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自分の頭で考える日本の論点

2020.12.04 更新 ツイート

「タテ・ヨコ・算数で考える」が基本中の基本 出口治明

先の見えないコロナ時代。あふれる情報に振り回されず、自分の頭で考え、悔いのない選択をしたい――そのための強力な武器になるのが、出口治明さんの新刊『自分の頭で考える日本の論点』です。巻末付録の「自分で考えるための10のヒント」から、世界を正しく知り正しく判断するための基本中の基本となる考え方、「①タテ・ヨコで考える」「②算数、すなわち数字・ファクト・ロジックで考える」を抜粋してお届けします。

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(写真:iStock.com/Trifonov_Evgeniy)

「自分の頭で考えるのが何よりも大事」とよくいわれますが、そのような力はどうしたら身につけることができるのでしょうか。

皆さんからよくそんな質問を受けます。

それは、自分の周囲や日本や世界で起きている具体的な問題について、本書でこれまで述べてきたように、自分の言葉で腹落ちするまで考えて自分なりにジャッジするというトレーニングを、日頃から積み重ねていくことに尽きると思います。

ただ、そうやって考える際の方法、補助線としてアドバイスできることはいくつかありますので、本書の最後に、10のポイントにまとめてみました。

これも、①と②の、〈「タテ・ヨコ」「算数」で考える〉はとくに重要で、ぜひすべての人に心がけてほしいことですが、それを除けば、「すべてこうしないといけない」と押しつけるつもりはまったくありません。

考えるための1つのヒントとして取り入れてもらえるものがあれば幸いです。

①タテ・ヨコで考える

「はじめに」でも述べたように、多くの人々の間で意見が分かれるような問題を考える際には、タテ=時間軸(歴史軸)、ヨコ=空間軸(世界軸)で立体的に考えるクセをつけることが役に立ちます。この二次元で考えると、物事の実態や本質がより明確に見えてきます。

たとえば、戦後の日本の社会をどう評価するか。僕は、この75年間はきわめて特殊で幸せな時代だったと考えていますが、現代の日本だけを見ていても、その意味はよくわからないと思います。

そこで、「タテ」の視点を1000年単位で伸ばし、「ヨコ」の視点をお隣の中国に向けてみましょう。中国は4000年もの長い歴史を持ちますが、その間、平和で豊かだった時代(盛世)は、わずか4回しかありません。

最初は文景の治と呼ばれる時代(紀元前180~紀元前141年)、次が貞観の治(627~649年)、次が開元の治(713~741年)、最後が清の康熙帝、雍正帝の時代(1661~1735年)です(乾隆帝の時代の前半を含める考え方もあります)。この4回の盛世を合計してもわずか200年足らずです。

それに比べると、75年も平和で豊かな時代を享受している戦後の日本は、奇跡的な幸運に恵まれてきたことがわかります。

そもそも人間は猪八戒のように愚かで怠け者の存在で、ホモ・サピエンスという種が誕生してからこの20万年間、脳はほとんど進化していません。ひとりひとりの知恵にはしょせん限界があります。しかし、「タテ」の発想で先人がくり返した試行錯誤から学び、「ヨコ」の発想で世界の人々の考え方や実践を学べば、自分1人の能力ではたどりつけない、よりよい方法や正しい答えに行き着くことができると思います。

②算数、すなわち数字・ファクト・ロジックで考える

議論をしていて自分の意見を述べたときに、「詰めが甘い」などと指摘されたことはないでしょうか。そのように指摘されるときは、たいてい、「数字(データ、エビデンス)・ファクト(事実)・ロジック(論理、理屈)」という3つの要素のいずれかが欠けている場合だと思います。この3つが欠けていると、曖昧で説得力のない主張しかできません。

また、「数字・ファクト・ロジック」を使うと、物事のまったく違う一面が見えてくることがあります。その一例として、「源平の戦い」をどう見るかで考えてみましょう。

一般的には、平清盛が贅沢三昧に耽り、その間に東国で源氏が臥薪嘗胆で実力を養い、やがて源義経という軍事の天才が出現して、ついには平家を滅ぼした――というストーリーになっています。その後、義経が非業の最期を遂げて悲劇の英雄になったこともあり、物語としてもたいへん面白いものだといえるでしょう。

僕もそのように思っていたのですが、わが国の気象について書かれた本を読んでいて、ある「ファクト」を知りました。源平の時代には、西日本で長く天候不順が続いていたのです。そのため当時の西日本は農作物が深刻な不作に陥り、大規模な飢饉に襲われていたといいます。

この「ファクト」からは、次のような新説が導かれます。平家は西日本を地盤としていたので、飢饉が続けば兵糧面で大きなダメージを受けます。兵糧が不十分であれば、当然のことながら戦力はダウンします。文字通り「腹が減っては戦ができぬ」というわけで、これが平家滅亡の大きな原因になったのではないか、というわけです。

西日本で長く続いた気候不順は、「数字」で示されています。それによって飢饉が発生したという「ファクト」に基づいて考えると、窮乏に陥った平家は戦力ダウンして源氏に滅ぼされる……という「ロジック」が導かれる。新たに登場した平家滅亡飢饉説は、まさに「数字・ファクト・ロジック」の3要素によって合理的に説明がつきます。ちなみに付言すると、源頼朝につき従った武士の大半は、北条氏を筆頭とした坂東平氏です。源平合戦の実体は、坂東平氏対清盛一統の伊勢平氏の争いだったのです。

関連書籍

出口治明『自分の頭で考える日本の論点』

世界を正しく知って、正しく判断できる人になろう! 玉石混淆の情報があふれ、専門家の間でも意見が分かれる問題ばかりの現代社会。これらを自分で判断し、悔いのない選択ができるようになるには、どうしたらいいのか。ベンチャー企業の創業者であり大学学長、そして無類の読書家である著者が、私たちが直面する重要な22の論点を解説しながら、自分はどう判断するかの思考プロセスを開陳。先の見えない時代を生きるのに役立つ知識が身につき、本物の思考力も鍛えられる、一石二鳥の書。

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自分の頭で考える日本の論点

玉石混淆の情報があふれ、専門家の間でも意見が分かれる問題ばかりの現代社会。これらを自分で判断し、悔いのない選択ができるようになるには、どうしたらいいのか。ベンチャー企業の創業者であり大学学長、そして無類の読書家である著者が、私たちが直面する重要な22の論点を解説しながら、自分はどう判断するかの思考プロセスを開陳。先の見えない時代を生きるのに役立つ知識が身につき、本物の思考力も鍛えられる、一石二鳥の書。

 

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出口治明

1948年、三重県生まれ。立命館アジア太平洋大学(APU)学長。ライフネット生命創業者。京都大学法学部卒。1972年、日本生命に入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て2006年に退社。同年、ネットライフ企画を設立、代表取締役社長に就任。2008年に免許を得てライフネット生命と社名を変更、2012年上場。社長・会長を10年務めたのち、2018年より現職。『人生を面白くする 本物の教養』(幻冬舎新書)、『全世界史(上・下)』(新潮文庫)、『人類5000年史(I~III)』(ちくま新書)、『座右の書『貞観政要』』(角川新書)、『哲学と宗教全史』(ダイヤモンド社)、『還暦からの底力』(講談社現代新書)など著書多数。

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