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破壊者 ハカイモノ

2019.09.28 更新 ツイート

エイベックスを成功に導いた「全部やる」「あきらめない」精神松浦勝人

貸しレコード店のアルバイトからエイベックスを創業、そして上場……。芸能界のど真ん中で戦い続けてきた稀代の経営者、松浦勝人。著書『破壊者 ハカイモノ』は、彼の思考と哲学が凝縮された、読み応えのある一冊だ。ブームの裏側で、彼はどんなことを考えていたのか? そしてなぜ、ここまでの成功を収めることができたのか? ビジネスの真髄に迫った本書の一部をご紹介します。

*   *   *

「ヒットの方程式」なんてなかった

全部、夢だったのではないかと思うことがある。僕が生きているこの人生は、長い夢にすぎず、突然叩き起こされると、僕はベッドの中にいて、ごく平凡な本当の1日が始まる。最近そんな空想をすることがある。

(写真:iStock.com/gustavofrazao)

普通の人生では味わえないような楽しいことを経験してきた。普通の人生ではありえないつらい目にもあってきた。その振り幅が大きすぎて、とても現実の人生だとは思えない

僕たちがエイベックスをつくった時、ダンスミュージックについては詳しかったけど、音楽業界については何も知らない素人集団だった。音楽の売り方なんか誰もわからない。方程式も何もなくて、とにかくありとあらゆることをやってみる。

だって、それしかなかったから。気合いと根性と覚悟。僕たちにはそれしかなかった。毎日「やり残した穴はないか、まだできることはないのか」そればかり考えていた。

ありとあらゆることを、がむしゃらにやって、それでたまたまヒットが出た。ヒットには、それぞれに要因がある。それを後から分析して、集計してみると「こういうやり方がヒットの要因になっていたことが、たまたま多かった」ということがわかってくる。これを勝手に後づけで「ヒットの方程式」と呼んでいたのは僕らだった。

だから、そのとおりやれば必ずヒットがでるという方程式なんかそもそも存在しなかった。唯一の方法は「全部やる」。気合いと根性と覚悟で「あきらめない」。それしかなかった。

エイベックスの急成長を褒められた時、僕はいつも「まぐれです。偶然です」と答えてきた。それは謙遜ではなく、僕自身本当にそう思っていた。だって、最初の上大岡の店は、13坪の狭い店だったのに、そこからどれだけたくさんの才能が生まれたか。これは偶然でしかありえないと思っていた。

一緒に店をやった林真司と小林敏雄は、後にエイベックスの役員となって重要な仕事をする。アルバイトとして働いていた星野靖彦は、後にジュリアナ東京を象徴する曲になった『Can't Undo This!!』や浜崎あゆみのヒット曲を書く。同じくアルバイトだった五十嵐充は、後にEvely Little Thingのメンバーとして大成功する。

挙げ句の果てに、熱心にレコードを借りに来ていたお客の高校生が、後のEXILEのHIRO。LDHの役員たちは、ほとんどが僕の高校の後輩で、HIROの同級生。

あんな小さな店に、これだけの才能がたまたま集まっていたなんて、現実にはあるわけがない。偶然にもほどがある。

気合いと根性と覚悟でやり抜く

大学3年生の時、横浜のレンタルレコード店でアルバイトをしたことから、僕のビジネス人生が始まる。オーナーは、音楽のことは詳しくなかったし、店もうまくいっていなかった。そこへ僕がバイトとして入ってきた。

(写真:iStock.com/Ivan_Neru)

当時の僕は、ちょっと音楽に詳しい大学生でしかない。でも、オーナーは僕の話をものすごく真剣に聞く。僕の目をじっと見つめて、僕の話に目を輝かせていく。そして「君の思ったとおりに店をやっていい」とすべてを任せてくれた。

僕たちは店の売り上げを上げるために、思いつく方法をすべて実行した。ヘトヘトになって夜中、風呂の中で「なんで、他人の店のためにこんなに一生懸命になっているんだろう」と不思議な気持ちになった。でもそれは、オーナーが何もない大学生にチャンスを与えてくれたからだと今になって思う。

それから30年、僕は人が授けてくれたヒントを心に刻みこみ、もらったチャンスをひとつも無駄にすることなく積み重ねてきた。そこはまぐれでも偶然でもない。

何かの才能を持っている人は、僕たちが思っているよりもたくさんいる。でも才能を発揮するチャンスに恵まれず、才能を無駄にして、「自分には何もない」とあきらめてしまっている人が多すぎる。

13坪の小さな店から、なぜこのようなたくさんの才能がでてきたのか。それは、僕がオーナーにしてもらったように、彼らの話を真剣に聞いて、彼らにチャンスを用意したからだと思う。

僕たちの仕事は、才能を見つけて、話をよく聞いて、チャンスを与え、ヒントを授け、その人の才能を開花させること。そのためには、やれることは全部やる。あきらめない。気合いと根性と覚悟。

才能は、どこかではなく、自分の近くにある。それを見逃すな。与えられたチャンスは、ひとつも無駄にするな。結果がでなくても、結果がでるまであきらめるな。その簡単でもあり、難しいことを気合いと根性と覚悟でやり抜いた者だけが、夢の続きを見ることができる。

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松浦勝人

1964年神奈川県生まれ。エイベックス株式会社代表取締役会長CEO。1983年日本大学経済学部に入学し、1985年貸レコード店「友&愛」にアルバイトとして入る。1986年に(株)ミニマックスを設立。代表取締役になり、「友&愛」上大岡店の経営を行う。1988年エイベックス・ディー・ディー(株)を東京都町田市に設立し、レコード輸入卸販売業を始める。1990年に自社音楽レーベル「avex trax」を設立し、「JULIANA’S TOKYO」CDシリーズなど様々なダンスコンピレーションアルバムを発売。

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