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セックス依存症

2021.02.13 更新 ツイート

AV男優・森林原人と語る そもそも「性欲」とはなにか?  斉藤章佳

一般人より厳格な撮影現場の「性的同意」

斉藤 森林さんは折に触れて「AVはファンタジーだ」ということを発信されてますよね。

森林 はい。僕が性教育に取り組み始めたのが今から3~4年前なのですが、そのタイミングで、アダルトビデオが社会や生活全体にどのような影響を与えているのかを真剣に考えるようになりました。

僕と同じように「AVはファンタジーだ」と公の場で発信している男優のなかには、レイプを扱った作品は社会悪だから一切出演しないという人もいるんです。

もちろんその考えはもっともですが、僕個人は、レイプは悪と断定した上で、作品の中でレイプを描く自由を残しておきたいと考えています。表現の自由ですべてが認められるべきだとまでは思わないのですが、創作物の中では多くの自由を認め、その代わりゾーニングをもっと厳しくするのがいいのではないかと。

でもゾーニングが徹底できていない現状では、18歳未満の子どもでもAVを見れる。だからこそ、「レイプ作品のAVはファンタジーなんだよ、嫌がっているのに感じていくのは演技だよ、本気で望んでる女性はいないからね」と周知していくことは、AVを制作する者たちの責務ではないかと思うんです。

斉藤 実際のAVの撮影現場では、撮影前にかなり慎重に女優さんの同意を得て、ケアも念入りに行われていると聞いたことがあります。

森林 アクション映画でも、綿密な打ち合わせを重ねて撮影するし、場合によっては命綱をつけたり、CGを使うこともある。これはAVの撮影現場でも同じです。僕たちも何度も出演の意志(同意)を確認して、性感染症の検査表を見せ合って、コンドームを着けて撮影する。

出演者のなかには「性病検査をしてない一般の人とは怖くてセックスできない」と言う人もいます。だから、「人と人が粘膜をくっつける行為をするには、ものすごく厳密な手順や同意が必要なんだよ」ということを、現場にいる僕らが伝えないといけないと思うんです。

斉藤 ファンタジーを描く際、現場ではそれほどまでに厳密な手順を踏んでいることを視聴者に届けるのが森林さんたちの役割だと。

森林 僕のような発言を良しとしない人も業界にはいます。見てる人がしらけるからやめろと。でもプロなら、本来は見ている人が「ガチなんじゃないか」って勘違いするぐらいの演技や演出を目指すべきじゃないかと思うんです。

だって、女優さんに嫌がる演技を上手にさせるより、リアルに嫌がらせたほうが簡単だから。でもそれでは女優さんの負担が心身ともに大きいし、そんなことはできません。

撮影現場では、右手で音が大きく響くけど痛みが少ないビンタをしながら、カメラに見えない左手では手をつないで、小声で「大丈夫?」と確認している……というのが現実です。

斉藤 厳密にリスク管理されているなかで、リアルに嫌がる演技をするほうが難易度は高まりますよね。

性的同意については法の世界でも動きがあります。法務省では、2020年6月から性犯罪の規定の見直しに関する刑事法検討会が開催されていますが、そこでは同意のない性行為はすべて性暴力とするよう、多くの人が声を上げています。

すでにイギリスやスウェーデンなど諸外国では、本人の同意がなかった時点で性犯罪の構成要件が成立する法律になっています。

斉藤章佳さん

今、まさに性的同意という考え方が加速度的に「常識」となってきている。そうなると、たとえファンタジーといえども、AV業界における性の捉え方や描写も変わらざるをえないと思います。

森林 まさにそのとおりですね。ちなみに性的同意の流れでいえば、今僕が提唱しているのは「遊びとしてのセックス」という考え方です。「遊び」といっても相手を騙したり、たぶらかすということではなく、子どものころにした鬼ごっこやかくれんぼ、けいどろのような、純粋な意味での「遊び」です。

