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あぁ、だから一人はいやなんだ。

2021.04.30 更新 ツイート

第154回 古都 いとうあさこ

毎度のことながらどう見えているのかはわかりませんが“こう見えて”わたくし、古美術、って表現でいいのかな。古きものが大好きで。と言っても別に「この壺は相当なお値段ですよね。」とか「この皿は今まで一体どこに隠していたんです?」みたいに目利き的なことはもちろん無理。ただただ古き良きものを見るのが好きなんです。神社仏閣、更にはそういうところの宝物が公開される、なんて聞いたら見に行きたい。古墳からの出土品なんて大興奮ですし、歩いている時にその場所や物の起源やらいわれやらが書かれている立て札を見つければ読まずして進むのは出来れば避けたい。以前イギリスに行った際はあえて大英博物館のすぐ近くの安宿をとって毎日エジプト展示室へ出向き、ロゼッタストーンやミイラを飽きるまで、って結局まったく飽きる事はありませんでしたが、とにかく見まくったものです。

 

これは完全に母の影響。母が昔から好きで、小さい頃は何度か博物館に連れてってもらったりしました。家族で奈良に行って、本物を見る旅もした。とは言え子どものあさこちゃんがその良さなんかわかるわけもなく、正直どんなものを見たのかも覚えていない。今思い出せる思い出と行ったら、ホテルで朝食をいただく時に窓際にケーシー高峰さんがいらした事くらい。私にとって初めて会った芸能人で。それから何十年か経ってお仕事でご一緒させていただく機会があり、その時の事を話すとニコニコ笑って聞いてくださったのは忘れられない。

修学旅行で奈良・京都に行った時も“もちろん”何を見たのかなんて覚えておりません。しかもウチの学校は小中高繋がっているのに、小学校・高校共に修学旅行は奈良・京都と同じ場所。つまり2回も行っているんですけどね。思い出すのは夜、先生に見つからないように部屋を移動してみんなでお喋りした事や、東京では見た事なかった“ファンタいちご”をこっそり買ってきてみんなで一口ずつ飲んでみたり。そんな時、急に先生が見回りに来て、慌ててベットと壁の隙間に隠れたら、ガッツリはまって出てこられなくなったり。そんな事ばかりです。

ホント、どれをとっても今考えたらもったいないけど、そうだったんだから仕方がない。でも自分も大人になるにつれ少しずつですが、そういう古き場所に行ったり、昔のものを見たりするのがどんどん面白くなってきて。だってすごくないですか? 遙か昔にどんな人がどんな環境でどんな風に考えてそれらを作ってきたのか。想像するだけで静かに、でもすごいパワーで奥底から“ワクワク”が込み上げてくるのです。

そんな私が先日、奈良に行く事がありまして。奈良、すごく好きなんです、私。社会の授業で年号を覚えた最初の都があった場所なのに、簡単に新幹線でビュッと行けない感じが余計になんか特別な土地に感じてたまりません。そんな奈良にて泊まりでお仕事。以前は泊まりなんて言ったら仕事終わりスタッフさんとその土地の美味しいものを美味しいお酒と共にいただく、なんてのがお決まりでしたが、今はビジネスホテルの自分の部屋で窓から見える隣の建物の壁を見ながら一人コンビニ飯&缶ビールでディナーです。コンビニに肉吸いが売っていたのが唯一関西っぽくて嬉しかったですが、あとは東京でも売っているいつものお惣菜を買っておツマミに。そんな夜ですから必然寝るのも早めになる。となると日々ただでさえ早くに目が覚めちゃう50歳。超絶早くに起きる事になるのです。その日は仕事がお昼前からとずいぶん遅いスタートなのにもかかわらず、目覚めたのは4時21分。しばらくは布団に入ったままテレビ観たり、携帯で土地を耕すゲームやったり。そうこうしているうちに少しずつ窓の外が明るくなってきましてね。急に閃いたんです。「あ、ドラクエウォーク。」そうです、周りでやっている人ももう全然いないので誰とも話せないのですが、私はまだドラクエウォークをやっておりまして。と言っても結局ちゃんとしたゲームはまったくしていなく、唯一“ご当地クエスト”と言う47都道府県それぞれに4つずつある“おみやげ”を集める、要はスタンプラリーみたいな事だけ細々とやっているのです。ちなみに奈良県は“東大寺”“谷瀬の吊り橋”“長谷寺”“平城宮跡”の4カ所。地図で調べてみると“平城宮跡”ならホテルから歩いて35分との事。よし、超久しぶりにお散歩でもしてみるか。

