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上野千鶴子×國分功一郎対談「上野先生、民主主義はお好きですか?」

2014.01.31 公開 ポスト

第1回

民主主義についてよく語られる時代は民主主義危機の時代上野千鶴子/國分功一郎

◆「とりわけ代議制民主主義がキライです」(上野) 

上野 昨年原発事故後の最初の国政選挙で、自民党は大勝しました。なぜなら原発を再稼働させるか否かが争点にならなかったから。生活丸がかえの、どぶ板的な政治のなかで権力構造ができあがってるから、シングルイシューはなかなか争点にならないんですよ。

   ……國分さん、私にちょっと聞いて。

國分 はい?

上野 私に、「民主主義はお好きですか」と聞いてくれる? 國分さんの声で聞きたい(会場、笑)。

國分 今回のトークイベントのタイトルですね。はい(笑)。「上野先生、民主主義はお好きですか?」

上野 グッド・クエスチョン。それはね、とっても答えにくい問いなんです。イエスかノーかでいえば、ノーです。イエスとは言えませんし、言いたくありません。民主主義のなかでもとりわけキライなのが、代議制民主主義というものです。

 今回、國分さんたちがぶつかった壁は、議会の壁。首長の壁でもあったんですが、議会の壁でもあったんですよね。それで議会が持っている立法権というものについて大変深い疑問をお持ちになったというのが、この本をお書きになる動機だったわけでしょ。

國分 そうですね。

上野 その疑問はいったい何だったのか、皆さんにご説明してください(笑)。

國分 まず、国民主権、主権を有するのは国民である、ということがありますよね。これが民主主義の基本的な定義になるわけですけれども、主権を実際にどうやって使うかというと、基本的に立法権として使うわけです。立法府である議会に選挙で代議士を送りこむわけですから。そして実際に政治哲学を検証してみると、主権が立法権として定義されていることがよく分かったんですね。対し、行政は立法権によって決められた事柄を執行する権力として定義されてきた。

 ところが、実際にほとんどの物事を決めているのは、行政機関であるわけです。にもかかわらず、建前としては立法権が主権だということになっている。

上野 うーん、その認識は正しくないですよ。立法権はちゃんとした権力ですから。立法権が行政権をチェックする機能を果たしていないというだけです。

國分 もちろんそうですよ。ただ、行政国家と呼ばれる複雑化した統治機構の中で、立法権がどこまで行政をチェックして判断を下す機能を果たせるかという古典的な問題があります。それにこれは、民主主義だけの問題じゃなくて、君主制でも同じなんです。君主に主権がある場合は、君主が立法権を持っていてハンコを押すわけですけれども、法律がどう運用されているかすべてチェックするわけにはいかない。要するに会社の社長が、組織の末端で起きていることまで把握できないのと同じです。主権者も会社の社長も、本当は末端部で何が起こっているかを見るべきなんだけど、実際には完全にそれをするのは難しくて、現場のほうでいろいろ勝手に決まっていくわけです。

   僕が言ってるのは、今の民主主義の制度では、行政の現場で行われることに主権者がオフィシャルに関われないようになってるから、それができるようにしようっていうことなんです。

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上野千鶴子×國分功一郎対談「上野先生、民主主義はお好きですか?」

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上野千鶴子

社会学者・立命館大学特別招聘教授・東京大学名誉教授・認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。1948年富山県生まれ。京都大学大学院社会学博士課程修了、平安女学院短期大学助教授、シカゴ大学人類学部客員研究員、京都精華大学助教授、国際日本文化研究センター客員助教授、ボン大学客員教授、コロンビア大学客員教授、メキシコ大学院大学客員教授等を経る。1993年東京大学文学部助教授(社会学)、1995年から2011年3月まで、東京大学大学院人文社会系研究科教授。2011年4月から認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。専門は女性学、ジェンダー研究。『上野千鶴子が文学を社会学する』、『差異の政治学』、『おひとりさまの老後』、『女ぎらい』、『不惑のフェミニズム』、『ケアの社会学』、『女たちのサバイバル作戦』、『上野千鶴子の選憲論』、『発情装置 新版』、『上野千鶴子のサバイバル語録』など著書多数。

國分功一郎

1974年、千葉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。東京大学大学院総合文化研究科・教養学部准教授。専門は哲学・現代思想。著書に『スピノザの方法』(みすず書房)、『暇と退屈の倫理学』(朝日出版社、第2回紀伊國屋じんぶん大賞受賞、増補新版:太田出版)、『ドゥルーズの哲学原理』(岩波現代全書)、『来るべき民主主義』(幻冬舎新書)、『近代政治哲学』(ちくま新書)、『中動態の世界』(医学書院、第16回小林秀雄賞受賞)、『原子力時代における哲学』(晶文社)、『はじめてのスピノザ』(講談社現代新書)など。訳書に、ジャック・デリダ『マルクスと息子たち』(岩波書店)、ジル・ドゥルーズ『カントの批判哲学』(ちくま学芸文庫)など。

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