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ゴルフは名言でうまくなる

2024.07.07 公開 ポスト

第301回

「恥ずかしいのはハンディが多いことではなく、ハンディ以上に叩いてしまうこと」――中部銀次郎岡上貞夫

あなたの実力にあったハンディはいくつ?

最近のコンペは、ペリア方式などを使い、その場でハンディが計算されることが多いから、コンペのたびにハンディが変動してしまう。そうすると、自分は今いくつのハンディが相応な実力なのかが、よくわからないのではないだろうか。

会員制のゴルフクラブに入会し、そのコースのオフィシャル・ハンディをもらえるようなゴルファーなら、「自分のハンディはいくつです」と明言できるかもしれない。しかし、会員権を買っていないゴルファーは、「あっちのコンペでは25だけど、こっちのコンペではこないだ優勝して18になった」なんて言うしかないものだ。つまり、自分の実力にふさわしいハンディがいくつなのかは、不明瞭ということになる。

自分の現状の実力に合致しているハンディは、把握しておいたほうがいい。中部銀次郎さんは、ハンディを使ってネットスコアでのパー・プレーを目標に、ゲームを組み立てることが上達につながるとも言っているからだ。

いい方法がある。Webサイトにはゴルフスコアを管理するツールを無料で提供しているものがある。そういうサイトで、自分がプレーしたスコアカードを登録してデータを積み上げるのだ。楽天のサイトなどでは、無料でJGAハンディキャップ・インデックスの証明書まで印刷できてしまうから、自分のハンディはいくつですと胸を張って言えるだろう。

登録するスコアカードの枚数が多くなればなるほど、そのハンディの信憑性は高くなる。ここで、よかったときのスコアカードだけを登録する、見栄っ張りなゴルファーがいるが、それでは実力よりも少ない数のハンディキャップになってしまう。

そんなゴルファーにこそ、表題にした銀次郎さんの名言をよく理解してほしいものだ。ハンディが30であろうとも、そのことは何も恥ずかしいことではない。その人が、100で回ってきたらネットは2アンダーの70で、すばらしいゴルフをしたと言えるだろう。

一方、ハンディが8だというシングル・プレーヤーが90も叩いたら、これは恥ずかしいことなのだ。見栄を張っていいスコアのカードだけを登録し、みせかけの、少ないハンディを取ったとしても、ハンディ以上に叩くことが多くなり、頻繁に恥ずかしい目にあってしまうだけだ。

Webサイトのスコア管理ツールでは、過去10回~20回のスコアを参照し、極端に悪いスコアはちゃんと計算からはずして平均値を計算し、実力相当のハンディキャップをはじき出している。だから、小細工せずによいスコアも悪いスコアもすべて登録すればよいのだ。

そうやって、スコアカードを登録しておけば、翌月にはハンディキャップが更新される。実力があがり、ネットでパー・プレーよりよくなっていけば、計算されるハンディも減っていくから、またその新しいハンディを目標に努力していけばいい。

ハンディを生かした最も壮大なゴルフイベント

ゴルフは、ハンディキャップを使うという特性があるゲームだ。他の競技ではほとんど見られないが、老若男女がハンディキャップを使うことで誰でも対等に戦えるので、多くのゴルファーがこのゲームの虜になるのではないだろうか。

1952年のアメリカで、このハンディキャップを使った壮大なゴルフイベントが開催された。このナショナル・ゴルフデーと銘打ったイベントの発案者は、ある製薬会社の社長、ダリル・メイズという人だった。

メイズ社長は心臓発作を起こし入院することになった。幸い命拾いをし、回復に向かっていたが、病院の真っ白な壁がどうにも気にいらない。白は清潔なイメージがある反面、無機質で空虚でもあり、生きる意欲がわかないというのだ。

そこで、病院と交渉し、費用は自分もちで壁を塗り替える許可をとった。日本ではあり得ないと思うが、アメリカらしい寛容な病院だったようだ。人間は死に直面すると、哲学的な見地から人生において自分が心から大事にしていることに気がつくものだが、メイズ社長にはそれがゴルフだったようだ。

