先日、ライターの石井ゆかりさんにお目にかかる機会があった。石井さんは胸にしみる文章を書くかたで、それももちろん素晴らしいのだが、毎日無償で星占いを発信し続けるその〈職人〉たる姿勢に、以前からひそかに共感をしていた。
Titleのような小さな店をしていると、毎日同じことをしていて、よく飽きないねと言われることがある。その場所から動くことがほとんどないので、変化を求める人にとってみれば、何がたのしくてそんなことをと思うのだろう。
しかし、ある一つのことを理解したという感覚は、同じことのくり返しにしか生まれてこない。仕事でなくてもわたしたちは、日々の生活を同じリズムで過ごすうちに、その些細な変化に気がつくようになる。
毎朝散歩する道、電車の窓から見える風景、季節になると毎年着るコート……。同じディテールをくり返すことで、その人の人生に対するシステムは構築される。その小さなシステムを通して、夏が終わったとか、今日はツイてるといった生活が持つ深みを、わたしたちは実感する。
Titleでは毎朝8時に「毎日のほん」を更新し、12時の開店時間になればシャッターを上げ店の姿を写真に撮り、開店のお知らせをする……。それはいつの間にか生まれたこの店独自のシステムである。たとえ仕事が停滞するときがあったとしても、無心で決まったルーティンを行うことで、その澱みは解消し、仕事はまた前へと進んでいく。
日々変化する毎日を乗りこなすことも、また楽しいことかもしれないが、わたしには決まった構えから、些細な変化を感じとるほうが向いているのかもしれない。
今回のおすすめ本

物語の子・いしいしんじの、18年にわたり様々な媒体に書かれた短篇を集めた、選りすぐりの作品集。わずか数ページに、世界のかけらがぎゅっと凝縮されており、それが一瞬にして身体のなかに入ってくる。
◯連載「本屋の時間」は単行本でもお楽しみいただけます

連載「本屋の時間」に大きく手を加え、再構成したエッセイ集『小さな声、光る棚 新刊書店Titleの日常』は、引き続き絶賛発売中。店が開店して5年のあいだ、その場に立ち会い考えた定点観測的エッセイ。お求めは全国の書店にて。Title WEBS
◯2026年1月10日(土)~ 2026年2月2日(月) Title2階ギャラリー
本屋Titleは、2026年1月10日に10周年を迎えました。同日より2階のギャラリーでは、それを記念した展示「本のある風景」を開催。店にゆかりのある十名の作家に「本のある風景」という言葉から連想する作品を描いていただきました。それぞれの個性が表れた作品は販売も行います。本のある空間で、様々に描かれた〈本〉をご堪能ください。
【『本屋Title 10th Anniversary Book 転がる本屋に苔は生えない』が発売中です】
本屋Titleは2026年1月10日で10周年を迎えました。この度10年の記録をまとめたアニバーサリーブック『本屋Title 10th Anniversary Book 転がる本屋に苔は生えない』が発売になりました。
各年ごとのエッセイに、展示やイベント、店で起こった出来事を詳細にまとめた年表、10年分の「毎日のほん」から1000冊を収録した保存版。
Titleゆかりの方々による寄稿や作品、店主夫妻へのインタビューも。Titleのみでの販売となります。ぜひこの機会に店までお越しください。
■書誌情報
『本屋Title 10th Anniversary Book 転がる本屋に苔は生えない』
Title=編 / 発行・発売 株式会社タイトル企画
256頁 /A5変形判ソフトカバー/ 2026年1月10日発売 / 800部限定 1,980円(税込)
◯【寄稿】
店は残っていた 辻山良雄
webちくま「本は本屋にある リレーエッセイ」(2025年6月6日更新)
◯【お知らせ】NEW!!
養生としての〈わたし〉語り|〈わたし〉になるための読書(8)
「MySCUE(マイスキュー)」 辻山良雄
今回は、話すこと、そしてそれを通じて自分自身を考えさせられる3冊の本を紹介します。
NHKラジオ第1で放送中の「ラジオ深夜便」にて本を紹介しています。
偶数月の第四土曜日、23時8分頃から約2時間、店主・辻山が出演しています。コーナータイトルは「本の国から」。ミニコーナーが二つとおすすめ新刊4冊。1週間の聴き逃し配信もございますので、ぜひお聞きくださいませ。
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本屋の時間

東京・荻窪にある新刊書店「Title(タイトル)」店主の日々。好きな本のこと、本屋について、お店で起こった様々な出来事などを綴ります。「本屋」という、国境も時空も自由に超えられるものたちが集まる空間から見えるものとは。

本屋Title10周年記念展「本のある風景」











