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60歳から会社に残れる人、残ってほしい人

2021.03.15 公開 ツイート

趣味を先延ばしする人は仕事も先延ばしする 酒巻久

「終身雇用は崩壊した」と言われて久しい今、60歳を過ぎても会社から必要とされるのはどんな人なのでしょうか。キヤノン電子の代表取締役社長・坂巻久さん著『60歳から会社に残れる人、残ってほしい人』より、中高年からの働き方・生き方のコツをご紹介します。

忙しい理由を分析してみる

「定年になったら旅行もしたいし、本も読みたいし、ゴルフもゆっくり楽しみたいなあ」と定年後の夢を語る人がいます。

たしかに仕事をするということはたくさんの責任を抱え、懸命に努力するべきものですが、「仕事」とこうした「趣味」と呼ばれるものは本当に両立しないものなのでしょうか。

(写真:iStock.com/yaruta)

のちにキヤノンの社長となった山路さんは私にとって忘れることのできない人物です。キヤノンの入社試験の面接を受け、帰ろうとしていた私に「君、よかったら、このあと食事に付き合わないか」と声をかけてくれたのが山路さんです。

当時の山路さんはズームレンズの設計理論(山路理論)で知られる著名な技術者でした。大学の教科書にもその名前が載るほどの山路さんと、食事をしながら「うちへ来ないか」と熱心に誘っていただいたことは、今も忘れられない思い出の一つです。

山路さんの優秀さはもちろん入社前から知っていましたが、入社してからは大変な勉強家であることに圧倒されました。有名な技術者でありながら、おごることなく勉強を続け、社長になってからでさえ帰宅してからの勉強と、土日に図書館にこもっての勉強を欠かすことはありませんでした。

そんな山路さんを見ているだけに、私たちも山路さんに負けないように必死になって勉強をしました。私が知るキヤノンのリーダーたちは、山路さんに限らず、みんな大変な勉強家であり、大変な読書家でした。

優秀な人はそれだけ本を読み、勉強をし続けているからこそ、的確な判断ができるし、いつも頭が整理されているのです。

 

ところが、最近の経営トップや若い管理職の中にはこんなことを平気でいう人がいます。

「そんなことをいったって勉強する暇なんてないよ、忙しくて」

たしかに「忙しい」に嘘はないのでしょうが、はたして「本を読む時間がないほど忙しい」は本当なのでしょうか

企業の経営者、管理者に限らず、若い人も本を読まなくなり、「本を読む暇がない」と言い訳をしています。しかし、実際には「本を読む時間がない」のではなく、「ゲームなど、ほかのことをやっているだけ」なのではないでしょうか。

時間はつくるもの

「忙しい」が口癖の人はとかく仕事に追われるところがあります。目の前の仕事に追われて、やるべき仕事を先延ばしにし、そのうえ勉強をするとか、本を読むこともすべて後回しにしてしまいます。

仕事を先延ばしにする人は、趣味も先延ばしにしてしまうものです。

「定年になって時間ができたら旅行を楽しみたいなあ」

「定年になったらゆっくり本を読んで過ごしたいなあ」

もっともな話に聞こえますが、実際には本を読むことも、旅行をすることも決して特別なことではなく、20代でも30代でも40代でも50代でも60代でも70代でもできることです。

(写真:iStock.com/Pra-chid)

にもかかわらず、あえて「定年になったら」と先延ばしにする人は、仕事を追うのではなく、忙しさに追われ、時間に追われる人なのでしょう。

仕事というのは追われるものではなく、自らつくるものです。同様に本を読んだり、旅行を楽しむ時間も忙しさの中でいくらでもつくることができます。

 

私自身、若い頃から仕事にはいつも全力で取り組んできましたが、同時に山路さんたちに負けないようにたくさんの本も読んできました。旅行も一人で行くだけでなく、機会を見つけては妻とも出かけました。ゴルフにも夢中になりシングルになりましたし、今もスピードゴルフを楽しんでいます。ほかにも音楽も絵も大好きです。

「忙しいのによくそんなにたくさんのことができますね」ともいわれますが、どんなに忙しくても趣味や勉強の時間をつくることはできますし、むしろ仕事を完全にやめてしまい、あり余るほどの時間ができたなら、私自身はあえて旅行には行かないのではないかと思っています。

忙しいからこそ旅行など、仕事を離れる時間が貴重だし、価値を持つのです。仕事を先延ばしにする人は趣味も先延ばしにします。あれこれ言い訳を考え、「できない理由」を探す人は、仕事でも趣味でも「できない理由」ばかりを口にします。仕事も趣味も今この瞬間に全力で取り組むことです。そうすれば、定年後とか、余生とか関係なしにいつでも楽しく全力で生きることができるのです。

関連書籍

酒巻久『60歳から会社に残れる人、残ってほしい人』

現役でも退職後も「必要な人」でいる方法! 仕事、趣味、人間関係……これからの人生で自分の居場所をつくるために。キヤノン流人間力の鍛え方。 必要とされる人間になるには、学歴や肩書きではなく「人間力」が不可欠。キャノンの現役社長が語る、「必要な人」の生き方とは。

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酒巻久

1940年、栃木県生まれ。67年キヤノン株式会社に入社。VTRの基礎研究、複写機開発、ワープロ開発、総合企画などを経て、96年、常務取締役生産本部長。99年、キヤノン電子株式会社代表取締役社長に就任し、環境経営の徹底で高収益企業へと成長させる。『キヤノンの仕事術』(祥伝社黄金文庫)、『ドラッカーの教えどおり、経営してきました』『リーダーにとって大切なことは、すべて課長時代に学べる』『見抜く力』(すべて朝日新聞出版)など著書多数。

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