ。

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幡野広志 写真家

1983年、東京生まれ。写真家。2004年、日本写真芸術専門学校をあっさり中退。2010年から広告写真家に師事。2011年、独立し結婚する。2016年に長男が誕生。2017年、多発性骨髄腫を発病し、現在に至る。近年では、ワークショップ「いい写真は誰でも撮れる」、ラジオ「写真家のひとりごと。」(stand.fm)など、写真についての誤解を解き、写真のハードルを下げるための活動も精力的に実施している。著書に『ぼくが子どものころ、ほしかった親になる。』(PHP研究所)、『写真集』(ほぼ日)、『ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。』(ポプラ社)、『なんで僕に聞くんだろう』『他人の悩みはひとごと、自分の悩みはおおごと。』『だいたい人間関係で悩まされる』(以上、幻冬舎)、『ラブレター』(ネコノス)がある。

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