一緒に遊ぶ者は対等で、立場の変換が簡単で、一緒に楽しみ、遊びの誘いに応えるのも途中でやめるのも各自の自由。そこには自他の尊重があって、だから安心安全に遊びという行為に夢中になれる。

かくれんぼなら、「この公園の中だけで隠れよう」という最低限のルールがありますよね。もしそこで本気で隠れようとして、どこか違う街に行ってしまったら見つからないし、遊びとして楽しくない。セックスも同じように、最低限のルールとしての性的同意を踏まえた上で「遊び」を共犯的に楽しもうよ、というものです。

もちろんセックス依存症の方は、セックスをやめたくてもやめられない状態で苦しんでいるという明白な事実があり、かつての僕のようにセックスを呪っている人もいるかもしれません。その方たちにこの概念がどこまで通用するかわかりませんが、性的同意の概念が持ち込まれることでセックスが堅苦しくなるのではなく、より安全に、純粋な楽しみのひとつとして存在し続けてほしいと思っています。

*   *   *

*この対談の全編は『セックス依存症』(幻冬舎新書)に掲載しています。

 

森林原人(もりばやし・げんじん)

1979年生まれ。中学受験で麻布、栄光、筑駒、ラ・サールすべてに合格し、筑駒に入学するも勉学に挫折。一浪して専修大学文学部心理学科に進学後、1999年、20歳でAV男優デビュー。出演作品は1万本を超え、経験人数は1万人以上。
著書に『セックス幸福論』(講談社文庫)、『イケるSEX』(扶桑社)、『「人生最高のセックス」でもっと気持ちよくなる』(KADOKAWA)がある。性と向き合い、性を知り、性を楽しむためのサイト「リビドーリブ」とオンラインサロン「森林公園」を運営中。
Twitter: @AVmoribayashi

 

〈*1〉一盗二婢三妾四妓五妻……盗は人妻・他人の彼女、婢は下女・家政婦・使用人、妾は愛人、妓は遊女・娼婦・売春婦、妻は正妻の意で、不道徳の度合いが高いほど興奮することを示す

〈*2〉日本は世界的に児童ポルノ大国といわれているが、同ランキングの「ロリ」の検索順位は23位と低い。これは同サイト運営の方針で、あらかじめ伏せ字になっていることが影響しているともいわれる。なお「痴漢」というワードも、現在は同サイトで検索できなくなっている
・FANZA REPORT 2018 https://special.dmm.co.jp/fanza/feed/news/fanza-report-2018

関連書籍

斉藤章佳『セックス依存症』

社会的、経済的な損失を何度も被りながら、強迫的な性行動を繰り返してしまうセックス依存症。「セックス中毒」などと偏見を持たれがちだが、実は性欲だけの問題ではない。 脳の報酬系に機能不全が生じて「やめたくても、やめられない」状態に陥ることに加え、支配欲や承認欲求、過去の性被害や刷り込まれた性的嫌悪、「経験人数が多いほうが偉い」といった男らしさの呪いなどが深く関わっているのだ。 2000人以上の性依存症者と向き合ってきた専門家が、実例をもとにセックス依存症の実態に迫り、その背景にある社会問題を解き明かす。

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斉藤章佳

精神保健福祉士・社会福祉士。大船榎本クリニック精神保健福祉部長。1979年生まれ。大学卒業後、アジア最大規模といわれる依存症回復施設である榎本クリニックでソーシャルワーカーとして、アルコール依存症を中心にギャンブル・薬物依存、摂食障害、性犯罪、児童虐待、DV、クレプトマニア(窃盗症)などあらゆるアディクション問題に携わる。その後、2020年4月から現職。専門は加害者臨床。著書に『男が痴漢になる理由』『万引き依存症』(ともにイースト・プレス)、『「小児性愛」という病』(ブックマン社)、『しくじらない飲み方』(集英社)、監修に漫画『セックス依存症になりました。』(津島隆太作、集英社)がある。

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