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老いて、自由になる。

2020.09.12 公開 ツイート

私たちの命は永遠ではない。今こうして生きていること自体、当然のことではありません。 平井正修

死について考えると、どうしても恐ろしいし、怯えてしまいます。
しかし、そもそも、命とはなんでしょうか?

禅僧・平井正修著の新刊『老いて、自由になる。 智慧と安らぎを生む「禅」のある生活』に学んでみましょう。

*   *   *

遠ざかっていただけの「本来」
──私たちの命は永遠ではない

SARS、MERSなど、これまでも何度か世界的な疫病はあったものの、日本は大きな被害を受けずにきました。しかし、今回の新型コロナウイルスはそうはいきませんでした。

世界各地で、感染者数や死亡者数が爆発的に増えました。日本は比較的(第一波においては)少ないと言われているものの、日本人がもともと持っている清潔な生活環境や、優れた医療制度をもってしても、守れなかった命がたくさんありました。そのことに衝撃を受けている読者もいることでしょう。

私たちの命は永遠ではなく、人は必ず死ぬ-- 。それは誰もが頭では理解しています。しかし、「こんな形ではないはずだ」という動揺が、人々の間に広がっていったように思います。

(写真:iStock.com/ mykeyruna)

しばらく「確たる治療法がない」「治験段階の薬もあるが、自分がそれを投与してもらえるかもわからない」「そもそも、検査自体を受けられない人もいるようだ」といった状況であったため、不明瞭で不平等な対応への不安感が、人々の恐怖を増幅しました。

現代の日本人にとって、新型コロナウイルスの蔓延および、それに対する国や国民の無力さは受け入れがたく、特別で例外的で、まさに想定外の出来事となりました。

しかし、あえて言えば、これが、本来の形です

こういうことは地球上で繰り返し起きていて、今回もそうだっただけです。

疫病だけでなく、自然災害でも、私たちは簡単に命を落とします。生まれたばかりの赤ちゃんや、結婚したばかりの伴侶を一瞬にして失ってしまう人が、今この瞬間も地球上にたくさん存在します。

同じ列車事故に巻き込まれても、かすり傷で済む人と、重篤な後遺症を負う人がいます。私も、昨日まで元気だった友人を交通事故で亡くした経験があります。

こうしたことを、人は「運」という言葉で表現しますが、おそらく「定め」なのだと思います。

もちろん私は、「だから絶望せよ」と言いたいのではありません。

命とは、もともとそういうものだということです。

戦争中は、誰もがもっと死を身近に感じていたと思います。地震や台風などの災害に遭われた人もそうでしょう。あるいは、絶えず飢えていた私たちの遠い祖先は、いつも死と隣り合わせで暮らしていたはずです。

私たちは、たしかに進化しました。しかし、本来の形はなにも変わりません。

私たちは一つの保証もない中で生きています。今こうして生きているのは、当然のことではないのです。

平井正修『老いて、自由になる。 智慧と安らぎを生む「禅」のある生活}』

長生きも不安、死も不安――。 「散る」を知り、心は豊かになります。 残りの人生を笑顔で過ごすために、お釈迦様の“最期のお経《遺教経》"から学ぶ8つのこと。

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老いて、自由になる。

長生きも不安、死も不安――。
しかし、「散る」を知り、心は豊かになります。
残りの人生を笑顔で過ごすために、お釈迦様の“最期のお経《遺教経》"から学びましょう。

・持ちすぎない――「小欲(しょうよく)」
・満足は、モノや地位でなく、自分の「内」に持つ――「知(ち)足(そく)」
・自分の心と距離を取り、自分を客観的に眺める――「遠離(おんり)」
・頑張りすぎず、地道に続ける――「精進(しょうじん)」
・純真さ、素直さを忘れない――「不忘(ふもう)念(ねん)」
・世の中には思いもよらないことが起こると知る――「禅定(ぜんじょう)」
・目の前のものをよく観察し、自分の頭で考える――「智慧(ちえ)」
・しゃべりすぎない――「不戯論(ふけろん)」

「心を調える」学びは、一生、必要です。

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平井正修

臨済宗国泰寺派全生庵住職。学習院大学法学部政治学科卒業。一九九〇年静岡県三島市龍澤寺専門道場入山。二〇〇一年同道場下山。二〇〇二年より中曽根元首相や安倍元首相などが参禅する全生庵の第七世住職に就任。全生庵にて坐禅会、写経会を開催。二〇一六年より日本大学危機管理学部客員教授。二〇一八年より大学院大学至善館特任教授。臨済宗国泰寺派教学部長。『心がみるみる晴れる 坐禅のすすめ』『花のように、生きる。』『「見えないもの」を大切に生きる。』『老いて、自由になる。』(以上すべて幻冬舎)、『悩むことは生きること 大人のための仏教塾』(幻冬舎新書)、『山岡鉄舟修養訓』(致知出版社)、『忘れる力』(三笠書房)、『お坊さんにならう こころが調う 朝・昼・夜の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『三つの毒を捨てなさい』(KADOKAWA)など著書多数。

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