数人の画家が集められ、メイズ社長の病室は全面的に塗り替えられた。天井には青空と白い雲、壁には緑の絨毯が美しい丘陵コースが描かれ、池やバンカーも本物さながらに描かれた。その甲斐があって、メイズ社長は再起に向けて意欲的になり、無事退院することができた。

自分がいかにゴルフを愛しているかを知ったメイズ社長は、退院するとすぐに行動に出た。入院中に練り上げた企画をもって、奉仕活動組織の「USO」とゴルフ組織の「NGF」を訪ねたのだ。

企画の内容は、世界一のプロゴルファーに全米オープン最終日のつもりでプレーしてもらい、趣旨に賛同してくれるコースで全国のプレイヤーがプレーして、キャロウェイ方式のハンディによるネットスコアで、プロに挑戦するというものだ。参加費は1ドルで、これによって集まったお金は、小児マヒの子どもの治療費として全額寄付される。

第1回ナショナル・ゴルフデーと7,511人の勝者

この企画に二つの組織はもろ手を挙げて賛同、協力してくれるコースを募ったところ、全米とカナダから540ものコースが名乗りでた。残るは、挑戦されるプロゴルファーを誰にするかだ。

1950年初頭のプロゴルファー世界一といえば、交通事故による瀕死の重傷からカムバックし、レジェンドと化していたベン・ホーガンしかいない。気むずかしく偏屈と言われていたホーガンだが、この企画には感心してこころよく引き受けた。

1952年5月31日、いよいよ第1回ナショナル・ゴルフデーが開催された。全米とカナダから、実に5万5051人のゴルファーが参加し、5万5000ドル以上の参加費が集まったばかりでなく、善意の寄付も2万ドル以上あった。ベン・ホーガンは提示されたギャラを断り、逆に5000ドルを寄付したという。

ホーガンは全米オープン2連勝中で、この年に3連覇を狙っている全米オープンを開催予定のノースウッドCC(テキサス州ダラス)でプレーした。メジャー用に改装し、コンディショニングされたコースは難関で、ホーガンをもってしても71ストロークという結果だった。このスコアなら、キャロウェイ方式のハンディキャップ戦ということで、誰にでも勝つチャンスがある。

各地のゴルフコースでプレーした一般参加者で、ネットスコアがホーガンよりよかったのは、7511人だった。その中には、8歳の女の子や70歳の高齢者もいて、ハンディキャップが大いに生かされたのだった。有名どころでは、役者のビング・クロスビーもグロス78、ネット69で勝利を手にした。

この7511人の勝者には、「第1回ナショナル・ゴルフデーにおいて、あなたはベン・ホーガンを見事に撃ち破りました。ここに優れた功績を称えます」と書かれた賞状が贈られた。ゴルフを愛する者にとっては、一生の宝物になったはずである。

ハンディとマッチプレーのおもしろさ

ハンディキャップは、誰もが平等にゴルフというゲームを堪能するのに役立つ、とても優れた特性を持っている。では、スコアカードの各ホールの横に、ハンディキャップ(HANDICAP、HDCP)と書かれた数字が印刷されているのは、何のためなのかご存じだろうか。

「ハンディ1のホールが一番難しく、ハンディ18のホールが一番やさしい」と理解しているゴルファーも多いが、実は少し間違っている。ここに書かれているハンディの数字は、マッチプレーでのハンディキャップ戦に用いるためにあるのだ。

例えば、ハンディ18とハンディ9の選手でマッチを行う場合、ハンディ18のプレーヤーは9ホールにハンディとして1打貰えることになる。それを、どのホールにするかを決めるのが、このスコアカードにあるホールごとのハンディキャップなのだ。この場合、ハンディ1~9のホールがハンディホールということになる。

