
「古本屋かと思って入ったけど、違うんですね」
築70年以上が経つ外観がそう思わせるのか、よろこび勇んで入ってきたお客さんに、そのように苦笑いされることがある。いや、新刊書店なんですよと答えると、大抵の場合その人は、それは失礼しましたと言ってすぐに出て行ってしまうのだが、すぐに出ていくというのは、そこにある新刊本にはほとんど興味がないということだろう。同じ〈本〉とはいいながら、新刊書店と古書店に来る客は、多くの場合あまり重なることがない(もちろん例外はある)。
本になじみのない人からすれば、そこに並んでいる本が新しいか古いか以外に大した違いはないのだから、本来はもっと交流があってもよさそうなものである。しかし実際には、新刊書店と古書店では、ほとんど別世界といってもよいほどで、同じ町に店を出していても、互いのことをよく知らないまま商売をしていることも多い。
いまでは資本力のあるチェーン店がほとんどとなった新刊書店とは異なり、古書店の多くは、いまだに個人・家族経営だ(ちなみに彼らのほとんどは自らのことを「古本屋」と呼ぶ。そのことばには誇りと謙遜が込められているようで、聞くといつもいいなあと思う)。以前勤めていた会社では、百貨店の催事場で古書店が25店舗ほど集まる古本市を年に2回行っていたが、その搬入搬出の光景は圧巻だった。
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◯連載「本屋の時間」は単行本でもお楽しみいただけます

連載「本屋の時間」に大きく手を加え、再構成したエッセイ集『小さな声、光る棚 新刊書店Titleの日常』は、引き続き絶賛発売中。店が開店して5年のあいだ、その場に立ち会い考えた定点観測的エッセイ。お求めは全国の書店にて。Title WEBS
◯2026年4月10日(金)~ 2026年4月26日(日) 本屋Title2階ギャラリー
本屋Titleでは6年ぶりとなる中野真典さんの展示を開催します。たくさんの花の絵が、会場を埋め尽くします。約80枚の絵のほか、「家守り」という小さな木の家や、マッチ箱ほどの大きさの「お守り」も並びます。作家のあたらしい世界をご覧ください。
◯2026年4月28日(火)~ 2026年5月12日(火) 本屋Title2階ギャラリー
絵本『こくとう ぴょ~』出版記念原画展
高橋久美子さんの農作業を描いた、加藤休ミさんの絵
絵本『こくとう ぴょ~』(高橋久美子・作 加藤休ミ・絵 あかね書房刊)の出版を記念し、原画展を開催いたします。加藤休ミさんの迫力ある原画をご覧ください。また本書のお話を担当された、高橋久美子さんの畑と作業風景の写真やエッセイも併せて展示。土から生まれたサトウキビが、黒糖になるまでを追体験してもらえたらと思います。
*会期中の5月10日(日)、高橋久美子さんをお招きしての、お話&黒糖食べ比べ会「お砂糖ができるまで」を行います。詳しくはこちらをご覧ください。
◯【お知らせ】NEW!!
旅のことば|〈わたし〉になるための読書(9)
「MySCUE(マイスキュー)」 辻山良雄
今回は、記憶のポケットに残る、たよりなくも美しい「旅のことば」をたどってゆきます。素敵な2冊をご紹介。
NHKラジオ第1で放送中の「ラジオ深夜便」にて本を紹介しています。
偶数月の第四土曜日、23時8分頃から約2時間、店主・辻山が出演しています。コーナータイトルは「本の国から」。ミニコーナーが二つとおすすめ新刊4冊。1週間の聴き逃し配信もございますので、ぜひお聞きくださいませ。
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本屋の時間

東京・荻窪にある新刊書店「Title(タイトル)」店主の日々。好きな本のこと、本屋について、お店で起こった様々な出来事などを綴ります。「本屋」という、国境も時空も自由に超えられるものたちが集まる空間から見えるものとは。














