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社交不安障害

2020.02.05 公開 ツイート

人と話すのがなぜか苦手…その原因は「愛着障害」だった? 岡田尊司

人前で話すのが苦手、緊張してあがってしまう、社交の場を避けがち……。10人に1人が抱えているという「社交不安障害」。心当たりのある方も多いのではないでしょうか? 精神科医、岡田尊司さんの『社交不安障害』は、このやっかいなシンドロームの克服法を優しく教えてくれる本。自分を縛る不安の正体を知り、有効なトレーニングを積めば、改善は十分可能です! そんな本書の一部をご紹介します。

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「不安定な愛着」が根本の問題

これまでの章で、対人緊張や社交不安の根底には、他者の評価を気にしすぎ、完璧な自分でいないとダメになってしまうという考えにとらわれたり、不完全な自分が暴かれることを恐れたり、父親などに恐怖や葛藤を抱えていたりすることがかかわっているということを学んできた。

(写真:iStock.com/paulaphoto)

しかし、そもそもなぜ、他者の評価を気にしなければならないのだろうか。なぜ不完全な自分の弱さを恥ずかしいと思い、打ち明けるのではなく隠そうとしなければならないのだろうか。また、なぜ父親を恐れねばならないのだろうか。

そうしたことすべての根底にかかわり、ありのままの自分でいることに安心感がもてないという根本的な問題を引き起こしているのが、不安定な愛着の問題である。

愛着とは、幼い頃の養育者との間に育まれる絆で、心理的な現象を超えた生物学的な仕組みだと考えられている。その愛着の仕組みが、他者との対人関係の土台ともなり、また、ストレスや不安を和らげる仕組みともなっている。

愛着が安定している人では、オキシトシンというホルモンが豊富に分泌されるが、このホルモンには、不安やストレスからわれわれを守ってくれる働きがある。そのため、他者と親密な関係をもち、それを維持しやすくなるだけでなく、さまざまな緊張やストレスから身を守る仕組みとなっているのだ。

安定した愛着が育まれないか、一旦育まれても、何らかの事情で愛着が傷つくような体験をすると、ストレスや緊張・不安を感じやすくなり、社交不安障害という形で困難が表れる場合もある。

「愛着スタイル」には5種類ある

愛着には、いくつかのタイプがあり、大きく次のように分類される。

(写真:iStock.com/RyanKing999)

(1)安定型……過度に依存することも、過度に孤立することもなく、ほどよくバランスのとれた関係を維持しやすい。安全基地となる存在との関係がうまく機能している。

(2)回避型……親密な関係を避けたり、気持ちや本音を抑えたり、表面的にだけ他者とかかわる。

(3)不安型(両価型)……相手にどう思われているか、他人の評価を気にする傾向が強い。その一方で、自分の期待に反することがあると、強い失望や怒り、嫌悪を示す。依存しているのに、責めてしまうという反応も起きやすい。

(4)恐れ・回避型……親しくなりたいが、接近すると、拒否されるのではないか、嫌われるのではないかという恐怖心があり、近寄りたいが近寄れないというジレンマを抱えやすい。一旦親しくなると、猜疑心や独占欲が強い面が顔をもたげ、ぎくしゃくする要因になる。

(5)未解決型……未解決な愛着の傷を引きずっていて、親や特定の存在のことを考えると、それだけで不安定な気持ちになる。この未解決型は、他の不安定な愛着タイプと併存することが多い。

社交不安や対人緊張の程度は、愛着が安定型の人では低く、不安型の人ではやや高く、恐れ・回避型の人で非常に高いという傾向を示す。回避型の人では、対人緊張が高い人と低い人に分かれる。

愛着スタイルについて、もう少し詳しく知りたい方は、拙著『愛着障害』(光文社新書)や同書に所収の愛着スタイル診断テストを参照いただきたい。

愛着の問題は、過去の親などとの関係を反映したものだ。幼い頃の体験の影響が強いと言える。しかし、大人になってからでも、安定型から不安定型になったり、不安定型から安定型に変わるケースも少なくない。

社交不安障害の人では、恐れ・回避型が多く、不安型や回避型もみられる。

愛着の問題が大きいと思われる場合には、不安型や回避型、恐れ・回避型を改善するためのプログラムも開発されており、そうしたプログラムに基づいたカウンセリングを受けることもできる。

・ワーク  あなたの愛着スタイルは、どのタイプにもっとも該当しそうですか。その愛着スタイルと、あなたが感じている困難は、どのように結びついているでしょうか。気がついたことをお書きください。

関連書籍

岡田尊司『社交不安障害 理解と改善のためのプログラム』

人前で話すのが苦手、緊張して上がってしまう、自然に人付き合いができず、社交をつい避けてしまうという状態は「社交不安障害」と呼ばれる。もっとも頻度の高い精神的な困りごとの一つで、有病率は一割を超える。やっかいなのは、社交不安障害にともなう自信低下を生まれつきの性格だと思い込み、諦めてしまうこと。しかし、自分を縛る不安の正体を知って、有効なトレーニングを積めば、改善は十分可能だ。実際にカウンセリングセンターで使われるプログラムを紹介しながら、克服の方法を実践解説。考え方一つで、人生は大きく変わる!

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社交不安障害

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岡田尊司

1960年、香川県生まれ。精神科医、医学博士。東京大学哲学科中退。京都大学医学部卒。同大学院高次脳科学講座神経生物学教室、脳病態生理学講座精神医 学教室にて研究に従事。現在、京都医療少年院勤務、山形大学客員教授。パーソナリティ障害治療の最前線に立ち、臨床医として若者の心の危機に向かい合う。 

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