ポッケに小銭とハンカチをねじ込んでいざ出発。静かな朝。車こそ往来はあるものの、人はほとんどおらず静かな道のり。もちろん街は現代の都会の風景ですが、格別に高い建物もないですし、あと空気なのかなぁ。なんかちゃんと古き都を歩いている気分になってくる。すぐその雰囲気に入り込んじゃうんです、私。昔日本史の教科書で見た奈良時代の、あの腰のところを紐で結んだ麻かなんかの着物で歩いているような気分にまでなったりして。簡単な女です、はい。

結局、地図アプリが案内してくれた“徒歩35分”の場所は入り口で、南門などがあるメインの所までは更にぐるりと15分くらい進む。少しずつ見えてくるとにかく広いまっすぐな大地。何カ所か見える盛土から、ここに建物があったんだなぁ、とか、たくさんの人がいたんだろうなぁ、とか。風の音しかしないその場所で、昔の賑わいを想像する。一人ぼんやり眺めていると何か独特な、格別にゆったりとした時間が流れている感じ。奈良時間、とでも申しましょうか。なんか別世界。そんな中、時折遠くに電車が通るも、また良し。

往復2時間の散歩。急に思いつきで行きましたから、靴がつっかけしかなくて。帰りなんか痛いな、と思って見てみたら足の親指の裏に大きな水ぶくれが出来ちょりました。気づくと痛みは増すもので、えっちらおっちら足を引きずりながらなんとかホテルに帰還。ああ、いつか時間がある時、そして自由に旅が出来る世の中になった時にはたっぷりと時間をかけてゆっくり平城宮跡を、奈良を歩きたいなぁ。その時はちゃんとしたウォーキングシューズ買っていかないと、ですね。

【本日の乾杯】結局ギョウザは間違いない、と売っていたら買ってしまう。電子レンジもあるホテルだったのであったかい状態でいただけるのは幸せ。タレもラー油も上手に出せました。

関連書籍

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。』

寂しいだか、楽しいだか、よくわからないけど、日々、一生懸命生きてます。 人気芸人の、笑って、共感して、思わず沁みるエッセイ集。

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コメント

みぃ  私も奈良大好き。 京都みたいな華やかな感じではなくて、ゆっくりと自然と時間が堆積していった感じが好き。 第154回 古都|あぁ、だから一人はいやなんだ。|いとうあさこ - 幻冬舎plus https://t.co/41gI5qjNv6 6日前 replyretweetfavorite

幻冬舎plus  [今日の新着記事] 第154回 古都|あぁ、だから一人はいやなんだ。|いとうあさこ https://t.co/YWS6bT1meK 7日前 replyretweetfavorite

林けいこ  第154回 古都|あぁ、だから一人はいやなんだ。|いとうあさこ - 幻冬舎plus https://t.co/qfsfFsvNXu 7日前 replyretweetfavorite

いとうあさこ  古都、好きだわぁ。 そしてコンビニの餃子も、好きだわぁ。 https://t.co/Cae5vM9CuA 7日前 replyretweetfavorite

幻冬舎plus  大人になるにつれ、古き場所や昔のものを見するのがどんどん面白くなっているというあさこさん。わかりますー!そう、昔を想像するだけでこみあげてくるワクワク、パワーがありますよね。(竹) 第154回 古都|あぁ、だから一人はいやなんだ… https://t.co/Kcth7ClqIH 7日前 replyretweetfavorite

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