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カレー沢薫の廃人日記 ~オタク沼地獄~

2020.09.12 更新 ツイート

実写デビルマン古参ファンとして駄目なプライドが出た日カレー沢薫

昨日は、ニコニコ動画で「映画デビルマン」が3ループ再生されたり、「映画キャシャーン」の主演がビッグ麻で逮捕されたりと、好事家からすればまさに「盆とハルマゲドン」な日であり、それ以外の人にとってはただの火曜であった。

ちなみに、キャシャーンの方は三次元の中では好きな方だったので無念である、だが何故か驚きはない。
この「推しがあまりお葉っぱ様で捕まったりしない」というのは二次元が三次元より抜きんでている点の1つである。

もちろん二次元には殺人など、草より重い罪を犯している奴も多いし、「明日などいらない」という理由で、もっとヤバい薬をキメてムキムキになっている奴もいる。

しかし「未成年淫行」とか「泥酔してタクシーの運さんを殴る」など「残念」としか言いようがない罪で捕まるキャラはあまりいないのだ。

逆に毎瞬新規絵を出して来る三次元と違い、二次元には「止め絵3枚しかない」という欠点があるが、その分「動きが完全にコントロールできる」という利点がある。
例え「悪人」という設定でも、乙女ゲーのキャラであれば、その暴力性は「健康な自分に歯向かう成人男子」のみに向かうようになっており、間違っても妊婦の腹を蹴ったりしないのである。

片や三次元は「イクメンキャラ」という設定なのに、不倫をしたりと、どういうクソプラミングをしたらそうなるんだ、という不具合が多い。

ただ世の中には「悪人設定キャラの善人ムーブが地雷」という人もおり、例え弱者相手にでも悪人キャラが手を差し伸べるような描写があったら「悪いが解釈違いだ」と本を閉じてスペースを去ってしまう人間もいるというのだから、性癖というのは複雑である。

話を映画デビルマンに戻すが、昨夜のデビルマン3ループ再生会に私は参加しなかった。
理由は「アマプラでいつでも見られる」「今年すでに10回は見ている」「あくまで映画デビルマンを楽しみたい、弾幕で画面が見えなくなってしまうのは違う」など色々もっともらしい理由はあるのだが「古参としての駄目なプライドが出た」ことも正直否定できない。

おそらく「映画デビルマン古参」を名乗っているのは私だけのような気もするが、オタとしても中途半端で飽きっぽい私が唯一、歴が長いと言い切れるのが「映画デビルマン」であり、この仕事をはじめてからも隙あらば映画デビルマンの話をしてきた。

それを考えれば、映画デビルマンが何故か3回も再生され、それが盛り上がったと言うのは「今まで応援してきたかいがあった」というものであり、自分も会場の一番後ろで腕組みして、足でリズムを刻みながら、時々頷くという形で参加するべきだったと思う。

それも十分ダメ古参仕草ではあるが、昨日の私には、メンバーよりも客の人数の方が少ない時代から応援していたインディーズバンドがメジャーデビューした途端「あいつらは変わった」と言って、メジャー一発目のライブにはいかない面倒くさすぎるファン心理があったように思う。

自分の推しているコンテンツを長続きさせるには、金を投入するしかないが己の財力には限界がある、よって己の布教により、沼の構成員を増やし集金先を増やそうとするのだ。

もはや自分が儲からないマルチみたいなものだが、マルチと違い集金結果で推しに新規ボイスがついたりして、末端の構成員も平等に死ぬことができるという点では、とても良いシステムである。

しかし、自分が応援していた推しやコンテンツが人気になると嬉しい気持ちがある一方で「俺は売れる前から知っていた」「推しの良さを真に理解しているのは自分だけ」というような、新規に対するマウンティング心が生まれてしまうこともある。

また最初から「同担拒否」を宣言する人もいるように、全くない人もいるかもしれないが、推しに対する「独占欲」というのは誰しも大なり小なり持っていたりするものである。

そういう心があることは仕方がない、オタクの人生は「モヤ」と「モニョ」の連続である。
しかし、それを表に出すのは良くないし、他のファンに「自分の方がファンとして優れている」ことを誇示するのは本当に良くない。

少ない小遣いで推しのアクキーを買ってナップザックにつけている中学生に己の、カバンよりもアクキーの方が重量のある痛バッグを見せつけて「このぐらいしないとファンとは言えない」と言っているのを見て「さすが」と思うだろうか、バッグよりも本人が激痛だし「何て嫌な界隈なんだ……」と、業界全体の空気が悪くなってしまう。

自分はこれだけ推しの事が好きで、推しにこれだけ金と時間を使っている、というのは推しにだけ伝わっていれば良いはずだ、少なくとも金を使っていれば「利益」という形で届いているはずである、なぜ周りのファンにまでそれをわからせる必要があるだろうか。

ファン活動というのは「自己満足」できれば良いはずなのだ。

誰に見せるわけでもない布面積が狭い割には高級なパンツを履いているだけで気分アゲアゲな人がいるように、痛バッグが肩に食い込む痛みが心地いい、やっぱりアクキーと缶バッチ1個の時とは「重み」が違うと悦に入ったり、実際そうかどうかはわからなくても「俺の課金で推しの声帯が震えた!」と思えればそれで良いはずなのだ。

逆に、他に自分がどれだけファンとしてすごいか誇示しなければ気が済まないというのは、推しの存在とファン活動だけでは満足できていないということだ。
もっと他人にマウンティングしなくても満足できる趣味を見つけた方が良いかも知れない。

よって私も「自分の布教活動が実を結んで、デビルマンイベントが盛り上がった」と自己満足しとけばよいのだ。

これからは「俺は公開当時、劇場1800円満額払って映画デビルマン見てっから」というマウントをとるのは止めようと思う。

 

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カレー沢薫『カレー沢薫の廃人日記 〜オタク沼地獄〜』

だが、未だにガチャから学ぶことは多い、去年末、本コラムをまとめた『カレー沢薫の廃人日記~オタク沼地獄~』という本を出版させてもらった。 そのキャッチコピーは「人生で大事なことは、みんなガチャから教わった」なのだが、改めてこのコピーに嘘偽りはなかったと確信している、もはやガチャは人生の縮図と言っても過言ではない。

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カレー沢薫

漫画家。エッセイスト。「コミック・モーニング」連載のネコ漫画『クレムリン』(全7巻・モーニングKC)でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『もっと負ける技術』『負ける言葉365』(ともに講談社文庫)、『ブスの本懐』(太田出版)がある。

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