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ゴルフは名言でうまくなる

2020.10.11 更新 ツイート

第151回

「ゴルフは3回も楽しめるゲームだ。すなわちコースに行くまで、プレー中、プレー後である。ただし内容は期待、絶望、後悔の順に変化する」――アーサー・バルフォア 岡上貞夫

練習場では勇猛なライオン、コースに出ると臆病者のニワトリ

イギリスの首相を務めた初代バルフォア伯爵が大のゴルフ好きであったことで、ゴルフはイギリスの社交界において紳士淑女のスポーツとしての地位を得た。

バルフォアはゴルフに関する名言を多く残したが、これはかなり諧謔(かいぎゃく)と皮肉に満ちた言葉だ。1894年にはロイヤル・アンド・エンシェント・ゴルフ・クラブ・オブ・セント・アンドリュースのキャプテンとなり、ハンディは5の腕前だった。そんな彼にしてプレー中には絶望を味わわせるほど、ゴルフは人に試練を与えるもののようだ。

 

筋力の強さが勝敗を分けるタイプのスポーツでは、このような絶望をプレー中に味わうことはないだろうと思う。ともすれば弱さが出そうになる自らの心理に立ち向かい、克服しないといいプレーができないという点では、ゴルフは他のスポーツとくらべても比類なき自己との闘いのスポーツといえるだろう。

バルフォアは、ゴルフは生きるために必要な食事や睡眠に匹敵するとまで言っている。

「筋肉と頭脳がかくも融合されたゲームは他にない。私にとって重要なものは食事、睡眠、ゴルフである」

さて、ハンディ5の彼でさえ、コースに行くまでは期待を膨らませていながら、プレー中には絶望し、プレー後には後悔をさせられてしまう要因は何か。それは、人間が危険を回避するために持っている本能ともいえる「不安」ではないだろうか。

「多くの人が、練習場ではライオン、コースに出ると臆病者のニワトリになる」(トーマス・サイモン)

練習場を覗いてみると、たしかに多くの人がのびのびと果敢にボールを打っており、スウィングもよどみなく球筋もいい。一見どなたもシングル・プレーヤーなのではないかと思えるほどだ。

不安を感じるからこそいいパフォーマンスができる

練習場でいいタマが打てていれば、コースでもいい結果が得られるのではないかと期待が膨らむだろう。しかし……。

「ゴルフとは、朝に自信を与えるかと思えば、夕べには自信を失わしめるゲームである」(ハリー・バードン)

この名手バードンの言葉のとおり、コースの帰りには自信を失って、ションボリと帰途につくプレーヤーは多いものだ。それはコースでのプレー中、サイモンの言う「臆病者のニワトリ」になっていたからではないだろうか?

ティーに立てばOBや林が目に入って不安になる。グリーンを見渡せばそれをガードするバンカーや池が目についてしかたない。アプローチではトップやザックリのミスが頭に浮かぶ。パッティングでは読みどおりに曲がるのかどうかと疑心暗鬼になる。

このように不安のタネは尽きず、練習場のようにのびのびとスウィングやストロークできなくなり、不安を感じたとおりのミスになるものだ。

「いかなる局面でも、自分を支えてくれる心の余裕は、最終的には自分が積んだ練習の量から生まれてくるものである」(中部銀次郎)

銀次郎さんの言うように、相当量の練習を積めば、大きなミスショットは少なくなるから、たしかに不安は軽減されるとは思う。しかし、不安がまったくなくなることもないだろう。

なぜならば、人類は不安を感じることで、自然界での危険を回避し、生き延びてきたからだ。だからどんなに順風満帆でうまくいっているときでも、「こんな状態が続くわけがない」「もう、そろそろ崩れ出すんじゃないか」と、何かしらの不安を感じてしまい、まったく不安がなくなることはないのだ。

「ゴルフで油断が生まれる最も危険な瞬間は、万事が順調に進行しているときである」(ジーン・サラゼン)

サラゼンもこのような名言を残して、ゴルフでは順調なときほど油断しないようにと警鐘を鳴らしている。これも、よいパフォーマンスができているときでさえ、不安がつきまとうことを表現しているといえるだろう。

