1. Home
  2. 暮らし術
  3. ゴルフは名言でうまくなる
  4. 「サンドウェッジは一種の爆発装置だ。私は...

ゴルフは名言でうまくなる

2021.07.04 更新 ツイート

第183回

「サンドウェッジは一種の爆発装置だ。私はこれが発明されなかったことを望む」――バーナード・ダーウィン 岡上貞夫

バンカーはもはやハザードではない?

バーナード・ダーウィンは、進化論で有名な学者チャールズ・ダーウィンの孫にあたる。1895年にケンブリッジ大学を卒業し、一度は弁護士となったが、ゴルフに熱中して1902年にはイングランド代表としてスコットランドとの対抗戦に出場したほどの名手でもあった。

以後、大きな大会での優勝こそないが、多くの戦績を残し、1923年には第1回ウォーカーカップのイギリスチーム・キャプテンを務めた。選手としての戦績もすぐれているが、ダーウィンを有名にしたのは、ゴルフ評論家やゴルフ・エッセイストとしての魅力的な文章だった。

 

1907年、たまたまロンドンの新聞イヴニング・スタンダードにゴルフエッセイを連載したのが大好評となる。これがきっかけでタイムズにゴルフ記者として誘いを受け、なんと弁護士をやめてしまった。そして退社するまでの45年間、毎週エッセイを書き続けたという。

この間に出版されたダーウィンのエッセイ集は29冊にもおよび、英米では彼の著作を「最も楽しいゴルフの炉辺書(ろへんしょ)」と呼び、読者を飽きさせなかった。

だが、日本では彼の本が翻訳されておらず、あまり知られていないのは残念だ。ゴルフの歴史が欧米に比べると浅い日本では、ベン・ホーガンやジャック・ニクラスの技術書なら飛びついて読まれたが、ゴルフエッセイやゴルフ史の本はあまり売れそうになかったのだろう。

日本人プロがメジャー大会で優勝するようになった昨今、このようなゴルフ本も邦訳され、私たちにも読めるようになってほしいものである。

R&Aの規則委員長も務めたダーウィンは、アメリカ商業主義がゴルフの本質をくずしてしまうことをひどく憂慮していた。表題の言葉も、そのような警告を含んだエッセイに書かれており、「いまはアメリカ人となったトミー・アーマーが、私と同意見なのを知って欣快(きんかい)にたえない」と続けている。

サンドウェッジがジーン・サラゼンによって考案されるまで、バンカー脱出用クラブの開発には試行錯誤があった。それほど当時のバンカーはハザードとして脅威の存在だったのだ。

なかでも、フェース面が凹状にへこんだバンカー用ウェッジは抜群の効果を発揮して、ボビー・ジョーンズやウォルター・ヘーゲンも飛びついて愛用したほどだった。しかし、あまりにバンカー・ショットが簡単になりすぎて、ゴルフの本質から外れるということで、ルール違反クラブとなって姿を消した。

その後、サラゼンが飛行機の翼のフラップにヒントを得て、砂地からヘッドが抜けやすいようにとソールにバウンスをつけることを考案したのが現在のサンドウェッジの原型だ。

R&Aもフェース面に手を加えることは違反にしたが、ソールの改良には文句も言えず、ルール適合クラブとして現在に至っている。

近年ではスピンがよくかかるフェース面の溝の特定の形状についてルール違反となる改正はあった。R&Aはフェース面に関しては、相変わらず厳しい目を向けているようだ。ただ、この改正はバンカー・ショットに関してというよりも、アプローチ・ショットにサンドウェッジを多用する近年のプロゴルフツアー事情によることのほうが強いようだ。

バンカー・ショットの難易度は時代によって変わる

さて、バンカー・ショットがやさしくなりすぎては、ゴルフ本来の魅力を害してしまうというのが表題の言葉の警句である。実際のところ、きちんとならされたライのいいバンカーからならば、ほとんどのプロがピンをデッドに寄せてくる。