このため、単純に難しいホールの順番ではなく、アウトとインでバランスよくハンディホールを振り分けるように工夫されている。ハンディ1のホールがアウトなら、ハンディ2はインというふうに、ハンディホールが偏らないようにされているのだ。

昔は理事長杯の決勝ラウンドなどが、ハンディキャップ戦のマッチプレーで行われていたりしたが、最近ではあまり見なくなってしまった。クラブ選手権やシニア選手権は、マッチプレーで決勝ラウンドを行うが、ハンディを使わないスクラッチ戦となっている。

だから、このホールハンディを使うとしたら、今では友人間でホールマッチをするときぐらいかもしれない。ホールマッチでは1ホールで大たたきしても1ホール失うだけだが、ストロークプレーだとその大たたきがトータルスコアに影響してしまう。だから、ホールマッチではトータルスコアの悪いほうのプレーヤーが勝負では勝ってしまうこともあり、エキサイティングなのだ。

マッチプレーはゴルフの原点だ。友人たちとのゴルフで、単にトータルスコアで競い合うより、ホールマッチで競ったほうがより楽しいと思うので一度試してみてほしい。そのとき、スコアカードのホールハンディキャップの知識を披露すると、ちょっとだけ尊敬されるかもしれない。

 

参考資料:

関連書籍

岡上貞夫『90を切るゴルフの名言33』

伝説のアマチュアゴルファー・中部銀次郎が「心が8割、技術は2割」と言ったように、ゴルフでは技術以外の要素がスコアを大きく左右する。そこで頼りになるのが、プレーに対する考え方のヒントが詰まった名選手たちの言葉だ。40年以上シングルハンディを維持する著者が、選りすぐりの名言と知られざるエピソード、独自の練習法などを紹介。「カップに打つのではない。カップの1ヤード先に打つのだ」(サンディ・ハード)、「バンカーでは決して欲張ってはいけない。ボールを出すだけで満足せよ」(ハリー・バードン)など、読むだけでスコアがみるみる伸びる!

岡上貞夫『ゴルフは名言でうまくなる』

「プレー前夜に読む過去の名手の福音は、私にとって心のレッスン書、最高の良薬である」――伝説の名手ベン・ホーガンの言うとおり、ゴルフ上達のヒントは、往年の選手たちの一言に隠されている。スランプに陥るたび、古今東西のプロアマが残した名言にインスピレーションを得たという著者が、その背景や解釈、独自の練習法を紹介。「インパクトで左手の甲を目標に向けたら、ボールは目標へ向かって飛ぶ」(リー・トレビノ)、「風雨の激しい日は、あらかじめ5打多く打つ覚悟を決める」(ウォルター・ヘーゲン)ほか実践的名言35を厳選。アベレージゴルファー必読の書。

平林孝一『1日1分! かんたん! 100を切る! 体幹ゴルフ入門』

レッスン歴40年のプロが教える、正しい体の使い⽅。 体の動かし⽅を変えるだけで⾶距離10ヤードUP! -5打 への近道は「体幹」にあった! ⾃宅にいながらすぐに実感できる35の極意・21のエクササイズを、豊富なイラストとともに解説。

北見けんいち/金谷多一郎『ナイスショットはリズムが9割!』

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岡上貞夫

1954年生まれ。千葉県在住。ゴルフエスプリ愛好家。フリーライター。鎌ヶ谷カントリークラブ会員。1977年、慶應義塾大学法学部法律学科卒業。大学入学時は学生運動による封鎖でキャンパスに入れず、時間を持て余して体育会ゴルフ部に入部。ゴルフの持つかすかな狂気にハマる。卒業後はサラリーマンになり、ほとんど練習できない月イチゴルファーだったが、レッスン書ではなくゴルフ名言集やゴルフの歴史、エスプリを書いたエッセイなどを好んで読んだことにより、40年以上シングルハンディを維持している。著書に『ゴルフは名言でうまくなる』『90を切るゴルフの名言33』(ともに幻冬舎新書)がある。

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