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近藤勝重流 老いの抜け道

2020.05.31 更新 ツイート

布団の中での考えごとはほどほどに 近藤勝重

新聞やラジオの世界で長年活躍する近藤勝重さん。70歳を過ぎたけれど、粛々と老いていくなんてまっぴら御免、なんとか抜け道はないものか――そう考えて健康情報をあれこれ試したり、著名人の言葉からヒントを得たりしてゆく様子をつづったのが『近藤勝重流 老いの抜け道』。
コロナ疲れで疲弊した気持ちがちょっと軽くなるような部分を本書から抜粋して公開します。
今回は不眠や不安に効く健康の知恵についてです。

*   *   *

(写真:iStock.com/yanyong)

定年で失うもの、定年後に得るもの

60歳前に定年に備えた研修会が社でありました。
仕事で出られず、あとで人事部から資料をもらうと、随分とシビアなことが書かれていました。

〈定年で失うもの〉仕事/収入/情報/居場所

〈定年後に得るもの〉自由/自立(律)/時間

眺めつつ思ったものです。健康というのはどこにも書かれていないが、失うもの、得るもの双方に健康という答えもあるんじゃないかと。

経済は多くの人の健康を犠牲にして成長する。
この国でこの実態は何十年と変わっていません。
人はさして今を気にすることなく生きています。
何も体の悪いところはない。あっても命にかかわるような病じゃない。
そう思って今を平気で生きている方がほとんどではないでしょうか。

よくある病の陰に隠れていた大腸がん

ですが、こんな話もあります。
社の先輩と仕事先のテレビ局でばったり会ったときでした。
局から局へのハードスケジュールをこなしているようだったので、朝起きるとき、目まいがしたりといったことがないか、聞いてみました。

すると「あるよ」と短くいって、病院で診てもらったら、内耳の症状だそうで、よく耳にする病名なども口にしていました。
それで、たいしたことないと思って仕事を休んだりはしていないというのです。
ぼくが朝、歩いたりしてますか? と聞くと、「車ばかり乗ってるからなあ」という返事でした。
そのほかいろいろ聞いているうちに、少々案じられたのですが、ぼくごときがいうべきことでもないだろうと、気ィつけたほうがいいですよといい残して別れました。

何ヶ月かたって、彼から電話がありました。
「君のいうとおりになったよ」というので詳しく聞くと、朝のトイレで便の異常に気がついて、病院で精密検査を受けたところ「大腸がんの疑い」ですぐに入院させられたとのことでした。
朝方のめまいなど、確かに内耳の病かもしれないけれど、疲労の蓄積で自律神経がおかしくなり、免疫力が低下、それを見すかしたようにがんが発生するということはぼくも体験ずみです。

(写真:iStock.com/gorodenkoff)

そう心配しなくてすむ「病名」で「安心」は禁物

で、ここでみなさんにあえていっておきたい。
たとえ心配なさそうな病名を医師から告げられたからといって、安心しちゃ駄目だということです。
幸い彼は手術後、元気を取り戻して再び活躍の場に姿を現しましたが、本当に多忙ほど心身に悪影響をもたらすものはありません

緊張を強いる自律神経の交感神経が、リラックスさせてくれる副交感神経の働きより優位に立つことで生じる体の異変、本当に要注意です。
ちなみに血圧ですと、交感神経が優位になると上がり、反対に副交感神経が優位になると下がります。
かつ、こんなふうに自律神経のバランスが崩れだすと免疫力の低下を招き、体の防衛機能の低下でがんの発生にも影響をもたらすのです。

多忙の「忙」の字の偏は、心が変形したものです。
ですから「忙」には心を亡(な)くすという意味が込められています
忙しいと口にするたびに、心を亡くしているのです。

にもかかわらず、その忙しさから抜け出せない。
最悪の状況に陥った挙げ句、マイナスの連鎖によって心身ともにますます不安やストレスにさらされることになるんですね。

今までの正反対が健康法

「健康川柳」にこんな句をいただいています。

今日は寝てあしたに別の目で見よう    忠公

とにかく一晩ぐっすり寝る。
ぐっすり寝て起きると、それ相当に体力は回復しますが、それ以上に頭がちゃんと働いて、前夜とは別の自分がそこに現われてくるんですね。

(写真:iStock.com/Nattakorn Maneerat)