かつてハリー・バードンが出すだけで満足せよとまで言ったほど脅威のハザードだったバンカーは、いまのプロにとってはそれほど難しくなくなってしまったと言えるだろう。「バンカーもグリーンのうち」と言うプロがいるほどだ。

そこで、イギリス人のゴルフの本質に対するこだわりからだろうか、全英オープンの開催コースではバンカーならしのレーキに工夫を加えて、バンカー・ショットを難しくする試みも行われているようだ。

このレーキは、歯の1本1本をやや太くし、間隔も少し大きくしている。これでピンに対して垂直方向へ軽い力でならすと、砂に波状の跡ができる。つまり、枯山水の庭園のように、美しい水の流れのような波状の線が描かれることとなる。

見た目には美しいが、これがバンカー・ショットの難易度をかなり上げるのである。ボールは低いところへ転がり込みやすいので、波状に引かれた凸凹の凹のほうに止まりやすい。しかも波状の線はピンと垂直方向に引かれているから、ボールの前と後ろは砂が凸に盛り上がっている。目玉に近い状況になるのだ。

このライからでは、プロといえども寄せるのは難しくなる。日本でもセントアンドリュースで使用されているレーキを取り寄せ、2016年の日本プロでこのならし方が試験的に導入された。

結果は狙い通り(?)、バンカーに入ると1打のペナルティと考えざるを得なくなった。すると「ピンを狙って、バンカーでもいいや」という攻め方ができなくなる。

選手たちはバンカーを徹底して避ける戦略に転換せざるを得なくなり、少ないチャンスを生かしてスコアを伸ばすしかなくなったのである。日本人が海外の試合で活躍できなかったのは、こういう戦略でゴルフをし慣れていなかったからなのかもしれない。

プロの試合でのこのような取り組みが、最近のメジャー大会での日本人プロの活躍につながってきているのかもしれない。そうであれば、どんどん取り入れていってほしいと思う。テレビ中継ではそういうところにも注目すると、また面白い見方ができるかもしれない。

バンカーならしはゴルファーのマナーと責任だ

しかし、一般ゴルファーにとってバンカーは、たとえきれいにならされていても、相変わらず厄介で大たたきの元凶となる。

「バンカーとウォーター・ハザードとの違いは、ペナルティが執行猶予つきか、なしかの違いだ」と聞いたことがあるが、言い得て妙だ。池に入るとやり直しがきかず、その場で1打罰の刑が確定するが、バンカーはそこからリカバリー(更生)する可能性が残っているのだ。

だから、バンカーはきれいにならしてから出るのが、いまも変わらないマナーなのである。誰かがバンカーで何発もたたいたりするとコースも渋滞してしまうから、Play Fastのためにも、自分が打って乱れたバンカーはきれいにならしてから出るべきだ。

プロの場合は難易度を上げるようにバンカーをならすかもしれないが、一般ゴルファーはできるだけ平らにならしていくのが、あとから来るプレーヤーのためのエチケットだ。

昨今はコロナ禍により、不特定の人が触れるバンカーレーキを置かず、昔のように足やクラブでならすことをすすめているゴルフ場も出てきた。このため、とくにセルフプレーのコースでは、バンカー内が荒れていることも多くなった。

足やクラブでは、きれいな平面にならすことは困難だ。そういうコースでバンカーに入れてしまってライが悪かったとしても嘆いたりせず、「これがゴルフ本来のバンカーだ」と思って、やり過ごしたいものだ。

ローカルルールで「ペナルティなしでリプレース可」とされている場合もあるので、それを利用してもいいし、騎士道精神であるがままに打ってももちろんいい。私はむしろ後者のほうをおすすめしたい。悪いライからのバンカー・ショットも、経験しておいたほうが上達の糧になるはずだ。

レーキが置かれている場合、バンカーはやはりきれいにならしておきたい。

まず、レーキを持って低い淵のところから入る。これは、高いアゴ付近の砂をそぎ落としてしまわないようにするためで、アゴ付近までしっかり砂があれば、アゴの中に潜り込むなどして、ひどいライに止まることも少なくなるからだ。