プレー中、「不安」をどうセルフコントロールするか

逆に考えて、もし不安がゼロになって「自分は完璧だ、なんの問題もない」と安心しきってしまったとしたらどうだろう。

今の好調さを維持しようとする気持ちもなくなり、さらに上を目指そうとする努力もする気がなくなってしまうのではないだろうか。つまり、不安があるからこそ、人々は前へ進もうと努力できるのだ。

不安が尽きない以上、これとはうまく付き合っていくしかない。では、不安に対してどう対応すればうまくセルフコントロールができるのだろうか。

不安を持つことは「悪いこと」と思いがちだ。しかし、前述したように人は不安を感じることで前進できるのだから、「悪いこと」ではなく「良いこと」と認識を改めることだ。プレー中に不安を感じたら、まずは「おっ、俺の危険回避本能は正常に働いているな」とポジティブに捉えたい。

米国のある心理学者は「人は“今”に最も不安を感じるように適応してきた」と言っており、不安を感じるのは当たり前のことと受け入れるのが肝要なのだ。

次に、不安を感じたら「これは前進するためのモチベーションになる」と考えたい。実はプレー中には、不安がモチベーションに変わり、パフォーマンスを上げているケースが時折あるからだ。

また不安になりやすい人は、成長速度が速いともいわれている。ならば、不安は成長や結果を出すためのエネルギーになっていると考えて問題あるまい。

プレー中のゴルファーには、目から入ってくる情報、耳から入ってくる情報、肌で感じる情報など、あらゆる角度から不安が持ち込まれてくる。しかし、次のように不安という感情を整理して認識すれば、うまく対応できるはずだ。

●不安を感じるのはいいことで、人としてむしろ正常なことと受け入れる
●不安があるからこそモチベーションが上がると認識する
●不安はいい結果を生むエネルギーにもなると考える
●不安を克服して、いいショットが打てたら自分は成長できると前向きになる

プロゴルファーのメンタルコーチも同じような指導をしているようだ。プロの試合は緊迫したなかで行われているから、不安の量も質もかなりのものがあるはずだ。それでも彼らがいいショットやパットをできるのは、練習量もさることながら、不安をうまくセルフコントロールできているからに違いない。

一般のゴルファーは、プロのようにはコントロールできないとしても、不安に対して心の準備ができているといないでは、プレーぶりがずいぶん変わると思う。

不安を払拭できるほどの練習量をこなせない一般ゴルファーが、練習量を増やして不安を軽減しようとするのは、お金も時間もないので現実的ではない。

それよりも、不安に対する考え方をしっかり持つことで、心の準備をすることがいいプレーにつながるのではないだろうか。

今回のまとめ

1. 練習場ではいいショットが出ていても、コースに出ると同じようにスウィングできなくなるのは、不安を感じているから

2. 不安は練習量で軽減することもできなくはないが、一般ゴルファーにはそれだけのお金と時間をかけられない

3. 不安を感じることは「悪いこと」ではなく、人の本能からして当然の「良いこと」と認識を改め、むしろいいパフォーマンスをするエネルギーになると前向きに考えよう。

参考資料:
メンタルコーチ池努「『右OBに行きそうだなあ』と思う気持ちをポジティブ変換! 不安をモチベーションに変える方法」みんなのゴルフダイジェスト
https://www.golfdigest-minna.jp/_ct/17397248 2020年10月9日閲覧

メンタルコーチ池努「不安は行動のエネルギー! メンタルコーチが教えてくれた、ゴルフに付き物『不安』との上手な付き合い方」みんなのゴルフダイジェスト
https://www.golfdigest-minna.jp/_ct/17395277 2020年10月9日閲覧

関連書籍

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ゴルフは名言でうまくなる

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岡上貞夫

1954年生まれ。千葉県在住。ゴルフエスプリ愛好家。フリーライター。鎌ヶ谷カントリークラブ会員。1977年、慶應義塾大学法学部法律学科卒業。大学入学時は学生運動による封鎖でキャンパスに入れず、時間を持て余して体育会ゴルフ部に入部。ゴルフの持つかすかな狂気にハマる。卒業後はサラリーマンになり、ほとんど練習できない月イチゴルファーだったが、レッスン書ではなくゴルフ名言集やゴルフの歴史、エスプリを書いたエッセイなどを好んで読んだことにより、40年以上シングルハンディを維持している。初の著書『ゴルフは名言でうまくなる』(幻冬舎新書)が好評発売中。

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