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近藤勝重流 老いの抜け道

2020.05.23 更新 ツイート

みなさん、怒りは下ろしましょう近藤勝重

新聞やラジオの世界で長年活躍する近藤勝重さん。70歳を過ぎたけれど、粛々と老いていくなんてまっぴら御免、なんとか抜け道はないものか――そう考えて健康情報をあれこれ試したり、著名人の言葉からヒントを得たりしてゆく様子をつづったのが『近藤勝重流 老いの抜け道』。

コロナ疲れで疲弊した気持ちがちょっと軽くなるような部分を本書から抜粋して公開します。

今回はしつこくつきまとってくる「怒り」についてのおはなしです。

*   *   *

穏やかな年寄りになれない日本の現状

驚かれるかもしれませんが、怒りっぽいお年寄りは世界で日本が一番多いんじゃないかといわれています。

欧米、とりわけ北欧のスウェーデンやデンマークなどと比較してのことだとは思います。

確かにそれらの国の人々は気が長く、穏やかに余生を過ごしていそうなイメージがあります。

社会保障などが日本よりずっと整っているということもあるんでしょうね。

 

脳科学によると、人間は年を取れば前頭葉の皮質が薄くなり、しわが増え、気が長くなるという説がある一方、思考や判断といったブレーキ機能が衰えるという説もありますが、日本人のお年寄りの沸点の低さを考えたとき、戦後のこの国のありようがやはり気になります。

とにかく多くの人が働け、働けと追い立てられてきました。さらに世の中は効率とスピードで突っ走ってきました。

そんな性急な世で穏やかさを養うというのはかなり難儀な話です。

 

そのうえ、昨今の年配者にはIT化のストレスがあります。スマホを手にした若い人のマナーも何かと気になります。

加えて、自身の体調です。だんだんと痛いところが増え、持病なんかもあろうかとは思います。

そうなるとなかなか和やかにとはいきません。ついつい興奮して怒りへと向かいます。

そうして感情に火がつくとどうなるか。かっとなってコントロールもきかず、しんどい思いをするのは明らかです。

(写真:iStock.com/Mono)

断っておきますが、人間、白も黒もないんです。現身(うつしみ)は矛盾だらけなのです。

作家、藤沢周平さんのエッセイ集『帰省』にこんな一文があります。

作家にとって、人間は善と悪、高貴と下劣、美と醜をあわせもつ小箱である。

崇高な人格に敬意を惜しむものではないが、下劣で好色な人格の中にも、人間のはかり知れないひろがりと深淵をみようとする。

小説を書くということは、この小箱の鍵をあけて、人間存在という一個の闇、矛盾のかたまりを手探りする作業にほかならない。

我、人ともにそんな人間を受け入れざるを得ないということです。

有名作家に学ぶ、怒りを手放す方法

作家の先生たちが人間関係上の対処法をアドバイスしてくれています。

腹が立ったら4秒間黙っている、あるいは7秒という人もいます。4秒、7秒、置いてから口を開くとだいぶ違うらしいですよ。

遠藤周作さんや吉行淳之介さんらは、腹が立っても自分のためにいうてくれてるんだ、といいきかせ、「ああ、ありがたい、ありがたい」と口で唱えることを実践したりもしていたようです。

そうそう、吉行さんは色紙にサインを求められると、江戸後期の僧、仙崖和尚の句といわれる「気に入らぬ風もあろうに柳かな」と書いていたそうです。

田辺聖子さんはこんなことをいっていました。

「忘れてしまえば、ないのと一緒」

何もわざわざ怒りっぽい年寄りになることはないのです。

(写真:iStock.com/nathanphoto)

「たかが」の精神で人づきあいが楽になる

怒りの感情がいかに体に悪いかは、杏林大学医学部名誉教授の石川恭三先生の『続・健康ちょっといい話』でも報告されています。

大事なところなので、少し長めに引用しておきます。

腹を立てた場合には、動脈硬化のために狭くなっている冠動脈が一時的に縮んでさらに狭くなる

その結果、その冠動脈の中を流れる血液が一層減少し、その先にある心臓の筋肉は酸欠状態になってしまう。

そうなれば当然狭心症の発作が起こっても不思議はない。だが多くの場合、それが無症状で終わっているのである。

一時的にしろ酸欠状態にさらされた心臓の筋肉は症状の有無に関係なくそれなりの障害を後に残しているのである。

また、腹を立てると交感神経が緊張し、そのために血管内で血液が固まりやすくなることも明らかになった。

血管内で血液が固まり、それが頭に飛んで脳血管を詰まらせると脳梗塞(のうこうそく)、心臓に飛んで冠動脈を詰まらせると心筋梗塞、そして腎臓に飛んで腎動脈を詰まらせると腎梗塞がそれぞれ引き起こされることになる。

これは腹は立てずに横に、という警告ですよね。

 

ともあれたかが人間、お互い様です。

いや実際、こういう言葉の「たかが」に人生のヒントがいろいろ隠されているように思えます。

早い話、「たかが人間(自分)」という自覚とともに世の中を見れば、許容量がうんと大きくなります。

上も下もない。大きくも小さくもない。

自分だってたかがしれた人間です。人を嫌いにもなるし、嫉妬だってします。欲もあります。そう自覚して相手を見れば、相互理解も進むでしょう。

それに「たかが」は苦手な人とのつきあいだって楽にしてくれます。

ふだんから嫌いだと思っていた人に対しても、しかし考えてみれば俺だってたかがしれたもの。あいつのことを俺がどうのこうのいえた義理か、と思い直せます。

最後になりましたが、「健康川柳」からこんな一句いかがですか。

医師がおっしゃると説得力がありますが、健康、健康とばかりいっていると健康病になるともいわれますよね。

気にしない健康法もあると医者   邪素民

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近藤勝重流 老いの抜け道

2020年2月6日発売の『近藤勝重流 老いの抜け道』について、最新情報をお知らせします。

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近藤勝重 コラムニスト、ジャーナリスト

近藤勝重(こんどう・かつしげ) 早稲田大学政治経済学部卒業後の1969年毎日新聞社に入社。論説委員、「サンデー毎日」編集長、専門編集委員などを歴任。毎日新聞(大阪)では大人気企画「近藤流健康川柳」の選者を務めている。10万部突破のベストセラー『書くことが思いつかない人のための文章教室』ほか、『必ず書ける「3つが基本」の文章術』(ともに幻冬舎新書)など著書多数。毎日新聞夕刊に長年連載してきたコラムや著書の一部が中学校の教科書(道徳)や灘中学校をはじめ中高一貫校の国語の入試問題に使用されるなど、わかりやすく端正な文章には定評がある。MBSラジオ「しあわせの五・七・五」にレギュラー出演中。

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