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ゴルフは名言でうまくなる

2021.07.18 更新 ツイート

第184回

「アイアンショットの飛距離をしっかり認識しておくことだ。とりわけキャリーがいくつで、どれぐらい転がるか…を」――中部銀次郎 岡上貞夫

Par3で大たたきしてしまう原因は?

これは名言というよりも、上級者にとっては常識といってもよい内容だ。多くのプロやトップアマが同様のことをアベレージゴルファーに言って聞かせているかもしれない。

しかし、いくら言われても、意外と自分のアイアンショットのキャリーとランを把握していないのが、アベレージゴルファーの大半ではないだろうか。

 

この言葉が出てくる銀次郎さんの著書『もっと深く、もっと楽しく。』(集英社文庫)では、次のような事例を示して、その重要さを説いている。

ある日のラウンド、午前のハーフで138ヤードのPar3にやってきた銀次郎さんは、8番アイアンでショット。ボールはピンハイに落ちてから10ヤードほど転がって奥で止まった。そこから難なく2パットで収め、パーを取った。

ワンラウンドを終わってもうハーフ行こうとなり(昔は1.5ラウンドをよくやったものだ)、再び先の138ヤードPar3へやってきた。同伴プレーヤーのAさんが、「銀さん、さっきは8番で10ヤードオーバーしたから、今度は9番アイアンでピタリですか?」と話しかけた。

銀次郎さんの答えは、「いえ、また8番で打ちます」だった。たしかに、9番で打てばグリーン手前の大きなバンカーをギリギリで超えてエッジに落ち、転がって寄るとは考えそうなことである。

Aさんは怪訝に思い、「じゃあ8番でスリークォーターショット?」と聞くと、銀次郎さんは「朝と同じように打ちます」と答え、実際にまたピン奥へ乗せて、難なくパーとした。

多くのゴルファーが間違えるのがここだと、銀次郎さんは言う。

「9番アイアンでナイスショットすればたしかにベタピンに寄るかもしれないが、少しでもミスすれば手前のバンカーに落ちる。しかもグリーン側の受けたところへ落ちると目玉になる可能性も考えなくてはならない。うまく打てる確率と、ミスしてバンカーに入れる確率とでは、後者のほうが3倍ぐらい大きい。とすれば、確率の高いゴルフをするならば、9番のフルショットは避けて通るのが当たり前だ」

このように、あまり距離のないPar3では大きくて深いバンカーを配置したり、周囲のラフを深くしたりして簡単なホールになりすぎないようにしているものだ。それなのに、アベレージゴルファーはティーショットさえ成功すればパーやバーディを取りやすいと考えて、ベタピン狙いをしてしまうのだ。

ギリギリを狙っているから、ほんの少しのミスでバンカーに落ちるし、リキみも出やすいからショートアイアンといえども大きく曲げてしまうことも起こりうる。こうして、一見短くて簡単そうなホールで大たたきをしてしまうのである。

これに対して銀次郎さんは、自分のアイアンのキャリーでバンカーを楽に越えられるクラブを選択しているから、メンタル的にも追い込まれず、グッドショットの確率が高くなってグリーンをとらえる確率も高まるのだ。

同じ飛距離でも、キャリー:ランの割合で攻め方が変わる

この事例では、銀次郎さんの8番アイアンは130ヤードキャリーして10ヤード転がり、トータルで140ヤードの飛距離だったのだろうと思われる。おそらくピンはセンターより手前のバンカーを越えて、近いところへ切られていたと思われる。

銀次郎さんが「ピンハイに落ちた」と言っているから、このPar3はティーからグリーンセンターまでが138ヤードで、この日のピンは130ヤードあたりに切ってあったのだろう。

こういう状況で、キャディさんに「ピンが手前だから、実質は130ヤードです」なんて言われると、オートマティックに「130ヤードなら9番アイアンください」となってしまうのがアベレージゴルファー。

しかしよく考えれば、9番アイアンのキャリーは120ヤードちょっとだろう。120ヤードはバンカーをやっと越えるかどうかの瀬戸際になるはずだ。これでは少しのミスも許されない。

銀次郎さんはピンの上ならミス、ピンの下ならナイスショットという名言も残しているが、ホールによってはそうとばかりも言えないのがゴルフ。やはり状況判断が大事なのだ。

1回こっきりのバーディコンテストとか、ニアピンコンテストでピンに近いほうが勝ち、というようなゲームなら9番アイアンのベタピン狙いが正解だろうが、ゴルフは18ホールの長丁場でトータルスコアを争うゲームだということを忘れてはいけないのである。

落ち着いて考えてみれば、キャリーでボールが落下する地点に池やバンカーなどの危険があるなら、徹底的に避けるのがスコアを崩さない鉄則ではないか。ところが、コースへ行くとピンまでの距離だけで判断し、キャリーでボールが落ちそうな場所には気を配っていない。これはアベレージゴルファーばかりでなく、そこそこの上級者でもついやってしまう「目に見えないミス」なのだ。