気が立って眠れないという人の話も聞きます。
寝よう寝ようと思うから眠れないというのはよくいわれることですが、以下の話、ぜひ役立ててください。

拒食症で命を失う人はあるが、不眠症で死ぬことはない。
だから、別に眠れなくとも、静かにして横になっていれば休息になり、それで大丈夫なのである。
別に死にはしないのだから、というような気持ちになって、じっとしているといい。
そうすると、あんがい眠ってしまうのである。

これ、河合隼雄さんの著書『「老いる」とはどういうことか』からの引用ですが、このくだりを読んで以後、ぼくの睡眠は質、量ともよくなった気がします。
仕事のことも改めて見直すと、疲れでスムーズさも欠き、かえって仕事量を増やしている。人間、そういう気づきひとつで一日が劇的に変わったりもするんです。
そして思い知るのです。「今までの正反対が健康法」だと。

布団の中での考えごとはほどほどに

この際ですから、自律神経失調症や胃がんを患った体験から、ぼくがそうだなあと納得してメモに取るなどした言葉をいくつか紹介しておきましょう。

「悪い奴ほどよく治るんです」
これは胃がんで入院中に耳にしたある医師の言葉です。
入院中に健康法に励んであれこれやっている患者より、さして病気を気にとめたふうもなく、友だちに長電話したり、とにかくこれが病人かというような患者が思ったより早く治って退院するんです──と、そんな話でした。
是非は別にして何かわかるような気がして、病は気からという言葉を改めて考えたりしました。

「布団の中での考えごとはほどほどに」
知り合いの臨床心理士の話です。
布団の中だと、たいてい考えすぎるんだそうですね。
何気ないことでもいいから、とりあえず起きて体を動かす。それで気持ちも整ってくる。
考えごとはそのあとでいいというわけです。

毎日新聞(大阪)主催で「しあわせ健康セミナー」を開いた際、参加者から「私を元気にした一言」を寄せてもらいました。
中高年の女性が目立つセミナーでしたが、会場でうなずいている人が多かった一言をいくつか。

「その時はその時」=女性(64)
「皆、通る道よ」=女性(63)
「同じような方はたくさんおられますよ」=女性(49)

なるほど、みんなはそんな言葉の力で老いの道から横道へと抜け出しているんだなあ、と実感しました。
自分だけじゃない、そう思えればごく平凡な言葉も頼もしく、心強い金言になるんですよね

関連書籍

近藤勝重『近藤勝重流 老いの抜け道』

人の名前がすぐ出て来ない? なんも心配いりません。「年とっちゃったけど、どうしていいかわからない」あなたに名コラムニストがおくる“老人免状”返上の書。 人生は心ひとつにかかっている/死ななくてすむがんで死ぬな/暇のある老年ほど喜ばしいものはない/身づくろいは長寿につながる/にもかかわらず笑う/1世紀を生き抜いてきた人たちの日々/近道人生をやめてわかったこと

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近藤勝重流 老いの抜け道

2020年2月6日発売の『近藤勝重流 老いの抜け道』について、最新情報をお知らせします。

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近藤勝重 コラムニスト、ジャーナリスト

近藤勝重(こんどう・かつしげ) 早稲田大学政治経済学部卒業後の1969年毎日新聞社に入社。論説委員、「サンデー毎日」編集長、専門編集委員などを歴任。毎日新聞(大阪)では大人気企画「近藤流健康川柳」の選者を務めている。10万部突破のベストセラー『書くことが思いつかない人のための文章教室』ほか、『必ず書ける「3つが基本」の文章術』(ともに幻冬舎新書)など著書多数。毎日新聞夕刊に長年連載してきたコラムや著書の一部が中学校の教科書(道徳)や灘中学校をはじめ中高一貫校の国語の入試問題に使用されるなど、わかりやすく端正な文章には定評がある。MBSラジオ「しあわせの五・七・五」にレギュラー出演中。

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