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あぁ、だから一人はいやなんだ。

2021.05.15 更新 ツイート

第155回 大腸検査 いとうあさこ

正確に言うと大腸内視鏡検査。先日初めて受けました。今まで胃カメラは何度もやってきたのですが大腸カメラは未経験。今年2月の人間ドックで先生との問診の際、「一度やっておこうか」という事になりまして。その場で予約をいたしました。手続きと説明が終わったところで看護師さんが“検査食”と書かれた箱を持ってきて「伊藤さん、検査前日の食事、これを食べるか食べないかですがどうなさいますか?」と。パッケージを見るとどうやらおかゆのよう。わたくし、よくある検査前日の“食事OKタイム”ギリギリまで、出来るだけ好きなもの食べたくて。同じおかゆでも出汁だの具で変わってくるし、具だくさんスープとかも良さそうじゃない?「もしこれを食べない場合、何をこう調理して食べろ、など何かご指示いただけるんでしょうか?」と聞いてみた。「いいえ。これを食べるか、何も食べないか、です。」あ、そっちの二択!?「これ、ください。」即決。

 

何はともあれ、初めての経験。不安しかない。だって口や鼻からは胃カメラ、更にはイッテQ! でやったインドの“鼻ヨガ”でも変なヒモを通した事はありますが、お尻ちゃんに関してはこちとら“出口”だと思っていますから。痛いのか、痛くないのかもわからない。そもそもあんなにクネクネした道のりをカメラはどうやって進んで行くのか。考えても答えは見つからずただドキドキするのみ。こうなったら、と片っ端から「大腸カメラしたことある?」と聞いていった。

いの一番に聞き、経験者だと判明した近所の仲良し・大久保佳代子嬢。大久保さんによると検査そのものより辛いのは“その前”だと。検査前日の就寝前、下剤を飲むのですが、翌朝早い時間からその痛みでのたうち回った、と。下剤は以前、バリウム検査で飲みましたが、だいぶ前なのと(今はずっと胃カメラなので)数回なので、下剤を飲んだら自分がどうなるかなんて覚えていない。どのみち飲み慣れてないなら“効いちゃう”可能性大だ。

知り合いの作家さんはまさかの「逆!」と。むしろ下剤の腹痛は大したことなくて、検査で腸にカメラが通っていく時、カーブの所が凄く痛いとの事。マネージャーなんか「俺はその痛いのがヤダから、麻酔して眠っている間にやってもらう!」いやいや、ちょいとお待ちなさいな。結局検査の前も検査そのものもすんげぇ怖くなっちまったぜ。

検査二日前の夜。「明日は検査食だし、明後日検査終わるのが夕方だからしばらくちゃんとした食事は取れない」と出前アプリをガン見で熟考。その日の晩ご飯はタイ料理に決定。二日後にはまた普通にご飯食べられるんですけどね。なんだか“最後の晩餐”くらいの気持ち。大好きなグリーンカレーを中心に空心菜炒めやタイ風卵焼きなど数品注文。いやぁ、美味しかった。美味しかった分、食べ過ぎたんでしょうね。翌朝、腹痛で飛び起きる、という。痛い。痛すぎる。腹痛、一日早いわ。

そんな幕開けの検査前日。検査食の日です。改めてちゃんと箱の中を見てみる。あら、なんか美味しそう。全部レトルトで朝食用に鮭のおかゆとお味噌汁。昼食は中華がゆとすまし汁。間食用にチョコクッキーみたいなのも入っていて、夕食はコーンスープ。別に全部食べなくてもいいようですが、とにかく食事は19時まで。ただこういう日に限って遅くまで仕事だったので、昼・夜は楽屋で湯煎しようと自宅から電気ポットを持って行ったら、スタッフさんがIHのクッキングヒーターと小鍋をご用意くださいまして。ありがてぇ。結果キレイに三食とも完食。特にラストのコーンスープは“これで最後”感も混ざってか、べらぼうに美味しく、スプーンでこそげ落とすようにして一滴も残さずいただきました。

23時過ぎ、帰宅。テレビを観ていると無意識に机の上のチーズおかきに何度も手が伸びてしまう自分と戦いながら、お風呂も入って夜中1時就寝。例の下剤を二粒、勇気を出して口に放りこむ。せめて朝までは眠れますように。祈る気持ちで、と言うか本当に祈りながら眠った。

いよいよ検査当日の朝。大久保さんから聞いていたあのひどい腹痛で目が覚める、はずだった。あれ? 無。何もない。と言うか便意すらない。普通の目覚めをした私は8時から、経口腸管洗浄剤という下剤の粉を2リットルの水で溶かしたものを2時間かけて少しずつ飲む。これもしんどいと聞いていたが、確かにちょっと飲みにくい。味が、と言うよりなんか重い。飲みこむのにちょっと力がいる。説明書に“気分が悪くなったり、嘔吐したりする事も”的な注意事項があったので、相当おっかなびっくり飲んでいった。ゆっくりゆっくり飲んだ。……あれ? これまた飲んでも飲んでも私の体、無反応。どうした? 私の腸、どうした? だんだん“このまま痛くならなかったら”の方の恐怖が生まれてくる。ちょっと乱暴にゴクゴクと飲んでみる。気持ちは不良。

1時間くらいしてやっとトイレへ。病院からいただいたプリントに便ちゃんの段階が4段階書いてあって、最後“透明感のある液体”になるまで出す、とのこと。さて、あさこのファーストトイレ。ん? すでに3の段階。いや、もうほぼ4の段階に近い3だ。「宿便全部出て1キロくらい痩せるよー」なんて事も聞いておりましたが、どうやら私の体はすでに何もなさそう。正直、排泄している感覚もほぼなく、ただただ水が出てきている感じ。これはこれで、だなぁ。

そんなこんなですべてが拍子抜けだった私の検査準備も終わり、いざ病院へ。検査自体も軽い麻酔をしたので痛さ、辛さもなく、思ったよりピンクな自分の大腸の映像を見ながら先生の説明を伺ったり、質問したり。あっという間に検査終了。はい、全然大丈夫でした。よかった。さ、50年頑張ってきてくれた腸に感謝をしながら、今夜も美味しくお酒をいただくといたしましょうか。大腸殿、これからも頼んだよ。

【本日の乾杯】UberEatsでよく頼むイタリアンのお店がありまして。先日閉店間際にオーダーしたら、残ったお惣菜をパックにして袋に一緒に入れてくださっていた。こういうの、すごく嬉しい。早く飲みに行って直接御礼言いたいなぁ。

関連書籍

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。』

ぎっくり腰で一人倒れていた寒くて痛い夜。いつの間にか母と同じ飲み方をしてる「日本酒ロック」。緊張の海外ロケでの一人トランジット。22歳から10年住んだアパートの大家さんを訪問。20年ぶりに新調した喪服で出席したお葬式。正直者で、我が強くて、気が弱い。そんなあさこの“寂しい”だか“楽しい”だかよくわからないけど、一生懸命な毎日。

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