7番アイアンで150ヤード飛ぶAさんとBさんがいるとしよう。Aさんは球筋が高いフェードボールで、145ヤードのキャリーで5ヤードしか転がらない。一方のBさんはスコットランド流で低いドローボールを駆使、130ヤードのキャリーで20ヤードも転がる。トータルはどちらも150ヤードである。

どちらのスタイルがいいとか悪いとかではない。アメリカンタイプでハイカットのAさんも、スコットランドタイプでロウドローのBさんも、いいスコアを出せるはずである。しかし、AさんとBさんではキャリーの落ちる位置が15ヤードも違うので、ホールを攻略するマネジメントはまったく異なるのだ。

グリーンセンターのピンまでが同じ150ヤードでも、Aさんはグリーンに直にキャリーさせられるが、Bさんは花道やフロントエッジから転がし上げる攻め方になる。そこにバンカーがあれば、もう少しキャリーの出るクラブで打ってピン奥に行ってもいいというマネジメントになるだろう。

こう考えると、高いボールのAさんが有利に思えるかもしれない。しかし、ピンが真ん中ではなく奥に切ってある場合、Bさんは転がって寄っていくのに対し、Aさんはグリーンオーバー覚悟でドキドキしながら突っ込んでいかねばならない。

強い向かい風の場合には、Aさんは2番手も長いクラブを持たないとならなくなるが、Bさんは1番手だけでも対応できるだろう。このように、それぞれ一長一短があるものなのだ。

「手前から攻める」にこだわりすぎてはいけない

ちなみに、銀次郎さんは比較的低い球筋だったそうだ。大事なのは、自分のアイアンショットやユーティリティのショットのキャリーがどこに落ちるのか、そしてどれぐらい転がるのかを、ちゃんと意識してマネジメントしているかどうかなのだ。

このグリーンを狙うショット、アイアンやユーティリティのキャリーの飛距離を把握してグリーンを攻めるマネジメントは、スコアに大きく影響するようだ。

私は最近、21回も連続で自分のオフィシャルハンディでのネットパープレーができないという長いスランプに陥っていた。しかし、銀次郎さんの138ヤードPar3の事例を読み直したおかげで、はたと気がついたことがあったのだ。それは、「ピンの上ならミス、ピンの下ならナイスショット」にこだわりすぎていたのではないか……ということだ。

もちろん、一度もピンの奥へ行くことなくホールアウトするのが理想ではある。しかし、同時にゴルフは確率を求めるべきで、パーセンテージゴルフをするのが得策だとも銀次郎さんは言っているのだ。

ところが、いささかピンの手前から攻めることにこだわりすぎていた私は、気がつかないうちに確率の低い方法を選択してしまっていたようだ。

グリーンの前面に深いバンカーがあるような場合、ピンの奥へ行かせたくないと思うと、花道のフロントエッジを狙うことになる。ところが、その花道は大きく取られてはおらず、狭いスペースしかないということも多い。

それでも、その狭いスペースを狙って打っていたから、緊張からミスして、結果的にそのスペースには落とせず、トラブルになってしまっていた。そんなことで意に反したダブルボギーやトリプルボギーが増えていたように思う。

グリーンに乗っていれば、大きなスコアを打ってしまうことはまずない。悪くてもボギーではほとんど収まるはずだ。ならば、グリーンに乗る確率の高い攻め方をすべきだったのだ。

ピンの奥へ行ってしまうかもしれないが、バンカーをキャリーで楽に超えるクラブで打てば、グリーンの横幅全部が方向性の許容範囲となる。狭い花道を狙うよりも、このほうがオングリーンの確率が高いだろう。

もちろん、ピンの手前に危険がないようなホールなら、手前から攻めるのが基本だ。しかし、バンカーやラフの状況、ピン位置、グリーン全体の傾斜などをよく観察し、臨機応変さをもって、確率の高い攻め方を考えることでスコアがとてもよくなるようだ。

これを意識してから、片方のハーフだけでも30台が出るようになってきたので、私の長かったスランプも、ようやく脱出できそうな気配を感じている。

グリーンを狙うショットは、キャリーでボールの落ちる場所を意識して状況判断し、もっとも確率の高い方法を選択する。ごく当たり前のことなのに、ついつい甘くなっているところではないだろうか。

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参考資料:中部銀次郎『もっと深く、もっと楽しく。 アマチュアのためのゴルフ聖書』集英社文庫、1991年

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ゴルフは名言でうまくなる

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岡上貞夫

1954年生まれ。千葉県在住。ゴルフエスプリ愛好家。フリーライター。鎌ヶ谷カントリークラブ会員。1977年、慶應義塾大学法学部法律学科卒業。大学入学時は学生運動による封鎖でキャンパスに入れず、時間を持て余して体育会ゴルフ部に入部。ゴルフの持つかすかな狂気にハマる。卒業後はサラリーマンになり、ほとんど練習できない月イチゴルファーだったが、レッスン書ではなくゴルフ名言集やゴルフの歴史、エスプリを書いたエッセイなどを好んで読んだことにより、40年以上シングルハンディを維持している。初の著書『ゴルフは名言でうまくなる』(幻冬舎新書)が好評発売中。

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