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ゴルフは名言でうまくなる

2019.06.09 更新

第93回

「すべての1打は、等価である」――中部銀次郎岡上貞夫

敗因はその1打だけにあるのではない

カップを覗いているような数ミリのパットも1打、300ヤードかっ飛ばしてフェアウェイに運んだドライバーショットも1打、どれも1打に変わりはない――。

そういう意味だけでこの言葉をとらえると、あまり深い名言だとは思えないかもしれない。

多くのアベレージゴルファーはコンペで優勝したりすると、「今日は朝イチのティーショットがナイスショットで、おかげで一日中うまくいきました」とか、「3番ホールのPar3でホールインワン寸前のショットが出てバーディ。あれで波に乗りました」なんていうスピーチをするものだ。

反対に、惜しくも準優勝に甘んじた人は、「まぁまぁよかったんだけど、15番でOB。あれが痛かった」とか、「最終ホールでパーオンしたのに、痛恨の3パット。アレが敗因です」なんて言う。

しかし、よく考えてみてほしい。アベレージゴルファーは90~100打ぐらいは打つものだ。そのたった1打が勝因になったり、敗因になったりするものだろうか?

たしかにプロの試合のTV中継などでは、「このドライバーショット次第で優勝が決まりますね」とか、「このアプローチ次第で優勝できないかも」とか、「このパットを入れたらほぼ優勝でしょう」なんて解説をよく聞く。

ところがプロの試合の場合は、4日間で72ホールもラウンドしたうえで勝敗が決まるのだ。ますます、その1打だけで優勝なんか決まるものではないと私は思う。

プロのTV中継で放映される最後の4~5ホールは、それまでの67~68ホールで積み上げてきたおよそ270ストローク、その1打1打のうえにある。

終盤なだけに1打の重みを感じやすいが、実際はそれまでの過程で打たれた1打1打にも同じ重みがあるのだ。

つまり、ゴルフというものは、その会心の1打だけでよいスコアになるわけでも、そのひどいミスショット1打だけで悪いスコアになるわけでもないということだ。

だから1打1打を振り返って、あれはよかった、これはひどかったと分析してみても、あまり意味がないのではないだろうか。

1打1打に一喜一憂しない

アベレージゴルファーであればワンラウンドを、ハンディを引いたネットパープレイを目標にプレーする。そのときに要した1打1打のすべてに、最終的に目標スコアで上がれたかどうかの要因がある。

250ヤード飛んだドライバーも、50ヤードのチョロも、10mが入ったバーディパットも、「お先に」をやって外した30cmも、ザックリもトップもあれもこれもすべて同じ価値があり、その積み重ねでスコアは形成されると考えるべきなのだ。

会心のショットが打てたとしても1打、とんでもないミスショットをしても1打、そういうふうに考えていけば、1打1打に一喜一憂せず、穏やかに淡々とラウンドできる。

結果として、出入りの激しいゴルフにならず、落ち着いたスコアが並ぶことになるだろう。

「すべての1打は、等価である」という表題の有名な言葉には、そのようなメンタルコントロール術としての一面が隠されているのだ。

プロのTV中継を見ていると、スーパーショットやスーパーアプローチ、劇的なロングパットばかりにクロースアップして映像を編集したりする。

そういう映像ばかり見てしまうものだから、アベレージゴルファーもベタピンのアイアンショットやチップインのアプローチを狙ってしまいやすい。

しかし、「すべての1打は等価」であるならば、そのようなスーパーショットや劇的なアプローチショットは必要ないのだ。

ドライバーで2打目がトラブルにならないような位置へ運び、アイアンはグリーン周辺のハザードを避け、グリーンセンターや花道へ運ぶ。

アプローチも次のパットが楽な上りのラインを残すように運び、パッティングも強引にねじ込まず、3パットを極力避ける。

このように、淡々と穏やかにラウンドすることが、安定してよいスコアにつながるのであって、そこにドラマチックな要素は必要ないと、銀次郎さんは言っている。

それでもワンラウンドの長い間には、ミスしてピンチになったり、はからずもピンに近い位置へ乗ってバーディチャンスが来たりすることもあるだろう。

だが、そういうピンチでもチャンスでも、心をザワつかせないことが肝心だ。ピンチを脱しても1打、さらにピンチを招いても1打、バーディパットが入っても1打、外しても1打。そう考えて平常心を保ちたい。

