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認知症・行方不明者1万人の衝撃

2021.07.07 更新 ツイート

ある日突然、行方不明になった父…少しでも「おかしい」と思ったらすぐ専門医へ NHK「認知症・行方不明者1万人」取材班

日本人にとって、国民的な病のひとつとなっている認知症。2014年の放送後、たちまち大反響を呼んだ「認知症行方不明者1万人~知られざる徘徊の実態~」(NHKスペシャル)を書籍化した『認知症・行方不明者1万人の衝撃』は、認知症を原因とする徘徊、失踪の問題に深くメスを入れたノンフィクションだ。超高齢社会を迎えたいま、誰もが当事者になりうるこの問題。本書を読んで、その実態と解決策をぜひ知っていただきたいと思う。

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なぜいなくなったのか分からない……

秋田県男鹿市の佐々木耕太郎さん(仮名)は、七六歳だった二〇一三年一二月に行方不明になった。その日は、夕方から雨が降る予報が出ていたが、耕太郎さんは、傘を持たずに出かけ、家族はいつものようにすぐに戻ると安心していた。

(写真:iStock.com/designer491)

しかし、夕方になっても帰宅せず、警察に通報したが、今も見つかっていない

耕太郎さんはどこに行ったのか?

警察の捜索から思いもしなかった足取りが見えてきた。

耕太郎さんは、午後三時半頃、自宅近くの床屋に寄っていることが目撃されている。その六時間後の午後九時過ぎには、今度は一〇キロ以上離れた男鹿市の駐車場で目撃されていたのだ。

しかし、なぜいなくなったのか。家族には理由が全く分からなかった。

耕太郎さんは、几帳面な性格で趣味だった新聞の切り抜きをいなくなる直前まで続けていた。

気づかないうちに認知症になっていたのではないか、家族は耕太郎さんの行動を振り返る中で、そう考えるようになったという。

娘の裕子さん(仮名・四六歳)は、「土産の饅頭を一人で一気に食べてしまったことなど、今振り返るとおかしかったのかなというところも若干あった」と話す。

妻の節子さん(仮名・七二歳)は「夫が認知症になるなんて全く思いもしなかった。月日が過ぎたのでどこかで保護されていればいいなと祈っている」と夫の身を案じた。

行方不明になって初めて認知症だと気づく

東京・江東区に住む市橋敏正さん(仮名・八一歳)は、二〇一三年八月に行方不明となり、八日後に発見された。

(写真:iStock.com/Chinnapong)

行方不明になったその日、一緒に住んでいた妻の雅子さん(仮名・七四歳)は、敏正さんが午前六時に毎朝の日課の散歩に出かけるのをいつも通り見送っていた。普段なら一時間で帰ってくるはずが、この日は昼になっても帰宅しなかった。

なぜ行方不明になったのか見当もつかないまま、雅子さんは敏正さんが普段散歩する近所の公園などを捜し回ったという。

敏正さんの行方不明は長女の佳子さん(仮名・四〇歳)にとっても想像していないことだったという。佳子さんは、三日前に両親を訪ねていたが、敏正さんに変わった様子はなく、まさか行方不明になるとは思っていなかった

翌日、警察に行方不明を届け出て、付近の捜索が行われた。さらに、佳子さんは手がかりを求めて、ブログで写真を公開し、情報提供を呼びかけたが、見つからなかった。

八日後、敏正さんは自宅から六キロ離れた公園のベンチで見つかった。食事をとっておらず衰弱した状態だった。保護される直前の敏正さんを目撃していた男性によると、「ベンチに座ったままボーっとしている男性がいて心配になり、大丈夫かと話しかけたら、大丈夫だと答えた。認知症には見えなかった」と話した。

警察から連絡を受けて駆けつけた雅子さんは、敏正さんの一言に驚かされたという。「今朝、散歩に出て道に迷ってしまった」――。敏正さんは発見されるまでの八日間のことを覚えていなかったのだ。

雅子さんは敏正さんを連れてすぐに病院に駆け込んだ。そこで、敏正さんが「認知症」だと診断を受け、行方不明になった理由を初めて知った。

雅子さんは「まさか主人が認知症になっていたとはびっくりした。でも、それで行方不明になった理由が分かった。もっと早く認知症ではないかと気づいてあげればよかった」と話した。

取材の結果、明らかになったリスクについて、専門家はどう考えるのか。

認知症介護研究・研修東京センターの本間昭医師は、徘徊は認知症の初期段階の症状だとした上で、「徘徊はある日突然起こるのではなく、徘徊に至る前には認知症の進行を示すいろいろなサインがあらわれている。例えば、同じことを何度も言う、同じものを何回も買ってきてしまう、料理の段取りが悪くなる、味がうまくつけられなくなるといったこともサインとなる。

早く治療すれば徘徊のリスクを減らすことができるので、普段の生活で少しおかしいと気づくときがあれば、気のせいだと片付けずに早く専門の医療機関に受診してもらいたい」と解説する。

関連書籍

NHK「認知症・行方不明者1万人」取材班『認知症・行方不明者1万人の衝撃 失われた人生・家族の苦悩』

認知症による徘徊などで家を出て、 そのまま戻れず行方不明になる人が、年間1万人もいた! 悲劇はすぐそこで起きていた。 社会を動かした「NHKスペシャル」待望の書籍化。 放送をきっかけに、認知症で身元不明の女性が約7年ぶりに家族と再会。 国や自治体が対策に着手するなど、社会を動かしたNHKスペシャル「“認知症800万人”時代 行方不明者1万人〜知られざる徘徊の実態〜」を書籍化。2014年菊池寛賞受賞番組。 日本人にとって、国民的な病のひとつとなっている認知症。今や65歳以上の4人に1人が、認知症とその予備軍だ。また、認知症やその疑いがあり、徘徊などで行方不明になった人は年間およそ1万人となる。 本書では、認知症による徘徊で行方不明となっている肉親を捜し続ける家族の苦しみや、身元を確認する仕組みの課題などについて取材。 超高齢社会に突入した日本で、誰もが当事者となり得る問題について、警察・自治体・家族への膨大なアンケートから分かった知られざる実態と解決策を提示する一冊。 認知症の人を介護する家族に向けて、医療・介護の専門家が教える認知症ケアのポイントも丁寧に解説。

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認知症・行方不明者1万人の衝撃

日本人にとって、国民的な病のひとつとなっている認知症。放送後、たちまち大反響を呼んだ「認知症行方不明者1万人~知られざる徘徊の実態~」(NHKスペシャル)を書籍化した『認知症・行方不明者1万人の衝撃』は、認知症を原因とする徘徊、失踪の問題に深くメスを入れたノンフィクションだ。超高齢社会を迎えたいま、誰もが当事者になりうるこの問題。本書を読んで、その実態と解決策をぜひ知っていただきたいと思う。

バックナンバー

NHK「認知症・行方不明者1万人」取材班

放送後、たちまち大きな反響を呼んだ、NHKスペシャル『認知症行方不明者1万人~知られざる徘徊の実態~』を制作。2014年、菊地寛賞受賞。

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