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先生、俺またバグってます。

2026.03.04 公開 ポスト

双極性障害の混合状態GASHIMA (WHITE JAM)

ラッパー・GASHIMAさんによる人気連載『先生、俺またバグってます。』。
今回は、「躁状態」と「鬱状態」が入り混じった、「混合状態」のお話。
双極性障害の自殺率の高さとも大きく関係しているこの症状。
GASHIMAさんはどう向き合っているのでしょうか。

*   *   *

 

双極性障害(躁うつ病)には
テンションが高くなる「躁状態」
その逆に気分が落ち込む「鬱状態」がある。

このことは、この病気に
詳しくない人でも
知っているのではないだろうか。

しかし、この「躁状態」と「鬱状態」が
入り混じった「混合状態」が存在するというのは、
あまり知られていない。

もし、知っていたとしても
イマイチどういう状態なのか
想像しづらいのではないかと思う。

ネットで調べてみると
「躁状態の活動的・イライラ」と
「うつ状態の気分の落ち込み・無気力」が
同時に現れた状態と出てくる。

「活動的」で「無気力」。
相反する言葉が出てきている時点で
矛盾しすぎているし、
全然、想像がつかない。

俺自身、わりと最近になるまで
ハッキリとした「混合状態」を経験したことが
なかったので、あまり意味がわかっていなかった。

実際に混合状態を体験してみて感じたのは
「躁状態」、「鬱状態」よりも
圧倒的に混合状態の方が
キツイし、危ないということだ。

人の精神活動は「気分」「思考」「意欲」の
3つの要素で成り立っていると言われている。
この3つが程よいバランスで
保たれているのが健康的な状態。

俺のような双極性障害持ちの人間は
この「バランスの良い状態」で
日々を過ごせることを目標としている。
つまり症状が出ていない状態=
「寛解状態」というやつだ。

そして、

「気分」→減弱
「思考」→減弱
「意欲」→減弱

このようにすべてが減弱しているのが鬱状態。
つまり気分は落ち込んでるし、
思考も全然回らない。
何かをする意欲もないという状態だ。

その逆で

「気分」→ 興奮
「思考」→興奮
「意欲」→興奮

のようにすべてが興奮状態にあるのが躁状態。

気分もめちゃくちゃ上がっているし、
思考のスピードも早く、
アイデアがポンポン出てくる。
「あれもしたい」「これもしたい」と
何事にも意欲的になってしまう。

混合状態はこの3つの
興奮と減弱が入り混じった状態だ。
例えば、こんな感じ。

「気分」→ 減弱
「思考」→興奮
「意欲」→興奮

気分は落ち込んでいるのに
思考のスピードは早いから、
ネガティブな考えばかりが浮かび、
イライラしてしまう。
そして、落ち込んでいるのに
意欲は高いから行動は出来る。

実際に混合状態の時の俺は
誰がどう見てもヤバい奴だった。

外を歩いていても、
ちょっとしたことで
他人にブチギレてしまう。

一応、これでも表舞台に立つ人間で
街を歩いていればGASHIMAだと
気づかれることもある。

そんな立場であることもおかまいなしに
あの頃の俺はフルスロットルで
他人にキレ散らかしていた。

まったく同じ時期に、
双極性障害を持っている
俳優の広末涼子さんが
交通事故を起こし、搬送先で
看護師さんとトラブルを
起こして逮捕された。

みんな面白おかしく、
あのニュースをいじっていたけれど、
俺にとっては「明日は我が身」すぎる事件で
1ミリも笑えなかった。

行く先々で誰かと口論になる。
LINEニュースでたまに見る
「ヤバ芸能人逮捕」
スレスレの毎日だった。

それ以外にも人混みの中にいると
急に不安になって、
息が上がってくるという
軽いパニック発作みたいなモノも
出てくるようになった。

さすがにこれ以上、放置したら
外に出られなくなるか、逮捕されるか
どちらかの結末しかなさそうなので、
精神科の担当医に相談をした。

その結果、鬱症状を改善する
抗精神病薬を出されて、
気分の落ち込みが軽減された。

気分の落ち込みがなくなった分、
軽い躁状態には
突っ込んでしまったが
あのまま混合状態が続くよりは
いくらかマシだったと思う。

鬱状態の時、
人はよく「死にたい」ではなく
「消えてなくなりたい」と言う。
それは鬱に蝕まれすぎて、
死ぬ気力すら
残っていないからだ。

でも、混合状態の時はそうじゃない。
「死にたい」という思考を
実現出来てしまう意欲がある。

だから、双極性障害は
他の精神疾患と比べても
群を抜いて自殺率が高い。

だからこそ、通院することが
めちゃくちゃ大事なのだ。

「精神科に通っている」
「精神科の薬を飲んでる」
と言うと、心配な顔をされたり、

挙句の果てには
「医者に薬漬けにされてるだけだから
やめた方がいいよ」
なんて言われたりもする。

専門医でもない人間に
そんなことを言われようが
俺は気にも留めないし、
この生き方を変えるつもりもない。

だって、俺が今日もLINEニュースで
「ヤバ芸能人報道」されていないのは
その医者と薬のお陰だ。

だけど、こんなカッコつけたこと書いて、
万が一、めっちゃダサいスキャンダルで
LINEニュースになったら、どうしよう。
特大ブーメランにも程がある。

その時には幻冬舎さんに連絡して
即座にこの記事を削除してもらうしかないか。

毎月、このコラムを楽しみにして下さっている皆さん。
今回の記事を読んだ記憶は一旦消してもらって、
くれぐれもスクショは撮らないで下さい。

僕自身も変なニュースにならぬよう
引き続き、気を引き締めながら、
毎日を生きていきます。

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先生、俺またバグってます。

3人組シンガーソングライター・グループ WHITE JAMのラッパーとして活躍するGASHIMA。

そんな彼はある日、「双極性障害」であると診断される。

思い返してみれば、昔から自分はちょっとバグってた。

日本とアメリカで経験した過去、生い立ちと音楽、メンタルヘルスの狭間で感じた「生きづらさ」をパーソナルかつリアルに綴るセルフドキュメンタリー連載。

目まぐるしく変わる環境に対するやり場のない怒り。

振り返ってみれば「若気の至り」だと思っていた破壊的衝動。

あれも、これも、もしかしたら躁状態だったのかも?

 

“ただの勢い”の裏にはちゃんと病理があった。

そう思えると、あの時の俺も少しだけ愛せるようになった。

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GASHIMA (WHITE JAM)

兵庫県生まれ。一橋大学卒。

中学時代をロサンゼルス、高校時代をニューヨークで過ごしたバイリンガル・ラッパー。

2014年、3人組シンガーソングライター・グループ、WHITE JAM のメンバーとしてメジャーデビュー。

日本語と英語を巧みに使いこなすリリックに定評のある作詞家として、グループだけでなく他アーティストへの作詞提供も多数。

代表作に、SixTONES「Telephone」「RAM-PAM-PAM」、Nissy「Liar」、Snow Man「HYPNOSIS」などがある。

海外での孤立体験、日本の音楽業界での挫折、双極性障害の診断など、複雑なバックグラウンドを持ち、近年はそうした内面を率直に発信。

精神疾患に対する偏見や「生きづらさ」への理解を広げる活動にも力を入れている。

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