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貧乏国ニッポン

2020.06.20 公開 ポスト

コロナ不況でさらに窮地 世界から取り残される日本経済加谷珪一(経済評論家)

戦後最悪ともいわれる、新型コロナウイルス感染拡大による景気後退。不透明な社会情勢が続くなか、実はコロナ以前から日本は「貧しく、住みにくい国」になっていました。その衝撃の現実をデータで示した『貧乏国ニッポン ますます転落する国でどう生きるか』(加谷珪一氏著、幻冬舎新書)が発売後、4刷目の重版となり、反響を呼んでいます。

この30年間で日本がどう世界から取り残され、コロナで私達の生活はどう変わり、どう対処すればよいのか。内容を少しご紹介いたします。

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日本で高所得の「年収1400万円」、米国では低所得

2020年に入って本格化した新型コロナウイルスによる感染は、弱体化していた日本経済にさらに大きな打撃を与えました。政府は当初、個人に対する所得補償に極めて消極的だったことから、多くの国民がその対応に失望しました。年収7万5000ドル(約825万円)以下の全国民に対して、大人1人あたり最大1200ドル(夫婦と子ども4人家族の場合3400ドル)を、ほぼ無条件に振り込んだ米国や、フリーランスらに対して数日で数十万円を給付したドイツなど、諸外国の対策が報じられるたびに、ため息をついた人も多かったことでしょう。

(写真:iStock.com/AntonioGuillem)

しかしながら、米国政府が支援対象を年収825万円以下に設定したのは、あらゆる階層の国民に支援するという意図からではありません。年収825万円を基準にしたのは、米国では年収1000万円の世帯は高所得とは見なされていないからです。米国の支援策は、基本的に所得が低い世帯を対象としたものですが、基準金額が日本と比べてあまりにも高かったことから、日米の豊かさの違いがはからずも露呈してしまったのです。

2019年の年末に日本経済新聞に掲載された「アメリカでは年収1400万円は低所得」という記事がネットで大きな反響を呼びました。これは米住宅都市開発省が行った調査において、サンフランシスコでは年収1400万円の世帯を「低所得」に分類したという話で、日本と諸外国の物や賃金に極めて大きな乖離が生じていると指摘する内容です。実は日本が価格という面で諸外国から完全に取り残されているという話は、海外によく行く人の間では数年前から常識となっていました。

ここ数年、食品やIT機器など、海外依存度が高い製品では、輸入価格の上昇でジワジワと価格が上がっており、一部の人は日本が安く貧乏な国になっている現実について気付き始めています。

先進国の地位から脱落も

こうした中で発生したのが新型コロナウイルスによる世界的な感染拡大です。

この原稿を書いている時点では、まだ終息の兆しは見えていませんが、新型コロナによる経済的影響が長期化するのはほぼ確実という状況です。新型コロナという見えない敵の台頭は、「安い国」になった日本にさらに追い打ちをかける可能性があります。日本が先進各国と比較して賃金が低くなっているにもかかわらず、何とか生活を維持することができたのは、グローバル経済の発達で、さらに安いものを世界から調達できていたからです。私たちが手にしている商品や口にしている食べ物の多くは、グローバルなサプライチェーンを活用して世界最安値で調達されたものであり、これによって安い賃金でも何とか生活水準を保ってきました。

しかし新型コロナの感染拡大はこうしたグローバルなサプライチェーンを直撃しています。近い将来、再び、今回のようなウイルス感染が拡大する可能性があることは否定できません。各国の企業は感染症を大きなリスク要因と見なすはずです。

そうなるとコストよりもリスク回避を優先するようになり、日本の企業も従来のサプライチェーンの大幅な見直しを進める可能性が高いでしょう。

これまでの時代であれば、とにかく安く調達することを最優先し、世界のあらゆる場所に物流網を構築していたわけですが、これからは多少、コストが高くても、シンプルな物流にとどめ、感染症などの拡大に対して抵抗力のあるオペレーションを重視するようになると考えられます。

すると、原材料や部品の調達コストは増大します。最終的には製品の価格上昇という形で消費者の生活に跳ね返ってくることでしょう。

(写真:iStock.com/Ca-ssis)

つまり、コロナ後の社会においては、さらに高い購買力を確保しなければ、豊かな生活を送れなくなる可能性が高まっているのです。これは、賃金を大幅に上げることができなければ、日本経済の貧困化がさらに進み、先進国の地位から脱落してしまう、ということでもあります。

本書は、日本という国が諸外国から見て安い国になってしまった現実と、その原因、そして対処方法について解説する目的で執筆しました。

アジアで仕事を見つけることも視野に

少なくとも現時点では日本が安い国になっているのは事実ですから、こうした状況に負けないためには、諸外国の富をうまく自身に取り組む工夫が必要となります。これからの時代、外国企業への投資はほぼ必須といってよいでしょうし、場合によってはアジア地域で仕事を見つけることも視野に入れた方がよいかもしれません。

物価というのは、その国の経済状況をもっとも的確に反映する指標です。物価についての感度を高めることができれば、それは仕事にも資産形成にもよい影響を与えます。また私たち日本人は今後、どのように行動すべきなのか、あるいは日本経済をどう舵取りすべきなのかについても多くの示唆を与えてくれるでしょう。

関連書籍

加谷珪一『貧乏国ニッポン ますます転落する国でどう生きるか』

新型コロナウイルスの感染拡大で危機に直面する日本経済。政府の経済対策は諸外国と比べて貧弱で、日本の国力の低下ぶりを露呈した。実は、欧米だけでなくアジア諸国と比較しても、日本は賃金も物価も低水準。訪日外国人が増えたのも安いもの目当て、日本が貧しくて「安い国」になっていたからだ。さらに近年は、企業の競争力ほか多方面で国際的な地位も低下していた。新型コロナショックの追い打ちで、いまや先進国としての地位も危うい日本。国は、個人は、何をすべきか? データで示す衝撃の現実と生き残りのための提言。

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貧乏国ニッポン

戦後最悪ともいわれる、新型コロナウイルス感染拡大による景気後退。不透明な社会情勢が続くなか、実はコロナ以前から日本は「貧しく、住みにくい国」になっていました。その衝撃の現実をデータで示した『貧乏国ニッポン ますます転落する国でどう生きるか』(加谷珪一氏著、幻冬舎新書)が発売後、4刷目の重版となり、反響を呼んでいます。

この30年間で日本がどう世界から取り残され、コロナで私達の生活はどう変わり、どう対処すればよいのか。内容を少しご紹介いたします。

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加谷珪一 経済評論家

仙台市生まれ。1993年東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。その後野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は、「ニューズウィーク」や「現代ビジネス」など多くの媒体で連載を持つほか、テレビやラジオなどで解説者やコメンテーターなどを務める。ベストセラーになった『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『ポスト新産業革命』(同)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)など著書多数。

加谷珪一オフィシャルサイト http://k-kaya.com/

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