レーキはショットの邪魔や助けにならない近くにそっと置けば、砂のテストとはみなされない。ショットが済んだら、歯のほうで周囲と高さが均等になるようにならし、ひっくり返して平らなほうで跡が残らないようにならす。そのまま入ってきた低い淵のほうへ後ずさりしながら、足跡をならしつつバンカーから出る。

このように、レーキの表裏を使い分けて平坦に仕上げておけば、後続の組が無駄に大たたきしないで済むだろう。バンカーならしで達人になるぐらいの気持ちでいることも、ゴルファーとしての責任なのである。

【最新刊】『90を切るゴルフの名言33』

伝説のアマチュアゴルファー・中部銀次郎が「心が8割、技術は2割」と言ったように、ゴルフでは技術以外の要素がスコアを大きく左右する。そこで頼りになるのが、プレーに対する考え方のヒントが詰まった名選手たちの言葉だ。40年以上シングルハンディを維持する著者が、選りすぐりの名言と知られざるエピソード、独自の練習法などを紹介。「カップに打つのではない。カップの1ヤード先に打つのだ」(サンディ・ハード)、「バンカーでは決して欲張ってはいけない。ボールを出すだけで満足せよ」(ハリー・バードン)など、読むだけでスコアがみるみる伸びる!

 

参考資料:
摂津茂和『不滅のゴルフ名言集(3)仲間から一目おかれるゴルファーになる』ベースボール・マガシン社新書、2009年

渡辺宏之「バンカー本来のあり方」スポともGC通信、2016年7月10日 https://gc.supotomo.com/archives/13828/

関連書籍

岡上貞夫『ゴルフは名言でうまくなる』

「プレー前夜に読む過去の名手の福音は、私にとって心のレッスン書、最高の良薬である」――伝説の名手ベン・ホーガンの言うとおり、ゴルフ上達のヒントは、往年の選手たちの一言に隠されている。スランプに陥るたび、古今東西のプロアマが残した名言にインスピレーションを得たという著者が、その背景や解釈、独自の練習法を紹介。「インパクトで左手の甲を目標に向けたら、ボールは目標へ向かって飛ぶ」(リー・トレビノ)、「風雨の激しい日は、あらかじめ5打多く打つ覚悟を決める」(ウォルター・ヘーゲン)ほか実践的名言35を厳選。アベレージゴルファー必読の書。

平林孝一『1日1分! かんたん! 100を切る! 体幹ゴルフ入門』

レッスン歴40年のプロが教える、正しい体の使い⽅。 体の動かし⽅を変えるだけで⾶距離10ヤードUP! -5打 への近道は「体幹」にあった! ⾃宅にいながらすぐに実感できる35の極意・21のエクササイズを、豊富なイラストとともに解説。

北見けんいち/金谷多一郎『ナイスショットはリズムが9割!』

『釣りバカ日誌』でおなじみ北見けんいちさんのマンガと、金谷多一郎プロのロジカルでやさしい解説。 ティーショットやパターの極意、ミスしたときの気持ちの整え方まで、充実の22レッスンを収録。 これを読めば、あなたも明日からシングルになれるかも?

{ この記事をシェアする }

ゴルフは名言でうまくなる

スコアアップの鉄則は、古今東西・名選手の金言に学ぶ。読むだけで100を切る! 知的シングルゴルファーになるためのヒント。

バックナンバー

岡上貞夫

1954年生まれ。千葉県在住。ゴルフエスプリ愛好家。フリーライター。鎌ヶ谷カントリークラブ会員。1977年、慶應義塾大学法学部法律学科卒業。大学入学時は学生運動による封鎖でキャンパスに入れず、時間を持て余して体育会ゴルフ部に入部。ゴルフの持つかすかな狂気にハマる。卒業後はサラリーマンになり、ほとんど練習できない月イチゴルファーだったが、レッスン書ではなくゴルフ名言集やゴルフの歴史、エスプリを書いたエッセイなどを好んで読んだことにより、40年以上シングルハンディを維持している。初の著書『ゴルフは名言でうまくなる』(幻冬舎新書)が好評発売中。

この記事を読んだ人へのおすすめ

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP