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60歳から会社に残れる人、残ってほしい人

2021.02.22 公開 ツイート

年齢で衰える能力は勉強と巻き込む力でカバーする 酒巻久

「終身雇用は崩壊した」と言われて久しい今、60歳を過ぎても会社から必要とされるのはどんな人なのでしょうか。キヤノン電子の代表取締役社長・坂巻久さん著『60歳から会社に残れる人、残ってほしい人』より、中高年からの働き方・生き方のコツをご紹介します。

努力を続けることも才能の一つ

定年を迎えても企業から「残ってほしい人」になるために大切なことの一つが「勉強し続ける」ことです。どれほど立派な大学を卒業した優秀な人も、勉強をしないとダメになってしまいます。私はこれまでも「企業に入ったら必死で勉強をしろ」と言い続けてきましたが、残念ながら今は勉強する人がそれほど多くはありません。

(写真:iStock.com/vadimguzhva)

たしかに優秀な人であれば最初の5~10年くらいは何とか成果を出すことができるかもしれませんが、しっかりとした勉強をしないままに才能だけで続けていると、30歳を過ぎたあたりで限界が見えてきます。

企業というのはそれほど甘いものではありませんから、どんなに才能があり、どんなに優秀な大学を出たとしても、その後の勉強次第で大きく差がつくことになるのです。

 

スポーツの世界に「努力する才能」という言い方があります。野球やサッカーのプロ選手、あるいはオリンピックでメダルを取るような選手には当然優れた才能があるわけですが、才能だけでは限界があるというのもまた事実です。

ある選手が「才能なんて、その後の生き方次第で変わってしまう」といっていました。その選手によると、プロに必要なものの半分は才能なのですが、才能に加えて、厳しいトレーニングや規則正しい生活を送ることができるかどうか、努力し続けることができるかどうかで並の選手で終わるか、スーパースターになることができるかが決まるというのです。

野球などのプロのスカウトから見れば、「素質の有無」はすぐに分かりますが、「努力する才能の有無」を見極めることは簡単ではありません。しかし、実際には「努力する才能」を持っているかどうかこそが、アスリートとしての成功を大きく左右します。

 

2014年にロシアで開かれたソチオリンピックのスキージャンプで41歳の葛西紀明選手が銀メダルという快挙を成し遂げましたが、そこに至るまでに葛西選手がどれほどの「努力」をしてきたかを考えると、私たち中高年企業戦士もうかうかしていられないという気持ちになってきます。

葛西選手ほどの年齢になれば当然、若い頃のような体力はないわけですが、それを「努力する才能」や「工夫する才能」「豊かな経験」によって補ってきたからこそ、若い選手にして素晴らしい成果を挙げることができるのです。

低下したことを自覚し、プラスアルファで補う

では、私たち企業戦士はどうかというと、ある調査によると、一般的に人間は35歳ぐらいから、いわゆる技術力(専門能力)は落ちてくるといわれています。私の経験からも、20歳代のピークを100とすれば、40歳ぐらいで50ぐらいまで落ちると感じています。もちろん人によってバラつきはあるわけですが、厄介なのはいくつになっても自分は若い頃と同じ100の技術力を持っていると思い込んでいる人がいることです。

(写真:iStock.com/XiXinXing)

葛西選手に限らず、アスリートでいくつになっても活躍し続ける人は決して「若い頃の力のまま」とは信じていないはずです。若い頃に比べて体力などが落ちているということをしっかりと自覚したうえで、では落ちたものをどう補うか、あるいは身につけた経験値などでその上を行くにはどうすればいいかを懸命に考え、工夫し、努力し続けるからこそいくつになっても成果を挙げることができるのです。

私たちにも同じことがいえます。若い頃に比べて技術力が落ちていくとすれば、高い専門性を維持するためには若い頃の何倍もの勉強が必要になりますし、それでも低下する技術力を補う何かを磨くことが大切なのです。

 

では、何で飛躍するかというと、たとえば「人を巻き込む力」をつけるのです。新規事業などを成功させるためには、自ら目標を掲げ、上司を巻き込み、部下を巻き込むことで初めてうまくいきますし、成果を挙げることで企業から高い評価を得ることもできます。

年をとることで技術力が100から50へと落ちていくとしたら、勉強をすることで50を60に、60を70にと引き上げる努力を重ね、かつ周りを巻き込んでものごとを前に進める人間力などを養えば、若い頃の力を100とすると、もしかしたら110とか、120の力さえ発揮できるかもしれません。

人はいくつになっても努力することでさまざまな力を伸ばしたり、磨くことができます。そういう人は企業にとって「残ってほしい人」となりますし、定年になって企業を離れたとしても、社会にとって「必要とされる人」であり続けることができるのです。

関連書籍

酒巻久『60歳から会社に残れる人、残ってほしい人』

現役でも退職後も「必要な人」でいる方法! 仕事、趣味、人間関係……これからの人生で自分の居場所をつくるために。キヤノン流人間力の鍛え方。 必要とされる人間になるには、学歴や肩書きではなく「人間力」が不可欠。キャノンの現役社長が語る、「必要な人」の生き方とは。

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酒巻久

1940年、栃木県生まれ。67年キヤノン株式会社に入社。VTRの基礎研究、複写機開発、ワープロ開発、総合企画などを経て、96年、常務取締役生産本部長。99年、キヤノン電子株式会社代表取締役社長に就任し、環境経営の徹底で高収益企業へと成長させる。『キヤノンの仕事術』(祥伝社黄金文庫)、『ドラッカーの教えどおり、経営してきました』『リーダーにとって大切なことは、すべて課長時代に学べる』『見抜く力』(すべて朝日新聞出版)など著書多数。

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