タイガーのポーカーフェイスには意味がある

2019年のマスターズで劇的な復活優勝をしたタイガー・ウッズは、常に無表情だった。

唯一苦笑いをしたのが9番ホールで、ピンからいちばん遠い3段グリーンの奥へ打ってしまったときだったが、そこも見事なアプローチパットで30cmに寄せ、淡々とパーで切り抜けた。

そこからは、最後のパットをタップインして優勝が決まり喜びを爆発させるまで、ポーカーフェイスを崩さなかった。

2位のブルックス・ケプカと2打差で迎えた最終72ホール目、ボギーでも優勝できる状況のなか、タイガーは危険を慎重に排除し、淡々とボギーを取った。

「すべての1打は等価」であることを知り尽くした、タイガーならではの最終ホール。心に深く残るシーンだった。

2位タイになったケプカやダスティン・ジョンソンも終始表情を変えずにプレーしていたし、古くはベン・ホーガンも、ラウンド中に発したのは「君のほうが遠い」の一言だけだったというエピソードで有名なほど無愛想だった。

稀にリー・トレビノのように、周囲としゃべりまくりながらオン・オフを上手に切り替えてプレーする選手もいるが、多くの名手は総じて無口で無表情なものだ。

すべての1打に同じ重みがあることを知り尽くしている名手たちは、どの1打にも同じだけの重きを置いて慎重に、それでいてよどみなくプレーする。

一方、アマチュアのアベレージゴルファーが遊びでゴルフをするのに、それでは堅苦しいと思われるだろうし、その通りだとも思う。

ただ、スコアをよくしたいと思うならば、楽しい会話をしながらのラウンドもいいのだけれど、それは適度に抑えて1打1打に集中することも必要だ。

ベン・ホーガンに代表されるような無愛想に近いポーカーフェイスは、さすがに競技ゴルフの世界だけだろう。

しかし、アベレージゴルファーであっても、「すべての1打は等価である」と考えて1打1打に集中するのは、スコアアップに大事なことなのである。

マスターズの優勝会見で、タイガーは「最終ホールはパーを取りたかったけどね。今日はすべてのショット、パットで自分ができることをやりとげることばかり考えていた」とコメントしていた。

それが、72ホールのスコアとして積み上げられ、タイガーの劇的な復活優勝につながった。

すべての1打を等価と考え、すべてのショットに最善を尽くそうとするメンタルのありようが、いいスコアにつながる。それは、プロもアマもレベルの違いはありこそすれ、ゴルフというゲームの本質なのではないかと思う。

ただし、「ラウンド中はミスショットも等価と考えて受け入れるが、ラウンド後は厳しく反省して練習に汗を流すことは、言うまでもありません」と銀次郎さんは言っている。

これもまた、忘れてはならない真理なのだと思う。

今回のまとめ

1. 「すべての1打は、等価である」は、単に300ヤードの1打も1cmの1打も同じように“スコアとしては1打”というだけの意味ではない

2. ナイスショットもミスショットも同じ価値の1打と考えることで、とくにミスショットをしたときの心の動揺を抑え、平常心を維持するメンタルコントロール効果がある

3. すべてのショット、パットに同じ重さがあると考え、目の前のショットに向き合い、最高のパフォーマンスができるように努力することがスコアアップにつながるだろう

 

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岡上貞夫

1954年生まれ。千葉県在住。ゴルフエスプリ愛好家。フリーライター。鎌ヶ谷カントリークラブ会員。1977年、慶應義塾大学法学部法律学科卒業。大学入学時は学生運動による封鎖でキャンパスに入れず、時間を持て余して体育会ゴルフ部に入部。ゴルフの持つかすかな狂気にハマる。卒業後はサラリーマンになり、ほとんど練習できない月イチゴルファーだったが、レッスン書ではなくゴルフ名言集やゴルフの歴史、エスプリを書いたエッセイなどを好んで読んだことにより、40年以上シングルハンディを維持している。初の著書『ゴルフは名言でうまくなる』(幻冬舎新書)が好評発売中。

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